随筆65 「地方自治は民主主義の学校」

 那賀川町といえば、すぐ思い出すのが、前町長の小泉隆一さんである。小泉さんはもともと那賀川町役場の職員だったが、公明党公認で町議会議員を4期務め議長も経験された。その後、周囲から強く推されて助役として活躍したあと町長を3期つとめられた。
 私が一番お世話になったのは捲土重来を期して次の衆議院選挙をめざしていた昭和55年6月から58年12月のころであった。当時小泉さんは町議会議員をされていて、毎日毎日那賀川町内を案内して下さった。
“破壊は一瞬。建設は死闘”これが小泉さんの口グセだった。いつもそういって若い私を励ましてくれた。炎天下を一日歩き続けたあと「ちょっと、元気をつけましょう」といってうなぎを食べに連れていってくれたこともあった。
 小泉さんの部屋はいつも地方自治の分厚い書籍がびっしりと並んでいた。「地方自治は民主主義の学校といわれています。この国が民主主義のすばらしい国になるためにも、地方がイキイキしていなくてはなりません。」厳しい現実に直面しても、一層理想を高く燃え上がらせる。そんな心意気が言葉の端々ににじみ出ていた。
 私が衆議院選挙に初当選したころ、御礼に伺うと、小泉さんは那賀川の河口に近い湿地帯を案内してくれた。「ここに何か、町の人達に喜んでもらえるものを作りたいんですよ」。殺風景な何もない原野を前に小泉さんはもう頭の中で絵を描いている。そして町長になると即座に実現させた。「コート・ベール徳島」の完成である。ここには誰れでもゴルフが楽しめるパブリックコースのほか、多目的広場やテニスコート、野鳥観察園もある。
“子供達を宇宙に招待したい”そんな夢とロマンも「科学センター」に「天文館」をオープンすることで実現した。
 室町幕府第十四代将軍の足利義栄など足利家歴代の墓所がある「平島公方」の史実に光をあて、マンガ本で紹介もした。薪能も好評を博した。はるかモンゴルに野球場をプレゼントする快挙もやってのけた。
「まだまだ実現したい夢が一杯あります」といっていた小泉さんだが、今春の選挙では惜敗された。私も精一杯応援させていただいたが、まことに残念だった。
 数ヶ月後にお会いすると「選挙は勝たないとダメです。頑張って下さい」と逆に激励して下さった。
 那賀川町では平成十二年度の完成めざして「道の駅」の工事が始まる。小泉町長時代役場で一緒に事業化の相談をしたことが懐かしい。
 誠心誠意町の発展に尽くされた小泉さんの、いよいよの御健勝と那賀川町の発展を心から祈りたい。