今月の俳句

2020年3月

我が狭庭二羽も目白が金柑に

ウイルスにマスク売り場のがらんどう

ウイルスに平らげられしマスクかな

ウイルスは居座るマスク召し上げて

どこもかもマスク売り切れ春遠し

江戸の世を今に蜂須賀桜咲く

母樹と言ふ蜂須賀桜咲き満てる

鈴生りのやうに目白の来る桜

目白来て甘き香りのする桜

遠目にも赤き蜂須賀桜かな

雨多き年の桜は色濃きと

啓蟄や田にこんなにもこふのとり

啓蟄の土新しき土竜塚

鷹化して鳩となるてふよき日和

剪定をせざる梅林荒れ果てて

据ゑ置きし梅の剪定硬かりし

剪定のされて梅林らしくなる

朝市に研ぐ剪定の鋏かな

剪定を待つ梨畑のひろびろと

遥かへと続く梨畑剪定す

ふるさとに蜂須賀桜咲く山を

卒寿なほ元気に桜育てられ

谷越えて山越えて行く梅まつり

氷雨降り風の冷たき梅まつり

橙青の句日記を読む海保の日

橙青の鷹の句碑の上鷹渡る

橙青の句碑の岬へ海保の日

掃海をせし日は遠し鰤起し

掃海は歴史の彼方松葉蟹

斬首さる大根の列続く畑

斬首さる大根太く畑にあり

菜の花の明るき新興住宅地

菜の花のこの黄どう描くゴッホなら

ウイルスに下がる持株春遠し

ウイルスの春雷世界激震す

暴落の株価ウイルス猛る春

爆発す如く茎立ちブロッコリー

葉牡丹の渦巻き上げて茎立てる

茎立ちの芥子菜並ぶ朝の市

茎立ちを待ちて芥子菜漬け込みぬ

茎立ちてこそ芥子菜の旨くなる

燕来る遠路はるばる来られたる

生まれたる巣に帰り来し燕かも

ともどもに来てちりぢりになる燕

水底の途切れ途切れも蜷の道

くねくねとくの字への字や蜷の道

人工の蛍の川の蜷の道

一筆で描き切ったる蜷の道

ドイツ兵俘虜の野遊セピア色

遊山箱提げて野遊びせしことも

遊山箱詰め替へもらひ野に遊ぶ

美しき写真の並ぶ苗木市

値札より話始まる苗木市

花つきしものは前列苗木市

実のつきしものには支へ苗木市

逸物は値札を付けず苗木市

卒業式できなかったと写真撮る

卒業証書大きくかざし写真撮る

卒業式できねど写真晴れ着着て

ウイルスに人間籠り地虫出づ

葉桜も赤き蜂須賀桜かな

ウイルスにお花見会のできず散る

早咲きの蜂須賀桜早も散る

蜂須賀桜植ゑし横綱勝ち進む

お花見のできざるままに花は葉に

風ありて少し間のある落花かな

桜散るそんなに急ぎ散らずとも

何事もなかりし如く桜散る

パンデミックなる世を遠く日向ぼこ

青空に白木蓮の清々し

遠目にも白木蓮の輝いて

ウイルスに五輪も延期雲雀鳴く

パンデミックなる世を余所に雲雀鳴く

田水まだ引かれをらねど初燕

斜交ひにはすかひに飛び初燕

剪定の終り梨畑ひろびろと

剪定の終り明るき梨畑に

休校のプールに鴨の来てをりぬ

休校のプールに鴨の飛んできて

伸び伸びと庭師の庭の新松子

我が庭はぽつりぽつりと新松子

幹黒き柿の大樹の若葉かな

2020年2月

南の更地となりて冬うらら

煮凝の鯛の目玉をいただきぬ

町中にあふれる光り春近し

青空に浮かぶ白雲春近し

冬日差すおきざり草のまぶしさよ

春近しおきざり草の犇めける

早春の光やさしく更地にも

早春の光名のなき墓石にも

早春の森に鳥声途切れなく

ほっこりと土盛り上がり下萌ゆる

下萌ゆる野に吹く風の冷たさよ

下萌や母なる大地なる言葉

先陣を争ふごとく下萌ゆる

よき日かな梅に鶯目の前に

犇めきて立つ生花の水仙は

黄水仙ガラスの鉢に活けられて

目の前の梅に笹子の来て止る

せせらぎの音に紛れて笹鳴ける

帰らんとすれば笹鳴き続けざま

マスク越しにも梅の香のほんのりと

鶯の梅から梅へせはしなく

期せずして梅に鶯なる景を

目の前に梅に鶯見る日和

花札の梅に鶯目の前に

古き葉を纏ひしままに満作は

臘梅の磴は下りの楽しみに

緩やかな磴より上るマスクかな

をばさんもバレンタインのチョコ売場

バレンタイン知らねどバレンタインの日

バレンタイン限定チョコとチョコの店

何故チョコを贈るのバレンタインの日

チョコに合ふ清酒もバレンタインの日

バレンタインデーとは遠き日のことに

君となら濡れて行こうか春時雨

大手門出れば明るき春時雨

湯巡りの下駄に素足に春時雨

春時雨相合傘で行く道後

漁師云ふ春一番は怖いよと

春一は怖いと古老舟返す

満作の古着剝ぎ取り春一番

春一番吹いて眠りの覚めし山

春一番吹いたと今朝の新聞に

春一番吹いたと遠く聞くばかり

春一番来てより寒波次々に

春一番吹いて大雪注意報

海苔篊の場所は毎年籤引きと

江戸前の海苔の黒さでありにけり

東京の海の青さよ海苔の篊

梅林の朝一番の香の中へ

独りゐて梅の香りを存分に

濃く甘き梅の香りでありにけり

カルストの岩ごつごつと梅の里

紅梅は庭白梅は畑に植ゑ

三日月の鋭く尖り冴返る

また一つ空き家の増えて冴返る

大寒気団の居座り冴返る

どこもかもマスク売切れ冴返る

室咲の蘭の明るき展示会

室咲の蘭の種類のこんなにも

室に咲くカトレア蘭の明るさよ

室に咲きこれも蘭かと思ふ蘭

室に咲く蘭の香りの濃く淡く

室に咲くデンファレ蘭の可憐さよ

紅梅の八重咲きといふ明るさよ

紅梅の犇めけるほど咲き満ちて

二月の市に土佐より文旦が

早々と文旦食べて春を待つ

文旦のほっこり丸く着膨れて

二月の文旦なれどかく甘き

文旦の甘く酸っぱく春立ちぬ

文旦を億里平癒を祈る春

麗かや文旦美味と褒めくれて

室の蘭いただき飾る玄関に

梅見よかと来て蜂須賀桜見る

二分咲いて赤き蜂須賀桜かな

桜の根伸びゆく土手に草萌ゆる

海蝕痕ある城の崖椿咲く

搦手は急な崖道落椿

施肥終へし薔薇園早も草青む

葉牡丹の渦盛り上がり茎立ちぬ

蜂須賀の世より咲き継ぎ臥竜梅

梅の白際立ててゐる幹の黒

蜂須賀の御殿の梅に笹子来る

折れ曲がる枝の節くれ臥竜梅

上品な御殿飾りの雛の顔

贅尽くし檜の御殿雛飾る

手の細く袖の突っ張る享保雛

御殿庭眺めるロビー雛飾る

ホワイトデーへとバレンタインの売場

春を呼ぶ生花展の明るさよ

生花展巡れば春の香りして

名刹の裏は竹藪鳥交る

春日差す百二で逝かれし位牌にも

百二まで生きて眠れる墓麗ら

梅の香におぼれて虻も私も

白梅の香る古刹の静かさよ

梅林の日向日向のいぬふぐり

見通しのよき野に出れば初音して

聞くほどに鶯の声らしくなる

大鷭の鴨に紛れて餌を漁る

一切れのパンに崩るる鴨の陣

2020年1月

山眠る店仕舞せしホテル背に

門松立つ閉店決まるデパートに

門松の高々と咲く梅の花

門松の松竹梅のどっしりと

年改まりこの五月には喜寿となる

新年を孫八人に囲まれて

十六人家族揃ひてお正月

寒鰤を一尾平らげ去年今年

寒鰤もぼうぜの鮨も平らげて

新暦にとホ句の日めくりくだされし

虚子の句のホ句の日めくりお元日

正月のホ句の日めくり破り難し

元気なること確かめる年賀状

百四歳からも元気な年賀状

賀状来るアルゼンチンは暑いよと

台湾は花火上げたと年賀来る

旅行する子らを見送る二日かな

ピアノ曲弾き初めたりもして二日

初売に草月流の花生けて

買初はアメリカ製の無水鍋

寒鯛の刺身大好き子も孫も

寒鯛の刺身の後の鯛茶漬

鯛茶漬食べて宴を終ゆ三日

四日はや子ら自宅へとそれぞれに

子ら去にて家中広くなる四日

ゆっくりと新聞を読む四日かな

門松の迎へてくれし交歓会

葉牡丹の白のまぶしき飾かな

初売のバーゲンとなる六日

七割引なる初売の赤い札

七割引なる初売の札並ぶ

雨降りて風の冷たき寒の入

売り尽くしセール始まる寒の入

冬物の一掃セール寒に入る

葉のついた大根買って来る七日

大根の葉っぱ刻みて七日粥

保育園にも七種の並べられ

それぞれの効用書かれ七種並ぶ

指差して七種そらんじる園児

雑炊のやうな七種粥もまた

行平に緑の美しき薺粥

定宿のホテルの朝餉薺粥

雲晴れて朝から冬日明るき日

十六人家族揃ひて初写真

訃報また訃報のあけて初戎

福笹の閉店決まるデパートに

上野なる東照宮の寒牡丹

雪乗せて際立てる赤寒牡丹

巡り見ていづれも小振り寒牡丹

フードよく似合ふ少女や寒牡丹

みちのくの乙女のやうな寒牡丹

何処より来しか風花はらはらと

人気なき里は風花舞ふばかり

尋ね来し古刹風花舞ふばかり

丸丸と黄身盛り上がり寒卵

卵かけご飯最高寒卵

寒卵生とは生でいただいてこそ

放し飼ひせしものですと寒卵

ラガーらのパスした後も突進す

ラガーらの倒れてもなほ前のめり

ラガーらのその太股の太さかな

ラグビーのルール知らねど面白し

華道展会場飾る室の蘭

ひときわの明るさ室の胡蝶蘭

新築のロビー明るき室の蘭

幾重にも飾られ室の胡蝶蘭

生花の中に葉牡丹飾られて

この渦を見てと葉牡丹飾られて

鉢植の葉牡丹並ぶレストラン

鉢植の鉢に葉牡丹犇めける

電線におしくらまんぢゅう寒雀

着膨れてゐるかのやうな寒雀

昨夜鍋に残れるものの煮凝りて

煮凝の鰤大根でありにけり

恐る恐る煮凝食べてみる私

煮凝のゼリーのやうな旨みかな

耕せる土をついばみ寒雀

外食の饂飩で済ます正月

その姿原始なれども金海鼠

金海鼠私も好きと嫁も子も

真っ先に売れて仕舞ひし金海鼠

初場所の両横綱の不甲斐無く

初場所の小兵力士の勝ちっぷり

初場所の平幕陣の勢かな

初旅の募集案内どっと来る

大寒に黄花亜麻咲き満てる茶屋

大寒の日に国会の始まりぬ

八角のやさしき堂に冬日差す

雨滴置く椿の花と青空と

日の差してまぶしきほどの寒椿

今朝落ちし椿か傷の一つなく

木にありし時のままなる落椿

尾鰭のみさ揺れ寒鯉動かざる

臘梅の香の消えてゐる今朝の雨

臘梅の蝋透き通る雨滴

古宮の奥は竹林笹子鳴く

寒牡丹庭に咲いたと持ちくれし

初場所の幕尻優勝めでたけれ

初場所の初優勝の晴れやかに

初場所の天晴幕尻初優勝