百歳の枝垂れ桜の威容かな
百歳の枝垂れ桜の枝垂れやう
百歳の枝垂れ桜を仰ぎ見る
百歳の枝垂れ桜を見んと来て
百歳の桜に屋台まで出来て
百歳の桜に臨時駐車場
百歳の桜に人の集まれる
遠目にもほんのり赤き山桜
枝垂れ桜越しに山桜も見え
境内を敷き詰め枝垂れ桜散る
チューリップ眺め桜も仰ぎ見て
原色といふ美しさチューリップ
整列もまた美しきチューリップ
もう走り出してゐる子らチューリップ
咲き初めし染井吉野のほの赤く
チューリップ園に水車の建物も
赤い花白い桜と咲き満ちて
枝垂れ咲く牡丹桜でありにけり
室咲きの胡蝶蘭かな一列に
室咲きの青美しき胡蝶蘭
遠目にも咲き満ちてをり花の山
満開の花のトンネルくぐり行く
下山する人が優先花の山
この山の枝垂れ桜を今年また
枝垂れ桜越しに阿讃の峰も見て
枝垂れ桜とはこんなにも大振りな
風なくも枝垂れて枝垂れ桜かな
満開の桜広場を走る子ら
咲き満てる花を眺めてゐる二人
お花見をするのは大人子ら走る
子ら遊ぶ枝垂れ桜を身に纏ひ
散り敷ける上に一片また落花
桜散る大地に早も蒲公英が
散り急ぐ花はなけれどまた落花
散る桜残る桜もやがて散る
桜散る大地の土に帰りゆく
午後となり少し萎れてゐる牡丹
日を浴びて牡丹いよいよ艶やかに
犇きて咲ける牡丹もありにけり
咲き揃ひ牡丹の寺となりにけり
鉢植の牡丹の紅の艶やかさ
鉢植の白い牡丹に見惚れゐる
咲き満てる染井吉野の白さかな
青空に染井吉野の白眩し
日曜のチューリップ園には父母も来る
チューリップ園には家族皆で来る
チューリップ園の水車は喫茶店
とりどりの色美しきチューリップ
大好きと駆け回る子チューリップ
チューリップ園には歓声こだまして
放ったらかしでなけれど葱坊主
種を取る積りなけれど葱坊主
プランターの葱にも花の咲いてをり
葱坊主だらけ日曜菜園は
葱坊主畑三枚埋め尽くし
蜜蜂のゐなくて人のする授粉
蜜蜂は仕事師花粉まみれかな
初物の筍なりしやはらかし
いただきし筍その日茹で上げる
筍は旬が命とさっと茹で
大楠を仰ぎ見てゐるみどりの日
植樹祭せし日懐かしみどりの日
県木の楊梅育てみどりの日
風船の行方を誰も知らざりし
風船を貰ふのっぽのピエロより
風船で気象観測せしと聞く
風船を追い掛ける子を追い掛ける
味噌入れるだけや私の浅蜊汁
この旨き浅蜊の採れし浜はどこ
舟でしか行くけぬ浜での浅蜊てふ
浅蜊しぐれ一つで出来る茶漬かな
鎌倉五山巡る山道濃山吹
虚子の墓参りをしても濃山吹
連綿と山吹ばかり続く道
けがれなき色でありけり白牡丹
懸命に生きて真っ赤や赤牡丹
遠目にも薄く紅差し白牡丹
紅差していよいよ美しき白牡丹
日当たりにありても凛と赤牡丹
門前にありし一株赤牡丹
田植機のおもちゃのごとし小さき田
チューリップ育てることが生きがいと
チューリップ咲かせ生家に戻り住む
石垣に犇き咲きて芝桜
犇きて咲く美しさ芝桜
山吹の桜ひとひら乗せて咲き
石楠花も咲かせ八十五歳とか
著莪の花咲ける崖下り河鹿聞く
河鹿鳴く声のだんだん近づきぬ
左から右から河鹿鳴きにけり
木琴を叩けるごとく河鹿鳴く
重唱のやうな河鹿の鳴きっぷり
河鹿鳴く次第に声を張り上げて
独唱の河鹿の声の乗って来る
いやといふほどに河鹿を聞き昼餉
甘酒の差し入れまでもいただきて
山宿の昼は旬の山菜尽くしかな
青空に鶯を聞く露天の湯
たっぷりと鶯を聞く朝の湯に
樟落葉二つ三つ四つ露天の湯
湯上りに残る桜を眺めゐる
鼠木戸より薫風と共に入る
木戸開けて薫風入れて金丸座
歌舞伎見る課外授業や子らの初夏
宙乗りの雀右衛門も見柏餅
空へ舞ふ天女鮮やか風光る
芝居はね初夏の眩しき俗界に
雛飾る人の踏み場も無きほどに
とりどりの雛や雅叙園らしく
雅叙園らしき雛の飾られて
早々と河津桜に目白来て
見るほどに河津桜は赤きかな
これはまあ雪の花見となりにけり
青空に紅美しき桜かな
蜂須賀の殿の愛でたる桜見る
蜂須賀の世より伝へし桜見る
戦災を耐えし蜂須賀桜見る
焼夷弾落ちても桜生き延びて
お花見のできる日本のありがたく
戦争の無き世を願ひ見る桜
一と月も早く満開なる桜
雛飾る部屋より眺む桜かな
武家屋敷には春の花生けられて
廊下には安達流なる寒椿
庭園の岩にはミモザ美しく
玄関に椿一輪活けられて
武家屋敷よりも蜂須賀桜見て
蜂須賀桜と木札にありし母樹大き
母樹なりし蜂須賀桜仰ぎ見る
投句箱あるを確かめ桜見る
観光船よりも蜂須賀桜見て
コーヒーをいただきながら桜見る
お花見の一句を投句箱に入れ
エチオピア大使も来られ見る桜
阿波踊しつつ花見に来る人も
一と月も早く花見のできる阿波
阿波藩の世より伝へし桜見る
種芋の貯蔵の穴の床下に
種芋の穴の昼なほ暗かりし
種芋は子芋ばかりでありにけり
植ゑ付けは種芋の芽を確かめて
残りたる種芋甘く旨かりし
水中に葦の角あり句碑のあり
水中句碑ありし水辺に葦の角
葦の角琵琶湖の波に見え隠れ
種袋そのまま挿して苗札に
苗札のカラー写真の美しく
苗札のカタカナばかりなりしかな
苗札の文字より写真見て回る
真っ直ぐの畦がぐちゃぐちゃ陽炎ひて
蜃気楼陽炎もまたぼんやりと
ふるさとの町すっぽりと陽炎ひて
弧を描き上り詰めたる揚雲雀
大地へと一目散に落つ雲雀
雲雀鳴く天下とったる如く鳴く
四方から続けざまなり揚雲雀
休耕の畑は即ち雲雀の野
電光石火落つる雲雀となりにけり
肥やす馬ゐないけれども苜蓿
防風摘む大鳴門橋そこに見て
防風の勝手に伸びてをりし浜
白砂に浜防風の白い花
浜防風つまめば芹の香りして
飲兵衛は刺身のつまに浜防風
卒業をしたとはるばる愛知より
卒業をしたとセーラー服で来る
今年また三万体の雛飾る
雛を見に三万人が来ると云ふ
婚活のイベントもあり雛祭
日替のイベントもあり雛祭
ライトアップまでは見られず雛祭
雛飾眺め人形浄瑠璃も
雛祭る恐竜化石出る町に
雛飾には外つ国の人形も
雛飾りせしは小学三年生
その中に泣きべそのをり仕丁雛
南米の調べも聞こえ雛祭
飾られし雛それぞれに物語
飾られてこその雛人形であり
ウクライナ国旗の描かれし雛も
雛祭記念の写真撮り合ひて
雛の顔時代時代でありにけり
植ゑし人思ひ出しつつ見る桜
花も葉も赤き蜂須賀桜かな
一と月も早く散りゆくこの桜
敷き詰めし上にひとひらまた落花
散り急ぐ花はなけれどまた一花
落つる花しばし眺めてをりにけり
遠目にもはくれんの白際立ちて
上向きに咲きはくれんの白い花
薔薇の芽を覆ひさうなる繁縷かな
清らかな水の岸辺に芹茂る
こんもりと芹の犇めくひとところ
城山の緑に紛れ著莪の花
遠目にも見ゆる川面の花明かり
川面にも桜並木の美しく
散り残る花を訪ねて来し人も
散る花をじっと見る人見ない人
敷き詰められし落花の美しき
敷き詰められし落花を踏んで行く
黄水仙咲いて明るき庭となり
ロンドンの城の庭ふと黄水仙
マーガレット咲かせデンタルクリニック
マーガレット大好きだった人をふと
ネモフィラにまぶしき春の光りかな
ネモフィラにひたちなか公園をふと
世の遠くゐることに慣れ蕨餅
堤防の芥子菜摘んで漬物に
春場所の新入幕の初優勝
春場所のあっぱれ幕尻初優勝
ふるさとの歌作りしと初便り
ふるさとの山河を歌ひ春を待つ
あっぱれな年の始めでありにけり
坪庭に三つ四つ五つ蕗の薹
水仙の四つ並んで咲きにけり
何たって生が一番寒卵
小豆島醤油一滴寒卵
卵かけ醤油を少し寒卵
炊き立ての御飯最高寒卵
黄身二つありてめでたし寒卵
放し飼いしたるを選び寒卵
ぷりぷりの黄身でありけり寒卵
やはらかき日差にまぶし猫柳
門前にせせらぎのあり猫柳
活けられてなほも艶やか猫柳
かはいいと皆に触られ猫柳
水音のかすかに聞こえ猫柳
猫柳触れれば仄と温かし
ぎんねずの控へ目が好き猫柳
青空へぽつりぽつりと梅咲きぬ
梅咲いて寺訪ふ人の増えて来し
青空へ咲き初む梅の白さかな
剪定をされたる梅の花大き
剪定のされし梅林勢あり
春菊はささっと入れてさっと煮る
好き嫌ひあれど菊菜は香りかな
金縷梅何でそんなに縮れ咲く
満作は枯葉大事と咲きにけり
まづ咲くと云ふ満作の咲き初めし
満作の咲きてもうじき一年生
満作の松の廊下のありし地に
満作の町見下ろして咲きにけり
コロナではないです春の風邪ですと
立春の一位当選めでたけり
春立つ日一位で町議会議員
春立つ日見事一位で初当選
春立つ日青年議員誕生す
春立つ日子の旧友が議員へと
新人が一位当選春立つ日
あっぱれや一位当選春立てり
雛段の雛を囲みて吊し雛
高々と雛段の雛飾られて
様々な願ひ込められ吊し雛
手作りの情のありけり吊し雛
鳴門かな詰め放題の新若布
新若布詰め放題と聞くからは
鳴門産牡蠣にも人の押し寄せて
新若布牡蠣と見る間に売れ尽くし
新若布詰め放題に長き列
若布牡蠣ともに完売昼までに
新若布入りのふるまひ汁も出て
新若布牡蠣で祭となる鳴門
ウィスキーボンボンバレンタインの日
孫からもチョコ来るバレンタインの日
義理チョコのバレンタインの日は遠く
その人は知らねどバレンタインの日
春一に船戻り来る戻り来る
春一の恐さを語る老漁師
黄花亜麻大事に育て句碑の春
黄花亜麻句碑を囲みて咲き競ふ
句碑囲み幸せ招く福寿草
日を浴びて開き始めし福寿草
忘れらる日干しの蛙鵙の贄
生殺与奪句碑の辺にあり鵙の贄
日の差せど菰に隠れて寒牡丹
隠れん坊してゐるやうな寒牡丹
句碑の辺に白梅紅梅濃紅梅
句碑の辺に今年も出でし蕗の薹
句碑の辺は土筆に薺犬ふぐり
紅梅は枝も芯まで赤かりし
万両の赤に見惚れて足止まる
紅白の万両句碑を守るかに
水温み目高の親子すいすいと
幕上がる春の選抜出場と
雨に濡れ椿の花に勢あり
句碑よりも少し離れて椿咲く
秩父かな雪の武甲の朝焼けは
朝焼けに輝く雪の武甲山
早春の武甲はなほも雪乗せて
春を呼ぶおきざり草のまぶしさよ
おきざり草春はそこまで来てをりぬ
うっすらと初冠雪の眉山かな
徳島の初雪夕べには晴れて
一年のあっといふ間や去年今年
年毎に速く過ぎゆき去年今年
戦争の無き世を願ひ年迎ふ
辰年に願ひを託し年迎ふ
手作りの小さき門松並ぶ市
小さくとも門松らしく凛として
寒風の仕上げてくれし吊し柿
やはらかく甘く仕上がり吊し柿
正月の道後温泉賑はひて
初売の道後の町の華やかさ
初売の街ぶつからぬやう歩く
初旅は伊予の名所を駆け足で
初旅は内子座にまで立ち寄りて
西伊予の初旅魚尽くしかな
好きなだけ蜜柑どうぞとあるホテル
冬晴の宇和島駅の明るさよ
冬晴の宇和島駅の椰子仰ぐ
松山へ土佐へ行こうか乗初めは
宇和島の駅の綺麗な松飾
正月の四万十川のゆったりと
水澄める四万十川の青さかな
冬日差す足摺岬灯台に
正月の光真白き灯台に
初旅の遠く足摺岬まで
新年を足摺岬より始む
初旅は丸い水平線も見て
初旅ははるか黒潮見ゆ岬
野路菊のへばりつくかに咲く岬
野路菊も見て寒椿咲く岬
冬晴の太平洋の明るさよ
正月の太平洋の青さかな
寒晴にジョン万の像高き岬
初春や土佐は偉人の多き国
門松の立てる鳴門の菓子屋へと
買初めのひっきりなしに来る老舗
歳の数なるは遠き日雑煮餅
塗碗を出していただく雑煮かな
雑煮餅一つで足りる歳となり
子供らの食べっぷりよき雑煮餅
子ら去にて四日の雑煮ゆつくりと
大正の芝居小屋にも松飾り
産直の市の門松蜜柑付け
餅花の柳の枝のよく撓る
料亭の表玄関餅の花
撓るほど花餅つけて客迎ふ
繭玉のふはりふはりと吊されて
繭玉の一つが回ってをりにけり
繭玉の捩れ戻して吊しけり
餅花の咲ける如くに飾られて
女子会と云ふ女礼者の集ひかな
皸の昭和も遠くなりにけり
普段着の女礼者でありにけり
スーパーで女礼者と鉢合ひぬ
霜焼は見れど皸見ぬ令和
皸の子を見ぬ令和の小学校
皸の血が包帯に滲み出て
寒椿咲き満つ端にある岬
寒椿くぐり足摺岬へと
寒椿へばりつくかに咲く岬
寒椿野路菊競ひ咲く岬
天狗の鼻なる岬にも寒椿
橙の転がってゐるどんど跡
爆竹の音凄まじく炎立つ
石庭の箒目にある淑気かな
箒目に踏むをためらふ淑気かな
寒鯉の底にちっとも動かざる
阿呆息災と云ふ長老も初句会
初句会和服のありて花やかに
門松の竹に瑞気のほとばしる
小さくとも正月飾凛として
手水鉢にも正月の飾りかな
浴びるほど日差を集め実万両
枯山水紅一点の実万両
寒晴の枯山水の明るさよ
色とりどりなるもめでたし繭の花
繭花を見れば触れてもみたくなり
美しき花も飾られ初句会
初めてといふ人も来て初句会
初句会全ての料理平らげて
健啖を確かめ合ひて初句会
喜寿傘寿米寿白寿も初句会
新春を祝ひて駅に蘭の花
駅頭に春を先駆け蘭の花
大寒波能登の地震の被災地に
寒波来る命からがら逃げし身に
何もかも失ひし身に寒波来る