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随筆55 「番茶づくりは炎天下の労作業」
那賀川の中流に位置する相生町は、相生茶で知られる番茶の生産地として有名である。昔はどこの家庭でもお茶といえば番茶であった。今は、番茶を知る人も少なくなってしまった。それでも番茶の効用は再認識されているようで、乳児にもよいという話を新聞で読んだことがある。
梅雨が明け、しゃく熱の太陽が照りつけるころ、相生町を歩くと、どこの農家も番茶づくりに汗を流していた。
番茶づくりは、まさに炎天下の労作業である。まず茶の葉を摘む。炎天の下で黙々と働く人々の姿には頭が下がる。その茶の葉を大きな釜でゆでる。真夏に火をたくのだからその暑さはたまらない。ゆであがった茶の葉を大きなカメに入れて発酵させる。発酵した茶の葉は熱い。湿度も高い。汗びっしょりで、かきまわす。
私が訪れたころは、どこの農家も土間があり、番茶づくりの作業所があった。今はどうだろうか。今でも時おり、相生町の番茶をいただくことがある。大きな番茶袋はむかしのままだが、この番茶を作った人々の御苦労を思えば一滴も粗末にはできない。
相生町でもう一つ印象に残るのは、山菱電機の相生工場である。社長の蓮池哲夫さんは、私の友人であり、衆議院選挙初当選のころから親しいお付き合いをさせていただいている。
石井町の本社工場に招かれ、社員の皆さんに「人生あたってくだけろ」のタイトルで講演させていただいたこともある。「一度相生工場に来てみて下さい」と案内されてうかがったのだが、びっくりした。天井の高い大きな工場が全て木造りなのである。「自然にやさしい工場にしました。ここは木材の産地ですから、土地にふさわしい工場になったと思いますよ」蓮池さんの説明通りの工場だった。 従業員の人達に感想を聞くと「自然に囲まれた保養所のような工場でしょう」と上手な表現で説明してくれた。
工場といえば街の中か、海岸地帯。そんな常識を打ち破って、山の中、緑の大自然の中に木で工場を造る。何とすばらしいアイデアだろう。学校も役場も、病院も、もう一度木で造ってみたらどうだろうか。木にはコンクリートにはないやさしさがある。耐久力だってあるはずだ。京都や奈良の古い建造物を語るまでもない。木の文化を再認識してみてはどうだろうか。環境にやさしい町づくりのためにも。
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