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随筆47 「宍喰町久尾の懐かしい人々」
徳島県の南端にある宍喰町から山路に入り、くねくね折れ曲がった道の終点にあるのが、宍喰町久尾。今は、戸数も数えるばかりになってしまったと聞くが、私にとっては忘れることのできない懐かしい山里である。
事実、私はこの山里が好きでもう何十回となく足を運んだ。ことに初めて衆議院選挙に出馬した昭和55年6月には、本当に大勢の人達が私を待ち構えて下さっていて、飛びつきそうな勢いで握手攻めにあった。どこの家からも走り寄ってきて声援していただいた。遠くの家々からは、大きなタオルを振って応援していただいた。
初めての選挙は次点だった。あんなに応援していただいたのに本当に申し訳ない。せめて御礼に回りたい。全県の地図を広げてスケジュールを組んだ。そして最初に訪問したのが宍喰町久尾だった。
その日も久尾の人々は待ち構えていて下さった。「いっぺん落ちたぐらいで、クヨクヨしよったらあかんでよ。人生頑張らな」年配の方々から、あふれんばかりの笑顔で激励されて、しゅんとしていた私は次第に元気になった。
「鯉の洗い」や「ちょろぎ芋の漬け物」もごちそうになった。澄みきった川が流れていた。空は真っ青でどこまでも高かった。人々の歓声が今も耳に残っている。
当選後も私は足しげく国会報告に通った。そのたびに人々は都会に出した息子が里帰りしたかのように喜んで迎えてくれた。私も固苦しいことは嫌いだから、いつも車座になってよもやま話に明け暮れた。あまりにも話に熱中し過ぎて、時の経つのも忘れてしまい、螢の飛び交う真っ暗な川辺の道を一人車を走らせて帰った日もあった。満天の星が手の届くほど美しい夜もあった。久尾の懐かしい人々の笑顔とともに私の心に残る風景である。
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