随筆72 「四国第一の清流・穴吹川」

 剣山から木屋平村を経て、穴吹町古宮を通って吉野川に注ぐ穴吹川が、今年も四国第一の清流となった。
四国には日本最後の清流と呼称される四万十川(高知県)や四国三郎の別称で知られる吉野川など有名な河川が多い中で、四国第一の清流と言えばいつも穴吹川の名前が上がる。まことにうれしい限りである。
 ある夏の夜、真っ暗な山道をくねくね曲がりながら下りてくると突然視界が開けた。ゆったりと流れる穴吹川の川面にホタルの群れが美しい光の軌跡を描いていた。サラサラと流れる水音がさながらBGMのようだ。私は車を止め、ホタルのダンスに見とれてしまった。
 穴吹川をいつまでも四国第一の清流に、と町の人達はいつも心を配っている。とともに川に親しみ、川と遊ぶことも忘れない。8月の第一日曜日に行われる、イカダ下り大会は全国から参加者が駆けつけるほどだ。私も穴吹町はよく歩かせていただいたが、初草、口山、古宮などは特に思い出が深い。地元の支持者の方々とともに山のてっぺんでお弁当をいただいたこともあった。「このへんは食堂がないからね。遠藤さんが来るちゅうんで、前の晩から用意しといたの。まあ、食べてみてちょうだい」お弁当は大きな寿司桶に並んだアジとボウゼの姿寿司だった。
  私も大好物だ。「こりゃあうまい、最高ですネ」思わず叫んだ。ユズが効いている。「なんだか、遠足の気分ですね」誰かが言った。山の中でみんなでワイワイいいながら食べた、あの寿司の味は今も忘れられない。
 口山では、葉タバコ栽培に励む人達と野良に建つ御堂で車座になって2時間も3時間も語り合った。唯一の現金収入だった葉タバコ栽培も、今や斜陽産業となってしまったこと。他にこれといった収入が見込めない農村では若い人達が離農せざるをえないこと。このまま放置すれば先祖代々にわたって切り開いてきた農地が、元の原野にかえってしまうのではないかと心配する人達。中山間地で農業を営む人達の悩みは深い。
 国会では新農業基本法を制定し、中山間地に直接所得保障制度を導入するきっかけを作ったが、これをどのように具体化していくか、知恵を出さなければならない。農業を産業と見る視点ばかりでなく、農村を社会政策として、どう維持発展させていくのか、そうした新たな視点がぜひとも必要である。徳島県はとくに中山間地が多いだけに、急を要する課題と認識している。