刻々と変わりゆく時代への「直言」を掲載しています。

(徳島県山城町大歩危)
「山々から集まった水が川になる。」
撮影 三好和義  提供:阿波銀行

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2008年5月2日
 国民が注目したガソリン税の暫定税率を含む歳入法案に対して参議院は意思を示すことができませんでした。賛成でもなく、反対でもなく、修正でもなく、何の意思を示すことなく60日間を過ごしてしまったのです。

 衆議院から送付された法案を1ヶ月以上店晒しにし、ようやく審議が始まったと思えば非難合戦に明け暮れ、議決することさえできなかったのです。

 福田首相も内閣メールマガジンでいっていますが、予算がすでに執行されているのに予算の裏づけとなる歳入法案の結論が出ない不正常な状態をこれ以上続けることはできません。

 国会が憲法第59条の「参議院が、衆議院の可決した法律案を受け取った後、国会休会中の期間を除いて60日以内に、議決しないときは、衆議院の議決を国会の議決とする」の条文どおりに実行して衆議院で再可決したのはやむをえないことでしょう。

 誠に情けないことです。これでは参議院の存在意義まで議論されかねません。参議院の多数党は野党なのですから、正々堂々と議論して反対であれば否決すればいいのです。否決もできないというのはみっともないことだと私は思います。

 国会は言論の府です。審議を拒否したり、本会議の開会を実力で阻止しようとするのは言論の府の自殺行為といえるのではないでしょうか。

 最近の参議院は冷静な議論がされずに感情的な対立ばかりが目に付きます。参議院はかつて良識の府といわれましたが昔日の思いがします。

 野党は国民に向かって政府と与党は無責任であると糾弾しています。しかし審議をしないで参議院で意思を示せなかった野党も無責任ではないでしょうか。

 国会はまだ開会中です。国民に関心の深い後期高齢者医療保険制度について、この国の皆保険制度をどうすれば安定して維持できるかという視点からの冷静で熱心な議論を私は与野党双方に切望します。

2008年4月12日
 福田康夫首相が提案していた道路特定財源の廃止と2009年度からの一般財源化を柱とする基本方針「道路関連法案等の取り扱いについて」が政府・与党案として決定しました。

 全文は8項目で構成されていますが、まず第1項目として、道路関係公益法人や道路整備特別会計関連支出の無駄を徹底的に排除することを上げています。

 第2項目には、政府全体で、行政と密接な関係にある公益法人について、集中点検を実施し支出の無駄を徹底的に是正するといっています。

 第3項目に、道路特定財源制度は今年の税制抜本改革時に廃止し2009年度から一般財源化すると明言しています。

 以上の3項目が政府・与党案の骨格であると私は理解しました。あとの項目には地方財政への配慮や一般財源としての使途のあり方や道路整備のあり方などが書かれていますがいずれも当然のことでしょう。

 問題はこれからの与野党協議です。4月末まであと2週間の間に結論が出るかどうかです。民主党がどう判断するかです。

 政府・与党は野党との政策協議が不調に終わった場合でも、この案を実現すると腹を固めています。こうした政府・与党の方針を私は支持したいと思います。

 指導力が見えないといわれてきた福田首相ですが、自民党の中にある反対意見を封じ込めてこうした決定にまで持ち込んだのは総理・総裁という立場ならではの指導力の発揮といえるでしょう。

 国会の党首討論で「民主党は結論を出すのが遅い」「民主党は誰に話せばよいのかわからない」といつになく激しい口調で攻撃していた福田首相の姿が印象的でした。

 その福田首相です。現在は「私は指導力を発揮して政府・与党をまとめたのだから民主党も党首が指導力を発揮して党内をまとめてもらいたい」と思っているのではないでしょうか。

 国民のことを忘れた「政局優先」の政治は困ります。与野党ともに国民あっての政党です。国会が本来の国会としての役割を果たしてくれるよう期待したいと思います。

2008年4月3日
 ガソリン税など道路特定財源の暫定税率維持を含む税制関連法案は、衆参両院議長のあっせんがあったにもかかわらず、2月29日の衆議院通過から一ヶ月もの間、参議院で一度も審議されないまま新年度を迎え、ガソリン税の暫定税率の期限が切れてしまいました。

 国会では、税制改正法案など歳入法案の成立の遅れは国民生活や地方財政に大きな影響を与えるため慣例として次年度の予算案とともに年度末の3月31日までに成立させてきました。

 現在の国会は衆参で多数党が違うという「ねじれ状態」にあるとはいえ、今回立法府の良識として続いてきた慣例が破られたことはきわめて残念なことです。

 巷では「国会が国会の役割を果たしていない」「政治のツケを国民にまわすな」と与野党双方に対して厳しい意見が噴出しています。

 福田首相は「ガソリン価格の引き下げだけを主張し、人気取りに走ることは簡単です。しかし、しっかりとした見通しのないままでは、子供や孫たちの将来世帯にツケを回すだけになってしまいます。私としてはこの国と、子供たちの将来のためにも、暫定税率の維持をお願いしたいと思います。そして、一日も早く参議院で結論が出ることを期待しています」と記者会見で語っています。

 また「道路予算のムダの排除へ、国の支出全体について抜本的な改革を行い、行政全体のムダの排除に取り組んでいく」とも決意を語っています。

 注目すべきは「道路特定財源の2009年度からの一般財源化」を福田首相自身が思い切って提案したことです。私は勇気のある提案だと思います。伝えられるところによると「殿ご乱心」と官邸に駆けつけた自民党の幹部があったほど従来の自民党からすれば驚天動地の新提案だったのです。

 これに対して民主党は歩み寄ろうとしませんでした。その頑迷ぶりは「今の民主党にとって、道路財源問題は、選挙のための手段になっていると見るしかない」(毎日新聞)など各紙が指摘するとおりです。国民生活より政局を優先する姿勢はこの際ぜひとも改めてもらわなければなりません。

 現在の民主党の姿勢に対して、民主党の内部からも「暫定税率の廃止がなければダメだと突っぱねるのはおかしい。一般財源化こそ改革の本質だ」(前原誠司前代表)などの意見が出ています。

 4月末まで約1ヶ月あります。この間に参議院では今度こそしっかり議論して良識の府らしい結論を出してもらいたいと思います。審議することが選良としての務めであることを今一度肝に銘じてもらいたいものです。

2008年3月21日
 戦後初めて日本銀行総裁が空席となりました。福田康夫首相が出した総裁の人事案が国会で同意を得られなかったためです。

 福田康夫首相は20日の内閣メールマガジンで、戦前の浜口雄幸首相の「唯一正道を歩まん」という言葉を引用して心境を語っています。

 「ただ空白を避けるため、当たり障りのない人物で政治的妥協を図ることはできたかもしれません。しかし、日本経済や国民生活に大きな影響を与えるポストだからこそ、逆に、人物本位を貫くべきだと考えました」と首相の気持ちを正直に述べているのです。

 たしかに参議院で多数を占める野党は財政と金融を分離する原則から財務省出身者の日本銀行総裁を認めないという態度をかたくなに固執し続け、2度にわたって首相の人事案を不同意にしました。この野党の政局を優先した態度を認めることはできません。

 しかし冷静に考えてみて野党が反対することがわかっていながら、かたくなに自分の考えを貫く首相の方針もいかがなものかなと正直、私は思います。

 国民の目線に立って今回の成り行きを見ていますと、どっちもどっちだなと思う人が多いのではないでしょうか。お互いに正しいと思ったことを少しも譲らないのでは子供の喧嘩と同じでいつまでたっても平行線でしょう。

 日本銀行総裁の空席が今後どんな形で国民に不利益を生ずるのか今の時点では明確ではありません。しかし日本の国際的な信用が失墜したことは間違いありません。

 国民生活のうえでは日本銀行総裁の空席以上に深刻な事態を招きかねないガソリンなどへの暫定税率をどう扱うかについても国会での見通しは立っていません。

 政府は暫定税率の10年延長を盛り込んだ税制関連法案を国会に提出していますが参議院ではまだ審議にすら入れていません。

 3月末まであと10日です。この間に与野党協議がまとまらなければ国民生活の混乱は必至です。衆参のねじれ国会では与野党が持論をぶつけ合っているだけでは何も決まらないのです。

 与野党の協議がガソリン代を値下げするかしないかといった矮小化した議論ではなく、日本の道路行政の抜本的な改革はどうあるべきか。そのための税制はどうあるべきかを論じたうえでの合意をぜひとも作り上げてもらいたいものです。

2008年3月4日
 13万部突破のベストセラー「千年、働いてきましたー老舗企業大国ニッポン」(野村進著、角川書店)を読みました。

 この本は世界最古の会社がヨーロッパのどこかの国ではなく実は日本にあること、しかも西暦578年なんと飛鳥時代から続いている建築会社が大阪にあることから書き始めています。

 ほかにも創業して1300年になろうかという北陸の旅館、1200年以上の京都の和菓子屋、同じく京都の1100年以上の仏具店など日本には気が遠くなりそうなほど長寿の老舗がありますが、この本は職人たちの集団としての製造業に焦点を当ててその長寿の秘密を探っています。

 なぜ日本にだけ老舗の製造業が生き残るのか。著者はものづくりの現場を徹底取材します。そこで得た一つの結論は日本人は伝統的に職人を尊ぶこと。「名人」として最大級の敬意を払われたのはサムライではなく、職人であったことを挙げています。

 江戸時代の約260年間は世界史上でも稀に見る平穏な時代でしたが、それ以前と以後は激動期でした。ことに幕末の開国から現在に至る約150年間は、前代未聞の規模とスピードで技術革新が進み、急変を遂げてきた時代でした。

 こうした時代の有為転変を乗り越えてきた老舗製造業を通して職人たちのものづくりへのあくなき挑戦をこの本は綴っています。

 そして「生きとし生けるもの」への敬意と「伝統は革新の連続」という創造への挑戦。この「職人気質」こそこれらの老舗製造業が生き続けてきた秘訣であると言っているのです。

 著者は「あとがき」を「4,5000年前の金細工が目の前で光り輝いているというのに、100年以上続く老舗は皆無に近い。それでも、地中海からそよいでくる風の中で、古代遺跡は今なお偉容を誇っている」とトルコのイスタンブールで書いています。

 本当にそうだと私は思いました。「東西文明の十字路」であったトルコには今もシルクロードが縦横に走っています。そのシルクロードの街路樹に蜜柑が植えられており、隊商が通った時代のままの風景がどこまでも続いたことを私も覚えています。

 古代遺跡やシルクロードは日本にはありません。けれども日本には老舗を通しての職人の文化が今も色褪せることなくいよいよの光沢を放ち続けているのです。

2008年2月14日
 米国大統領選挙の民主党候補指名争いが世界の注目を集めています。バラク・オバマ上院議員とヒラリー・クリントン上院議員、メディアを通して伝えられる二人の候補者の攻防戦は迫力があります。

 12日の首都圏決戦ではオバマ候補が全勝しました。獲得代議員数も1215人となり、1190人のヒラリー候補を初めて逆転しました。

 5日のスーパーチューズデー後、実に7連勝です。勝利した州は22にのぼり、ヒラリー候補の12州を大きく引き離しています。

 3月4日には大票田のテキサスなどで予備選挙が行われます。ヒラリー候補はここでの逆転に全力を傾けているようですがどうなることでしょうか。興味深々です。

 本番の大統領選挙は民主党、共和党の候補者が決まる両党の党大会を経て2008年11月4日に全米で一斉に行われます。ここで決まった次期大統領が2009年1月20日に正式に合衆国の大統領に就任します。

 大統領に就任するのは誰なのでしょうか。民主党か共和党かにも興味はありますが、民主党の候補者が誰になるのかにもっと興味があります。

 おそらくその方が大統領になるでしょう。だからこそ民主党の候補者指名争いが事実上の大統領選挙として世界の注目を集めているだと私は思います。

 米国はダイナミックに変わろうとしています。世界もまた劇的に変化していくことでしょう。そんな世界の中で日本だけが取り残されてはなりません。

 衆議院と参議院の多数党が違うことから来る国会のねじれ状態が国の意思決定や政策の決定を遅らせることを私は心配しています。

 国会はこの国がどうあるべきか、明確な青写真を描いて政策を競い合う場であり、党利党略の場ではありません。国会論戦が国民の大向こうを唸らせるものとなるよう期待しています。

2008年1月18日
 NHKの「スーパー職人大集合!技能五輪に挑んだ若者たち」をたまたま見ました。これは昨年11月静岡県で開かれた技能五輪国際大会で活躍した日本代表選手の代表18人が出演したものですが彼らの話に引き込まれるように最後まで見てしまいました。

 技能五輪は2年に1度開かれる「職人たちのオリンピック」です。自動車板金や機械組立、建具や石工、洋菓子製造や西洋料理など47種目で世界一を決めるものです。

 参加資格は22歳以下の若者に限定、各地各国の予選を通過した選手が厳しい訓練を重ねて磨き上げてきたものづくりの腕を競います。

 日本が静岡県での国際大会に送り込んだ代表選手は51人。世界の競合と渡り合い金メダル16個を獲得し、参加した46の国・地域の中でトップに輝きました。

 テレビのスタジオにはその代表選手の代表18人が集合したのですが、ものづくりや手仕事に青春の情熱を傾けるようになった動機や支えてくれた親方や家族との感動秘話などを熱く語りました。

 代表選手の一人一人はどこにでもいるような若者ですが、一人一人が手仕事を通して「汗と涙の青春ドラマ」を繰り広げているのです。それだけに彼らの語る言葉には重みがありました。

 自動車板金に打ち込んでいる若者は「腕を磨いて新車発表会に出す車のボディ製作をしたい」と語っていました。

 私は若い頃、浜松のヤマハ技術研究所で「トヨタ2000GT」を開発設計する一員として仕事をしたことがあります。第1号車を試作発表できた日の感動は今も忘れることはできません。

 とともに思い出すのは、一枚の板金から車のボディをたたき出した一人の板金工の姿です。その人は会社の人ではありませんでした。優秀な職人を臨時に雇ったのです。

 一人で研究所の中の試作工場に来て設計図と木型だけであのトヨタ2000GTの流線型の綺麗なボディを叩き出したのです。太い腕、精悍な顔つきそれでいて人なつっこい笑顔でした。

 会社の上司が「彼の日当は君の月給を超えるよ」「男は誰にでもできない仕事ができるようにならなければね」と言ったことも思い出します。

 ものづくりそして製造業は産業の基盤だと私は今も思っています。若者がものづくりに情熱を傾けてくれることほどうれしいことはありません。