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随筆79 「タバコ、ミツマタ、ソバの花」
国道192号を西進すると、三好郡に入って最初に出会うのが三加茂町である。桜の花が美しいJR江口駅からしばらく走ると視界が一変して開ける。ショッピングセンターや、レストランが国道沿いにひしめき合う。三好郡のなかでも一番変化したのがこの界わいであろう。町は活気にあふれている。
私にとって三加茂町といえば、何といってもタバコ、ミツマタ、ソバの花である。三加茂町の山間部は深い。町の中心部から加茂谷川沿いに入る道、JR江口駅から入る山口谷川沿いの道、そして、半田町から半田川や大藤谷川沿いに入る大藤地区への道と、どの道も三加茂町の山間地帯をくねくね曲がりながら、ときには激しく上下しつつどこまでも続いている。
春も夏も秋も冬も私はよくこの山道を上り下りした。一軒一軒の農家を訪ね歩いた。その季節、その季節に思い出がある。なかでも忘れられないのが、タバコとミツマタとソバの花である。タバコは、平坦なところでも傾斜地でもまるで定規で測って植えたように、きれいな平行線を描いてどこまでも続いている。タバコの花も見事な平行線を描いて続く。緑の大きな葉っぱの真ん中に、垂直にピーンと立ったタバコのシンから、たくさんの花が咲き競う。白い花が多いが、たまに淡いピンク色のもある。
ミツマタの花も白い。かれんな花だ。ミツマタの枝はどこの枝も三つに分かれている。その先っぽに小さな花をつける。冬場に訪れると農家の庭先にミツマタが干されている。これを釜ゆでにして皮をはぐ。皮から和紙がつくられる。紙幣の原料となる。
ソバの花も白い。余りにも広い地域を小さな真っ白な花が埋め尽くしていて圧倒されたことがある。それは、見渡す限りが銀世界となったかのような光景だった。
最近では、タバコもミツマタもソバも栽培面積が少なくなってしまったと聞く。あの白い花の風景はもう心の中に残る思い出でしかないのだろうか。山また山が連なる高地から眺めたのどかな山里の風景は今も私の心に焼きついて離れない。
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