遠目にも卯の花らしき白さかな
雨後の卯の花の白際立ちて
鳴子百合その名の通り鳴子つけ
この道のいつもこの時季鳴子百合
人影の無き公園に躑躅咲く
大小の蕾の並び躑躅咲く
竹の葉に滑らぬやうに筍掘る
掘り頃の筍そこにあそこにも
筍の山猪垣のめぐらされ
取り損ねたる筍の背丈超す
花水木咲ける文学書道館
遠目にも白のまぶしく花水木
水木咲き明るき今日のカフェテラス
水木咲き葉のさ緑の瑞々し
煉瓦塀覆ひ尽して蔦若葉
青柳そよぐ川辺に二人して
両岸に若葉の柳並木かな
若楓美しき倉敷美観地区
風薫る倉敷の町舟で行く
洋館に真っ赤や躑躅群れ咲いて
犇きて咲ける躑躅の白であり
海渡る橋に五月の空青く
新緑の山より下界眺めもし
鶯を背に淡路までよく見えて
連休を家族で初夏の海岸で
松林キャンプの人もちらほらと
みどりの日白鷺城を木陰より
白鷺城五月の晴に真白かな
初夏の日に城の白さの極まりぬ
大手門前にビールと穴子めし
薫風に歌舞伎の幟立つお城
緑陰で登城されたる人を待つ
眠る子と大樹の陰にみどりの日
天守閣見ゆるお濠で舟遊び
遊船の客の笠なる夏帽子
海峡の大橋越えて燕来る
大橋の花壇に躑躅金盞花
これからといふとき何ぞ竹の秋
赤茶けてみすぼらしきは竹の秋
上司より遠州森の新茶来る
六十年昔の上司より新茶
沖縄の友より海雲一斗缶で
沖縄の海雲美味しと御裾分け
返されて返されて堰上る鮎
鮎来れば鷺来て鵜来て鶚来る
堰を跳ぶでんぐり返りゐる鮎も
待ち伏せし上り来る鮎食らふ鷺
午後からはもっと上ると鮎を待つ
鮎上る一二三と続く堰
鮎番の堰を遡上の数しかと
鮎番の大きものから上るてふ
大方は堰跳び損ねゐる稚鮎
弾かれて弾かれて堰落つる鮎
堰の水弾き飛ばして上る鮎
堰上る鮎に二の堰三の堰
堰の水背面跳びで越ゆる鮎
植ゑられし藍にやさしき雨の降る
ひろびろと藍植ゑてあり裏にまで
植ゑられし藍の葉雨に美しく
仙人掌に花や傘寿を祝ふかに
仙人掌のぱっと花咲き今日傘寿
仙人掌のこんなにも咲く朝となり
仙人掌の花のこんなに美しく
日盛りにあれど生き生き薔薇の花
朝刊に出し薔薇園に人の列
園長の今年の薔薇は上出来と
白薔薇の午後となりても凛として
白といふ美しき色薔薇の花
巡り見てやっぱり赤よ薔薇の花
三百種千株の薔薇咲き競ふ
やすらぎの常盤忍の若葉かな
若葉出て常盤忍となりにけり
ひろびろと青田青田や土佐広し
すぐそこに岩石蘭と聞くからは
群生の岩石蘭を仰ぎもし
あやめ咲く植物園の水盤に
植物園中の野草に初夏の花
名も知らぬ野草に美しき初夏の花
土佐に来て五月の雨の冷たさを
八金の五月の雨は冷たかろと
新緑の園にしとしと雨が降る
歩いても歩いても万緑の園
目の痛きほどの新緑高知城
民権の土佐の緑の瑞々し
退助の像に木蔭を花樗
晩柑の後味涼し風涼し
朝市の雪餅草の八百円
朝市に若葉の野草並ぶ土佐
草草に初夏の花咲く土佐の市
鈍行で阿波の若葉の町々を
各停で初夏の徳島本線を
ここもまた無人駅かな草茂る
鈍行で初夏の町見るゆっくりと
区画整理できぬ土地にも田植して
車窓から見上げるほどの花樗
この里はどこの家にも柿若葉
吉野川平野ひろびろ田を植ゑて
大方は歪泰山木の花
壊れたるやうに泰山木の散る
花つけし泰山木も土佐の市
目の前で焼いて叩きに初鰹
叩き好し刺身また好し初鰹
鉢巻をこじゃんと結び初鰹
横丁は朝からビール初鰹
八金のてきぱきと売る初鰹
鶯を聞きほととぎす鳴くを待つ
ほととぎす待てど鶯鳴くばかり
待ちかねしほととぎす聞く続けざま
ほととぎす鳴けば次々次々に
日の陰りいよいよ鳴けるほととぎす
ほととぎす聞くことができ山降りる
山頂の燕は高く高く飛ぶ
川沿ひの桜並木に店も出て
満開の桜が川の両岸に
咲き満てるさくら祭りの桜かな
出し物も揃へてさくら祭りかな
桜見てフラダンスも見る祭り
釣り堀もあるてふさくら祭かな
舟下りしながら桜眺めもし
舟からのお花見子供にも人気
順番を待って乗り込む花見舟
お花見の舟にも救命胴衣して
滝のごとしだれてしだれ桜かな
青空を透かししだるる桜かな
地に触るるほどにしだるる桜かな
やはらかにしだれしだるる桜かな
しなやかにしだれしだるる桜かな
満開のしだれ桜のあでやかさ
とりどりの色美しき糸桜
里山にしだれ桜の咲き競ふ
青空にしだれ桜のくつきりと
日本一しだれ桜を咲かさうと
花の下結婚式の前撮りも
お花見に丸太の椅子も用意され
並ぶとは美しきことチューリプ
オランダは自転車の国チューリップ
オランダの風車懐かしチューリップ
チューリップ何色が好き赤が好き
白もまた美しき色チューリップ
オランダは山を見ぬ国チューリップ
バブル生みたるはこの花チューリップ
チューリップ運河を訪ひし日の遠く
デ・レイケの堰見ゆ岸辺チューリップ
その先に風車も見えてチューリップ
デ・レイケの堰ある川辺桜散る
チューリップ畑の中に散る桜
六十種五万本てふチューリップ
ログハウス風車も出来てチューリップ
カタカナの名札ばかりやチューリップ
これがまあてふものもありチューリップ
年毎に増える新種やチューリップ
家族皆来て楽しめるチューリップ
チューリップ畑に子らは走り出す
年配の夫婦は椅子にチューリップ
私らが植ゑたと木札チューリップ
畝毎に競ひて咲けるチューリップ
原色といふ美しさチューリップ
一巡しも一度赤いチューリップ
今日よりの牡丹祭りの牡丹見る
我独り初日の牡丹見て回る
初日より咲き満ちてゐる牡丹かな
住職も今年の牡丹早咲きと
雨の日の牡丹は午後も生き生きと
大輪の牡丹の凛とあでやかに
百五十種四百五十株の牡丹かな
牡丹咲き塵一つ無き朝の寺
晴れの日の牡丹の金の蕊光る
日の差してまぶしかりけり白牡丹
遠目にも際立ちをりし白牡丹
赤い牡丹白い牡丹と見て回る
庫裏の庭までも牡丹の続く寺
犇きて咲ける牡丹に犇ける
戻り来て同じ牡丹に見入りをり
ちらと見し赤い牡丹をしかと見る
とりどりの牡丹それぞれ美しく
百種三百五十株なる牡丹
三姉妹皆で育てし芝桜
総理より表彰されし芝桜
煙草畑今一面の芝桜
何たって除草除草よ芝桜
仰ぎ見て眼下にも見て芝桜
青空の戸口にまでも芝桜
日当りて影の無かりし芝桜
芝桜まつりはこれでお仕舞と
傘寿なほ好きで育てる芝桜
芝桜育てることが生き甲斐と
一匹で一万円を超す鰆
一匹で一万円の桜鯛
鳴門では一網打尽桜鯛
苗代は作らず苗は農協で
棚田へと田水を引くは竹の樋
水張れば棚田に早も水馬
水を張る棚田歩けば蟇蛙
猫の額ほどの棚田に代搔機
名人の技や棚田の代掻機
竹の樋走る田水や千枚田
百選の棚田の代を掻き始む
百選の棚田に水を引き始む
河鹿聞きたくて鶯聞くことに
河鹿鳴く谷への道の著莪の花
初めての雪持草と出合へもし
初日より咲き満ちてをり藤まつり
藤まつり始まり香り満つ寺苑
ローアングルで撮れと立札藤の花
二百年生き来し藤の瑞々し
百尺の棚一木の藤の花
紫よ白よと咲ける藤の花
満開もこれからも好し藤の花
甘き香の噎せ返るほど藤の花
蜜蜂も熊蜂も来て藤の花
藤咲いて賑やかなりし山の寺
藤咲いて寺に人来る蜂も来る
旅やめて余生を池に残る鴨
広大な池に二匹の残る鴨
一団で残りをりたる川の鴨
どれ見ても太り過ぎかも残る鴨
下萌や大地は命の母である
高齢者ばかりとなりし梅の里
雛人形三万体のひな祭り
ビッグひな祭り今年三十五回目と
ひな祭り見んと三万人が来る
恐竜の町美女と野獣のひな祭り
人形の浄瑠璃も見て雛も見て
品の良き笑みたたえゐる古雛
選ばれし三万体の雛飾る
三万の雛を箱から出し飾る
丁寧に保ちて来たる雛飾る
子供らも混じり総出で雛飾る
とりどりの光彩浴びし雛の顔
ウクライナから来し人も雛を見に
お茶席も設へビッグひな祭り
お抹茶を頂きながら雛を見る
泣き上戸一人をりけり仕丁雛
お澄ましの雛より仕丁雛が好き
見るほどに味あるお顔仕丁雛
仕丁雛ばかりを眺め雛巡る
どの顔も面白かりし仕丁雛
仕丁雛喜怒哀楽のお顔かな
表情の豊かなりけり仕丁雛
遠山に雪の残れど水温む
町川に小魚群れて水温む
水温む川に何やら動くもの
ゆつたりと鯉の泳ぎて水温む
斜交ひに斬って次々挿木する
挿木してこの薔薇園を作りしと
挿木して蜂須賀桜増やせしと
世に遠くゐることに慣れ春炬燵
出かけねばとは思ひつつ春炬燵
春炬燵とは居候かも知れず
仕舞はねばとは思ひつつ春炬燵
山椒の芽一つ含みて味見する
芽山椒のこの美しき緑かな
山椒の芽噛み締めながら山下りる
蛍のために作りし蜷の川
蛍に会社で作る蜷の川
蜷の川社員総出で作り出す
谷の水引けば水路が蜷の川
作りたる川に立派な蜷の道
爆発のやうな茎立ちアスパラは
芥子菜は茎立ち気味が旨かりき
茎立てるものも混じりて朝の市
鮊子のちりめん探し探しても
紀の海へ鮊子船の一筋に
茹で立ての鮊子どつと並ぶ店
茹でられて折れて曲がりし鮊子よ
春泥を踏んで行かねば行けぬ家
春泥をわざわざ踏んで下校の子
春泥を付けて帰る子元気な子
いそいそと四年振りなるお花見に
川面まで赤く蜂須賀桜咲く
咲き満ちて赤き蜂須賀桜かな
お花見のできる平和のありがたく
花嫁も花婿も来るお花見に
朱に染めて蜂須賀桜咲き満てる
青空に赤き蜂須賀桜かな
船からも水の都のお花見は
早々と咲きて蜂須賀桜かな
早咲きの桜に小鳥鈴生りに
早咲きの桜に人も鳥も来て
母樹となる蜂須賀桜聳え立ち
蜂須賀の殿の愛せしこの桜
蜂須賀の世をさながらの桜かな
戦災も生き抜きて来し桜咲く
この桜見んと来る人絶え間なく
四方から仰ぎて眺むこの桜
この時季は昨日も今日もよもぎ餅
五割引なれどふくよかよもぎ餅
この香りこの香りとてよもぎ餅
粒餡の手作りが好きよもぎ餅
日の経てば炙りても好しよもぎ餅
よもぎ餅一品だけで商へる
幟立てよもぎ餅売る札所前
特選句取りし草餅今日も買ふ
花冷えの雨に立つ鷺身じろがず
降る雨に梅の新芽の勇み立つ
ずぶ濡れの恋の猫かなとぼとぼと
花咲けど人来ぬ雨の日曜日
城中の桜を一つづつ巡る
濠の上までも迫り出し咲く桜
濠にまでしだれ咲き満つ桜かな
満開の桜を雨に独り占め
城山の裾に群れ咲き著莪の花
著莪咲いて城山の道明るかり
落椿敷き詰め椿咲き続く
城山のあちらこちらに落椿
どれも皆落ちしばかりの椿かと
とりどりの桜の色でありにけり
美しき若葉をつけしこの桜
垂るるほど犇めき咲ける桜かな
雨の日のしだれ桜のしつとりと
ほんのりと紅差すしだれ桜かな
花冷えの城山巡り花巡る
咲き満ちてゐてもお花見できぬ雨
雨の日の桜を独り見て歩く
ゆつくりと花見る雨の日曜日
日本の野球に見惚れ桜見る
お花見の平和な日本いつまでも
大寒にパンジーの咲くレストラン
大寒にアフリカよりの飾り買ふ
新品の急須が春の襤褸市に
襤褸市に新品の出る初春かな
初春の市で常滑急須買ふ
鹿児島は雪美しき朝ですと
鹿児島の山に積雪ありと云ふ
水彩画展を目指すと初便り
薩摩より水彩画添へ初便り
水彩の絵の美しき初便り
我が庭に今年も嬉し蕗の薹
三つばかり蕗の薹摘み酢味噌和へ
蕗の薹摘めば香りの広がりぬ
蕗の薹摘めば滴る滴かな
蕗の薹この美しき緑かな
天麩羅は酢味噌和へはと蕗の薹
我が庭に春が来てをり蕗の薹
若返りますよと言はれ蕗の薹
苦さこそこの苦さこそ蕗の薹
畑に水張れば来てをり初鴨が
初鴨のゴルフ場の池にまで
ごうごうと雪解の水の走りをり
岩削る雪解の水の白さかな
越後かな雪解水とはほとばしる
旨さうであれど飲むなと雪解水
コンビニに売る節分の恵方巻
節分の恵方巻もう半額に
下萌の土ふっくらと盛り上がり
下萌の休耕田に隙間なく
節分の鬼は園長逃げ回る
節分の鬼に泣き出す子等もゐて
立春に搾り出されし新酒買ふ
蔵元で搾り立てなる新酒買ふ
立春の朝搾りたる酒甘し
その朝にできし酒飲む春立つ日
今朝できし新酒いただく春立つ日
立春の明るき峠越えて行く
立春の光まぶしき瀬戸の海
下萌の土掘り上げてゐる土竜
立春の四国三郎煌めける
出来立ての土竜の土に春日差す
臘梅の屑一つ無き朝の磴
磴下るほどに臘梅匂ひ来る
満作の下界に春を告げるかに
満作の花はもじゃもじゃなりしかな
梅咲いてゐるかと来れば咲いてをり
梅咲いて子の駆け回る日曜日
梅咲いて団欒の輪の広がりぬ
一輪の冬薔薇残る薔薇園に
噴水に春の日差の柔らかく
噴水に虹出る春の日差かな
ひろびろと寺領の畑を焼いてをり
焼畑の中なる備中国分寺
五重塔聳える寺の畑を焼く
猫柳見てより山の札所へと
撫でてみるものの一つに猫柳
猫柳探せば今日も水際に
無造作に生けて絵になる猫柳
鶯を丸太の椅子に待ちて聞く
鳴き競ふかに鶯の左右から
鶯の谷渡りなるアリアかな
鶯を飽きるほど聞き山下りる
目の前の梅に鶯来て鳴ける
目の前に梅に鶯なりしかな
箥薐草一と日採らねば伸び過ぎて
根の赤きところが旨し箥薐草
江戸前の海苔前金で買ふことに
江戸前の海苔の香りでありにけり
江戸前の海苔なる艶でありにけり
ひろびろと東京湾の海苔の篊
富士見える東京湾の海苔の篊
下萌えの土ほかほかとしてをりぬ
捨石をひっくり返し下萌える
梅咲いて今日弟の七回忌
日脚伸ぶ今日も旅行の案内が
飾られませんかと届く古雛
飾りしは一度切りてふ古雛
古雛なれどお顔の若々し
色白で見目麗しき古雛
爺婆となりて初めて雛飾る
雪洞を灯せば雛のかしこまる
雪洞を灯してこその雛飾
咲いたよと梅の名所の句友より
耳元に来られて梅を見に来よと
四分咲きの見頃の梅を見に来よと
見頃なる名所の梅を見て見たし
句碑の辺に芹も薺も蘿蔔も
句碑を守る紅白の梅揃ひ咲き
藁苞にかしこまりゐる寒牡丹
黄花亜麻咲かせ句碑守る人の春
句碑囲むやうに今年も福寿草
草萌る土踏み締めて句碑巡る
句碑の辺の土やはらかく繁縷萌ゆ
黄花亜麻咲く早春の日溜りに
藁苞の小さきに寒牡丹二つ
見廻せば蕾あまたや寒椿
明日は咲きそうな蕾も寒椿
齢毎に過ぎゆく早さクリスマス
一年の早過ぎにけりクリスマス
一年のかくも短しクリスマス
白夜なる北欧をふとクリスマス
クリスマスサンタになりし日の遠く
太っちょのサンタと吾子に言はれし日
美しき雪の帽子や花八手
雪被り赤の極まる実南天
百六年振りの大雪徳島市
徳島に雪雪雪の一と日かな
飛び出して雪玉作る姉弟
一日で消えて仕舞ひし阿波の雪
見るたびに艶の出て来し吊し柿
晒すほど曝されるほど吊し柿
大振りや産直市の門松は
手作りの門松立てて竹の里
店頭のミニ門松のよく売れて
小さくとも門松らしき勢あり
葉牡丹の渦に見惚れてをりにけり
葉牡丹の渦に勢のありにけり
閑話には空耳となるこつごもり
あと一日ある嬉しさのこつごもり
孫らも来おおつごもりのうどんすき
一番に起きて暦を新しく
一番に起きて若水供へもし
子と嫁と孫に囲まれお正月
子の洗ひくれたる車初乗す
初乗はビーチホテルへ家族らと
十六人家族揃ひて新年会
お正月家族全員健康で
初暦めくりて虚子の句を吟ず
初暦めくり句友の句を探す
初暦めくり我が句を確める
初暦めくり傘寿の日をめくる
真つ新な明日の並ぶ初暦
春著にもマスク外せぬ年なりし
幾度も鏡見てゐる春著の子
走るなと皆に言はれて春著の子
解説の元横綱も春著著て
凍蝶に老いの厳しさ見てをりぬ
凍蝶に動く力の残りをり
死んでゐるかの凍蝶の飛び立ちぬ
大方はレンタル春著なるさうな
福引の外れはティシュ山に積み
福引は子供の運に任すべし
福引で鍋をもらひし昭和かな
福引の一等賞を子が当てし
寒灯の藁家を訪へばカレーの香
寒灯を満艦飾に客を待つ
奥宮の寒灯昼も灯されて
健康に生きよと叱咤する賀状
綿綿と近況綴る賀状も来
今年までてふ賀状多くなり
メールより賀状が嬉し温かし
繰り返し読める楽しさ年賀状
今年こそ会おうと賀状アテネより
水仙の紀伊水道に傾れ落つ
傾れ咲く灘黒岩の水仙は
門松の立つ料亭で初句会
一番に来て門松の門くぐる
門松の脇に正月飾りかな
葉牡丹を芯に正月飾りして
屋敷まで正月飾り続く道
小さくとも正月飾り勢あり
老松に寄り添ふように実万両
日の差して赤の極まる実万両
庭園の岩抱けるかに実万両
遠目にも赤美しき実万両
庭園の箒目にある淑気かな
箒目の一際美しき小正月
山茶花のこぼれては咲き続く庭
山茶花を散らしてゆきし昨夜の雨
寒鯉の固まり合ひて動かざる
ぢつと見てをれば寒鯉動き出す
寒鯉の一つ動けば三つ四つと
寒鯉の水を蹴立てて走り出す
庭園を見てより新年句会へと
小正月ですと繭玉飾られて
繭玉に触れて大玄関に入る
雑煮も出女正月の日の句会
はじかみを添へて鰆の菜種焼き
数の子もごまめ雑煮も出る句会
小正月どなたも健啖なりしかな