今月の俳句

2018年4月

日曜の家族総出の花見かな

知る人ぞ知るお花見の名所とて

中世の城址より見る春霞

長宗我部氏の居城跡花万朶

国宝のお城を仰ぎ桜見る

日本一早く咲き満つ桜見る

とりどりのブーゲンビリア咲ける園

園芸の団地にバナナ実る土佐

青空に白を散りばめ桜咲く

これほどの染井吉野の白さかな

水青き美濃田の淵の桜かな

鶯の声の美濃田の渕渡る

咲きて知る眉山こんなに山桜

蒲公英の原にごろりと大の字に

見渡せば桜さくらとなりし園

いつも見る山にこんなに山桜

うぐひすの息の長さを競ふかに

蒲公英や平和な日本ありがたし

蒲公英の丘に兜太も遊ばれよ

のどかかな丸太の椅子の温かく

遠山は帯のやうなる花曇

犇めけるほどに咲き満つ桜かな

咲き満てる桜の下の二人かな

滝のごとしだれて垂桜かな

遠目にも垂桜のしだれやう

その奥の木陰に凛と著莪の花

日当たりてあけぼの躑躅らしき艶

桜散るバージンロードなる庭に

ささやかな風に桜の散り急ぐ

チューリップ真っ赤や子供らの頬も

チューリップ園を一年生走る

春眠の子を起こさない日曜日

春眠の子の安らかな目覚めかな

春眠の孟浩然となりてゐる

大振りでありてつましき花大根

種取ると隅に一畝花大根

大根の花は質素でありにけり

朝市に花の咲きたる大根も

秋田より来られし遍路肌白し

国分寺今はお札所豆の花

大根の花咲く路地を遍路来る

犬連れて来しも遍路でありにけり

その中に二羽の子鴨も残る鴨

池の端に寄り添ひてをり残る鴨

うぐひすを後に鐘の音を前に

菜種梅雨とは少し降り少し降り

菜種梅雨大きな傘の一年生

菜種梅雨にも梅雨寒のありにけり

湯煙の上にぼんやり春の月

湯籠提げそぞろ歩けば春の月

春の月墨絵のやうに浮かびをり

春の月三千院の闇の上に

桜草咲いて明るき庭となる

新婚の真白きテラス桜草

桜草名もまた美しき小花かな

プリムラと呼ばずに桜草と呼ぶ

鳥の巣の世界遺産の宮殿に

鳥の巣の木の教会を見下ろして

煙突に鸛の巣置く民家

引き潮となるを待ちかね鹿尾菜刈る

鹿尾菜干し磯の香りの強くなる

給食の鹿尾菜が好きと吾子の言ふ

鹿尾菜には植物繊維たっぷりと

栄養士鹿尾菜を食べと今日も言ふ

鹿尾菜ちょっぴり歌舞伎座のお弁当

春の闇水の張られた田の匂ふ

火の帯のやうに躑躅の群れて咲く

燃え上がるやうな躑躅の咲きっぷり

遠目にも白き一叢著莪の花

著莪咲いて城址明るくなりにけり

藩主墓ぐるりと囲み捩れ花

後室の墓仰ぐかに捩れ花

藩主墓巡ればここも捩れ花

八重一本残して桜散りにけり

桜蕊積もれる土のやはらかく

たんぽぽや一番小さき藩祖墓

敷石の隙間にまでも捩れ花

花冷えの風連れ鼠木戸くぐる

芝翫の宗五郎も見て花も見て

外つ国の人で賑はふ牡丹苑

雨後の牡丹の色でありにけり

牡丹には日除けの和傘よく似合ふ

黄牡丹に甘い香りのありにけり

卯の花の白を際立て雨上がる

本堂になんじゃもんじゃの白い花

ひっそりと御苑の庭の藤の花

青楓さ揺らす風のありにけり

スカイツリーに目高のやうな五月鯉

スカイツリーに纏はる小さき五月鯉

大きかり大内宿の鯉幟

茅葺の家に大きな鯉幟

みちのくの大内宿の鯉幟

山笑ふ中に大内宿の里

打水のされて大内宿の道

庭先のサイダー冷やす雪解水

茅屋根の葺き替へ工事寄り合ひて

葺き替への掛け声もなく手際よく

一本の葱でいただく宿の蕎麦

春風の蕎麦屋の暖簾揺らしゆく

薫風にネモフィラの花さざめける

麗かにネモフィラの咲き満てる丘

春光にネモフィラ青く煌めける

ネモフィラの丘より春の海を見る

緑陰の三つ葉躑躅の明るさよ

見渡せば視野の果てまでチューリップ

畳敷き詰めたるやうに著莪の花

池の端を埋め尽くして紫蘭咲く

犇めきて咲ける躑躅の明るさよ

外つ国の人も御苑の躑躅観に

浜茄子の花の御苑の薔薇園に

霾晴れて東京駅の美しく

2018年3月

山寺の崖一面の蕗の薹

聴きたしと思ふ初音のつづけざま

マスク越しにも香の届く梅の里

広き野に出れば初音のつづけざま

二分咲きの白梅にある気品かな

せせらぎの音にも春のリズムかな

春を待つ千年の楠緑濃く

酒蔵を開けて新酒の飲み比べ

試飲する四国の新酒一堂に

直売の詰め放題の新若布

熱湯にほとばしる青新若布

浜茹での束の間なりし新若布

湯通せばたちまち真青新若布

聴くほどに鶯の声らしくなる

鶯を聴けて足取り軽くなる

部屋中に香りを満たし梅の花

大甕にどっさりと活けある椿

百年の老舗ロビーに山桜

伊予柑の香る道後の朝の町

菜の花の方へ散歩の足の向く

菜の花や隣の畑も宅地へと

異変かな北の大間に鰆来る

大間には臨時ボーナスなる鰆

どれも皆胴長なりし鰆かな

瀬戸内の潮路に傾ぐ鰆舟

野遊びのやうに札所でお弁当

椋鳥に桜の目白散らされて

九分咲きの花をさ揺らし散らすもの

尺八と琴聴き花を見る宴

山里の春の曲の調べを聴く花見

蜂須賀の世より伝へて初桜

青空に紅き蜂須賀桜かな

群れに群れ加へ一気に鴨帰る

はるかへと螺旋を描き鴨帰る

裏庭に山茱萸の咲く武家屋敷

青空へ山茱萸の黄の鮮やかに

早咲きの桜に人も小鳥も来

花冷えに熱き善哉ありがたく

はくれんの膨らみ初めし空青く

はくれんの蕾のどれも天を向き

ジグザグの一筆書きや蜷の道

人工の小川にしかと蜷の道

蛍のふるさとの川蜷の道

芽柳を巡り道後の町巡る

芽柳や道後湯の町坂の町

芽柳の下で足湯をいただきぬ

芽柳の町に人力車の並ぶ

茶室とは簡素で質素利休の忌

菅笠を掛けある茶室利休の忌

金箔の加賀の茶室や利休の忌

裏千家表千家の利休の忌

クローバーの花のティアラをご覧あれ

クローバーの花でティアラを作る子ら

荒畑を緑豊かにクローバー

いぬふぐり足の踏み場もなきほどに

どれ見ても太陽に向きいぬふぐり

お日様とにらめっこかないぬふぐり

車窓より天道虫の飛び込み来

うららかや車の窓を全て開け

アメリカのテンガロンハットなる遍路

遠回りして来る遍路日和かな

梅林の土ほかほかとしてをりぬ

手の届く高さに揃へられし梅

早咲きの桜は赤く空青し

水仙の終りし後の黄水仙

白魚の川寒鯔の川となり

取木さる椿の負傷兵のごと

尻擦りつつ椿山上るバス

その奥に侘助楚々と咲き残る

断崖の絶壁にまで咲く椿

落椿たどれば順路見えて来し

椿咲く尾根は水師の逃げし道

椿咲く径に群れ咲き黄水仙

濡れてゐるやうな椿の艶やかさ

椿咲く幹より直に咲くもあり

侘助を一輪挿して利休の忌

焼夷弾落ちたる庭の土筆かな

見渡せば土筆の海となってゐし

幼な子と数競ひ合ふ土筆狩

酢味噌和へしたる土筆は母の味

はやばやと田水張りあり初燕

初燕眉山山頂旋回す

2018年2月

三寒の畑の土の硬さかな

今日もまた三寒の風尖れる

四温などまだまだ先といふ日和

どっと来る旅行案内日脚伸ぶ

夜型を昼型にせん日脚伸ぶ

待ち時間長き病院日脚伸ぶ

もう一度バイエル弾かん日脚伸ぶ

天気図は縦縞模様春遠し

噴水の柴山潟の凍返る

白銀の世界に鴨の陣を張る

奥能登の雪の山里抜けて行く

藁屋根に積もりし雪の嵩を聞く

買初めは輪島朝市干鮑

店先は雪退かしあり朝の市

冬の海猛る白米千枚田

白雪の荒ぶ白米千枚田

雪積もる駅舎のポストいと赤く

解け始む氷柱の放つ光かな

寒鯔を待ちし櫓の高さかな

内浦の里は静かや春を待つ

能登島も和倉も雪の朝明ける

湯煙や雪の和倉は静かなる

加賀屋なる正月飾り残る宿

弾初の琴の調べを聞く湯宿

海荒れて寒風荒ぶ渚かな

冬波になぎさドライブ中止さる

音もなくしんしんと降る古都の雪

レトロなる街に静かに雪の降る

寄鍋の老舗の今も主計町

路地端に雪に埋もれし寒椿

雪積もる園に真っ赤な傘の人

雪吊の兼六園へ雪の日に

雪乗せし琴柱灯籠見て飽きず

雪溶かし辰巳用水滾々と

薄氷の霞ケ池を埋め尽くし

薄氷に内橋亭も閉ざされて

降る雪や昭和も遠くなりにけり

雪晴れて鏡のやうな浅野川

初旅の金沢駅の鼓門

春めける彩り並ぶロビーかな

雪被る弁慶富樫義経も

雪しまく安宅関は海までも

立春をあすに師の句碑立ち上がる

冬日和賜り冬日和の句碑

霜の朝きっと晴れると祝の場へ

冬晴れに祖谷誌主宰の句碑除幕

辛夷咲き初めたる園に句碑除幕

冬日和に冬日和の句碑除幕

張り付きて瞬かぬ星冴返る

縮こまり尖る蕾冴返る

冴返る能登の輪島の空の青

凍返る輪島の朝の市の露地

いぬふぐりゴッホの描きし畑にも

梅林のふくよかな土いぬふぐり

ふくよかな土に丈あるいぬふぐり

春を呼ぶ三千人の第九かな

外つ国の友と第九を水温む

気負はずに咲きていぢらし寒牡丹

寒牡丹散り初め金子兜太逝く

恋知らぬ乙女のやうな寒牡丹

美しく生きるは難し白牡丹

のぞき込むやうに眺めて寒牡丹

黄牡丹にほのかな香りありにけり

楽日にも蕾をつけし寒牡丹

藁囲されて可愛ゆき寒牡丹

美しき和名の名札寒牡丹

黄金の蠟梅の香のほのかなる

蠟梅の犇めき咲ける明るさよ

満作の赤を満作かもと見て

満作の満作らしくちぢれ咲き

土割りて出でしものあり福寿草

ほころべる黄のみづみづし福寿草

東京の寒波の緩み馬酔木咲く

穏やかな日差しとなりて馬酔木咲く

三椏の花はほぐれを解きて咲く

三椏の花は質素でありにけり

2018年1月

初夢の途切れ途切れでありにけり

初夢のハッピーエンドまで行かず

初夢や富士鷹茄子のちらりとも

ゼロ歳の赤子が主役初詣

十六人家族総出の初詣

揃ひたる孫八人にお年玉

年酒とて大吟醸の飲み比べ

お雑煮の餅は一つで結構と

正月の餅を詰まらせ逝く人も

正月を無事に過ごせし嬉しさよ

子ら去にて元の二人の薺粥

色のなき山に山茶花咲き満てる

山茶花の散り敷く赤の瑞々し

閉校の庭に真っ赤な茶梅かな

こぼれゐし山茶花なほも真っ赤かな

山茶花のモノトーンなる庭に咲く

山茶花の散れば散るほど咲き続く

饂飩屋の一部屋借りて初句会

初句会まづは饂飩をいただきて

饂飩屋の庭に万両凛と咲く

徳島の雪は全国へのニュース

青空も見えて明るき阿波の雪

昼までに消えてしまひし阿波の雪

阿波の雪高速道路まで閉ざす

少し雪降れば渋滞続く阿波

阿波に雪蜂須賀桜植ゑられず

湿りゐて重たき阿波の初雪よ

淡雪の薄化粧せし眉山かな

即吟の句会のありし宵戎

不夜城となりし昔の戎市

雪洞を連ねし昔戎市

寒卵プリンのやうな白身かな

凍てし夜は目高の鉢を家に入れ

名刀展見て来きし街の冴返る

千年の古刀の光り沍返る

吉野川河口一キロ海苔の篊

一筋の航路を残し海苔の篊

川幅をくまなく満たし海苔の篊

震災の熊本よりの猿廻し

猿廻し見て震災の募金もし

いとけなき子猿が主役猿廻し

首傾ぐ仕草に拍手猿廻し

玉乗もビッグジャンプも猿廻し

猿廻しべそをかくのも芸のうち

悴める身に熱かりし草津の湯

悴める五体を出湯にゆったりと

悴みし五体の出湯に解け行く

寒灯の点かぬ空き家の増えし谷戸

寒灯に山の暮らしをあれこれと

寒灯の星のやうなる祖谷に入る

はるかなる寒灯目指し野の道を