2016年

2016年12月25日

 

 今年もあと6日となりました。一年の過ぎゆく速さを感じます。今年は「トランプ現象」と「英国のEU離脱」に代表される激動の一年でした。

 

 米国の代表選挙ではほとんどのメディアがドナルド・トランプ氏の勝利を予想できませんでした。英国のEU離脱の賛否を問う国民投票も直前まで、残留派の勝利が大方の予想でした。まさかの結果に離脱派をリードした政治家たちですら信じられない様子でした。

 

 マスコミの予想がともに大きく外れる結果となったのですが、どうしてなのでしょうか。ゆっくりと静かに冷静に考えてみることも大切ではないでしょうか。

 

 米国には米国の、英国には英国の理由があるとは思いますが、マスコミが国民の底流にある意識の大きな変動を正確にキャッチできていなかったことにあるのではないか、と私は思います。

 

 米国ではいわゆる「隠れトランプ」を見抜けなかったとか、所得が伸びない中間層の不満に既成の政治家が耳を傾けなかったからだと指摘されています。

 

 英国ではEUというグローバル化によって得られた富が国内の瘦せ細る中間層に還元できなかったことが原因の一つに挙げられています。

 

 米国、英国に限らず多くの先進国でも、グローバル化の恩恵を感じられない多数の国民がいます。このままいけば「自分たちのことは自分たちで決めたい」という傾向がますます強くなり、保護主義的な経済がまかり通る時代になるのではと危惧されます。

 

 ヒト・モノ・カネの国際的な相互依存が深まり、モノとインターネットが融合する情報化時代に突入している今日の世界はもはやグローバル化を巻き戻すことのできない世界になっていると指摘されています。

 

 それにもかかわらず、米国では国益第一主義が幅を利かせ、英国では右派ポピュリズムが席巻し始めています。こうした時代であるからこそ民意の熱狂に掉ささないメデァの矜持が求められると私は思います。

 

 明年1月20日には米国でトランプ政権が発足します。来年も米国の行方にはひとときも目が離せません。また欧州では明春のオランダ総選挙とフランス大統領選挙、そして秋のドイツ総選挙と重要な政治日程が続きます。

 

 2016年は戦後の国際秩序に地殻変動を起こした大波乱の年でしたが、2017年はさらに大波乱の一年となるのでしょうか。心配でなりません。平穏の日々となることを祈るばかりです。

2016年11月26日

 

 日本伝統俳句協会四国支部俳句大会が11月23日に松山市で開催されました。私も徳島の俳句結社「祖谷」の皆さんとともに参加しました。

 

 「祖谷」からの出席者は岩田公次主宰を始め16人ですが、前日の22日には秋の一泊吟行もしました。

 

 吟行地は瀬戸内海の大三島です。「しまなみ海道」を渡って行くのですが、紅葉の山々を眺めながらの貸し切りバスの旅は楽しいものでした。

 

 大三島では樹齢2600年という大楠が茂る大山祇神社に参りました。木の実が絶え間なく降り、大きな枝一杯に黒い実が鈴生りの楠を眺めながら境内を散策しました。

 

 「しまなみ海道」はサイクリングできることでも知られていますが、大三島にも貸自転車があり、家族連れの観光客がサイクリングしていました。

 

 素晴らしい小春日和となり、私たちは回り道をして虚子の誕生の土地でもある松山市の西の下にも立ち寄りました。

 

 この地は「道の辺に阿波の遍路の墓あはれ」の句が生まれた場所としても知られていますが「遠山に日の当たりたる枯野かな」の句を詠んだのも、この辺からではないかと言われています。

 

 西の下には虚子の像と句碑が立てられ、昭和天皇が御手蒔されたと伝えられる「虚子の松」も綺麗に松手入れされていました。その後、道後温泉に一泊した私たちは吟行句会もして小春の一日を存分に楽しみました。

 

 翌日は道後公園で吟行の後、大会会場へ。大会会場からは松山城がよく見えました。大会の句会でも「祖谷」のみなさんは素晴らしい活躍をされました。

 

 この一泊吟行で私はこんな句ができました。

 

日を返す紅葉の赤の眩しさよ

緑より赤へ紅葉の色の数

瀬戸の島日当たりどこも蜜柑山

小春かな貸自転車で島巡る

小春日となりて足取り軽き旅

旅に出て小春の一と日堪能す

仰ぎ見る頬に額に木の実降る

木の実降る音にリズムのありにけり

立錐の余地も残さず木の実降る

絶え間なくぽつんぽつりと木の実降る

木の実降る鳥居くぐりて総門へ

木の実踏み樟の実茂る本宮へ

小春日の二千六百歳の楠

旅小春西の下の句碑訪ねもし

西の下に回り道もし旅小春

西の下の句碑高々と西日受く

西の下の西日の中の虚子の像

御手蒔の虚子の松かな手入され

大綿の不連続線描き飛ぶ

黄落の庭に伊佐庭翁しのぶ

黄落といふは天より降ってくる

照紅葉残る緑のあればなほ

小春日の後も小春日続きくれ 

2016年10月23日

 

 徳島県立徳島工業高校(現在は科学技術高校)機械科の同窓生15人で10月19日から20日にかけ近江八幡市に旅行してきました。

 

 私たち徳島勢4人は松茂のバスターミナルから高速バスで淡路島を通過して神戸三宮で下車、JRの快速電車で近江八幡駅に参りました。

 

 近江八幡駅では東京はじめ各地から来た参加者と合流し、地元に住んでいる田村大三郎さんの案内でまず水郷巡りをしました。

 

 その後、宿舎の休暇村近江八幡で懇親会を行いました。懇親会はお互いの近況を語り合い夜の更けるのも忘れて旧交を温めました。

 

 翌日は安土城天守の最上部を原寸大に復元した模型の展示された信長の館を見学した後、安土城の城跡に参りました。

 

 その後、近江八幡市の中心部に帰った私たちは秀次の居城のあった八幡山にロープウエイで上がり、琵琶湖や近江八幡市を眺望しました。

 

 ロープウエイを降りた後は、八幡堀の岸辺を散策し、近江商人を生んだ新町通りを散策しました。格子戸や白壁の古い町並は「重要伝統的建造物群保存地区」に選定されており、見ごたえのあるものでした。

 

 今回の旅行でこんな句ができました。

 

人影の見当たらぬ島秋は行く

行く秋や明石海峡真っ平

田仕舞の煙たなびき秋は行く

上着持ち行けとの予報秋は行く

水郷を巡る近江の秋晴れに

水郷は葦生い茂る迷路かな

水郷を巡る葦見て芒見て

水郷の岸辺に群れて藤袴

安土城城跡は秋の野遊び場

安土城ありしは昔蕎麦の花

悲運なる秀次の城尾花散る

城跡は八幡山頂薄紅葉

水澄める八幡堀の舟巡り

溝蕎麦の白美しき水辺かな

蔵続く八幡堀や柳散る

朝顔や近江商人生みし町

菊展示して御城下の案内所

郁子実る近江八幡駅頭に

2016年9月25日

 

 浜松市の三ヶ日町水鳥の会代表の井村経郷さんが「三ヶ日町水鳥の会俳句歳時記」を刊行され、その祝賀会が9月18日に三ヶ日町の浜名湖レークサイドプラザでありました。

 

 井村さんはご夫妻で床屋さんをしていますが、地元の俳人である百合山羽公さんを師と仰ぎ俳句の道に精進されてきました。

 

 俳句のためならどんなことにも骨を惜しまない方で、このたびも私財を投げ打って歳時記を編纂し刊行されました。

 

 その歳時記を私もいただいたのですが自ら撮影された季題の写真も素晴らしく、まるで百科事典のような大判の素晴らしい歳時記となっています。

 

 祝賀会には大勢のファンが集まっていました。私も水鳥の誌友を代表して祝辞を述べ、井村さんご家族の労をねぎらって懇談させていただきました。

 

 奥浜名湖にある三ヶ日町の宝珠寺や近辺の湖岸を散策する吟行会にも参加し、浜名湖レークサイドプラザで行われた句会にも出席させていただきました。

 

 その後、東京でルーマニアやギリシャの方々を招いた知人のパーティに出席し、旧交を温めた後、伊豆の伊東温泉に足を伸ばしました。

 

 伊東温泉では伊東を代表する湯宿として栄華の歴史を刻んできた東海館を見学し、伊東温泉小涌園でゆっくりと一週間の旅の疲れをいやしてきました。

 

 今回の旅行でこんな句ができました。

 

歳時記の出版祝賀爽やかに

爽やかや歳時記上梓せし床屋

床屋さん歳時記上梓爽やかに

ご家族で祝賀の一日新酒汲む

山ほどの青みかん持ち祝ぎの間に

摘果せし青みかんとてかく甘き

青みかん三ヶ日なればかく甘く

歳時記を出せし床屋と青みかん

歳時記をめくれる妻と青みかん

歳時記を出版の師と新酒汲む

浜名湖に島一つあり鱸釣る

剥き出しで咲くこともあり葛の花

犇めける白粉花の香りかな

咲き競ふ溝蕎麦の背の高さかな

虫時雨聴いてゆかれと僧の云ふ

空と水青き浜名湖鯊を釣る

松並木多き浜名湖鯊を釣る

台風の夜の東京早や闇夜

台風の後も東京雲残る

寛一とお宮の像に秋黴雨

マリーナにヨットの並ぶ道の駅

鉄幹と晶子の湯宿柳散る

柳散る東海館の栄華ふと

大甕に活けて花野に思はるる

吾亦紅どんと活けある湯宿かな

路地多き湯の町伊東秋簾

朝顔や昭和通りと云ふべかり

朝顔や昭和のままの出湯の町

露地に咲く秋海棠の丈高く

玄関に秋海棠の花明かり

垣根より糸瓜の垂るる道を行く

街道へ糸瓜たらしてゐる屋敷

竜胆を活けて土蔵の蕎麦屋かな

こぼれたる萩にこぼれてこぼれ萩 

2016年9月14日

 

 日本伝統俳句協会の全国俳句大会が9月11日広島県福山市で行われ、私も祖谷の誌友の皆さんとともに参加しました。

 

 前日の10日には「しまなみ海道」で生口島にわたり、耕三寺や平山郁夫美術館を中心に吟行会が行われました。

 

 私は全国俳句大会の当日も福山駅前にある福山城で吟行しました。月見櫓のすぐ側で観月会の準備が行われていました。

 

 全国俳句大会の後、徳島から参加した祖谷の誌友の皆さんと倉敷に立ち寄って美観地区の夜景を楽しみました。

 

 その翌日の12日は、伯備線で高梁市まで足の延ばし、天空の城として知られる備中松山城に登りました。また隣の山の展望台から眺望もしました。

 

 高梁市内では武家屋敷を見学したり、頼久寺にある小堀遠州作の石庭を鑑賞しました。背景の山を借景にした石庭は綺麗に整備されていて旅の疲れを癒してくれました。

 

 今回の旅行でこんな句ができました。

 

睡蓮の池を離れず赤蜻蛉

松手入済みたる空の広さかな

なほも咲く百日紅かな鰯雲

似て非なる日暮の門法師蝉

けばけばしき寺を見て来て月を観る

偽物の堂宇ばかりや蚯蚓鳴く

御城下で観月会の準備かな

月を観る月見櫓のすぐ側で

掘割の風の涼しき蔵の町

掘割を涼しき風の渡り来る

咲き初めし萩の朱色のほんのりと

宵闇に萩の紅白知れぬまま

灯の点り始めし町の暮れ早し

打ち上げはビーフステーキ秋の宵

天空の城への道の長さかな

天空の城へ登れば片時雨

天空の天守涼しき風通る

上り汗下り涼風山の城

霧なくも天空の城ぼんやりを

武家屋敷庭の芙蓉のこんもりと

開け放ち涼風通る武家屋敷

秋日濃し小堀遠州なる庭に

石庭を白き秋風渡り来る

石庭の縞くっきりと秋日濃し

2016年9月1日

 

 静岡大学工学部の同窓会である浜松工業会の田中豊岡山支部長ご夫妻とともに私は四国支部長として夫婦で台湾を訪問してきました。台湾では葉哲正台湾支部長ご夫妻のご接待をいただき、有意義な日々を過ごすことができました。

 

 丁度、台湾訪問中であった猪飼秀隆北九州支部長とそのご家族の方々も葉支部長ご夫妻が催された懇親会に参加され、和やかに旧交を温めることもできました。

 

 この懇親会には葉さんのご紹介で台北のロータリークラブの沈桂美前社長と荘麗芳現社長もご出席になり、大いに対話の花が咲き実り多い国際交流の場ともなりました。

 

 今回の台湾訪問は田中さんのご手配で台北駅前にあるシーザーパークホテルに8月25日から4連泊する小旅行でしたが、短時間のうちに多くの観光地を訪問することもでき、私たちにとっては大変に有意義な台湾初訪問になりました。

 

 台北市では蒋介石総統の業績を展示した壮大な中正紀念堂を見学するとともに台湾のために殉職した烈士33万人を祀る忠烈祠で衛兵の交代式を見ることもできました。

 

 また国共内戦が激化した折、中華民国政府が北京の故宮博物院から第一級の所蔵品を精選して台湾に運び出したという696000個の収蔵品を持つ故宮博物院も見学できました。

 

 中国の古代の皇帝が収集した美術品の数々は中国文明の神髄がここにあると言われるだけに見ごたえのあるものばかりでした。

 

 新北市では夜の十份で天燈上げを体験してきました。天燈上げは「元宵節」(日本の小正月)を祝う行事でしたが今は一年中行われているようです。筆で願い事を書いた天燈を空に上げるのですが、夜空を染めて上っていく大きな天燈の赤い灯には情緒がありました。

 

 「千と千尋の神隠し」の舞台である湯屋のモデルとなった阿妹茶樓のある九份の旧市街にも行ってきました。この阿妹茶樓は今も観光客に人気を集めており、私たちも雨宿りしながら名物のお茶を味わってきました。

 

 台湾の北端の海岸にある野柳地層公園にもロータリークラブの皆さんに連れていってもらいました。海岸が伸びている方向と垂直状態にある地層が長年にわたる海水の浸食や風化によって奇石、奇岩が林立する風景を作り出しました。

 

 今では世界奇観の一つに数えられており、特に人気があるのは女王の頭をした奇岩です。ここにはカメラを持った観光客が長い列を作っていました。私たちもここで記念撮影をして台湾訪問の思い出を作りました。

 

 今回の旅行でこんな句ができました。

 

炎天下衛兵の列乱れなく

衛兵は流れる汗もぬぐえぬ身

新涼の白美しき故宮かな

秘宝見て故宮の庭の新涼に

灯籠の如く天燈上げる夜

天燈を上げて灯籠流しふと

十份で天燈上げる良夜かな

台北の夜長静かに始まりぬ

秋めける台北駅の夜景かな

九份に昭和の日本偲ぶ秋

九份に八尾の風の盆をふと

九份はレトロな町や秋簾

霧晴れて眼下に海の見えて来し

展望の開け奇観の爽やかに

爽やかや天は巧みな芸術家

飛機の着く日本の秋の心地よく

2016年8月9日

 

 俳誌『祖谷』の句友とともに水の都として知られる徳島市で人気を呼んでいる『ひょうたん島クルーズ』を楽しんできました。

 

 『ひょうたん島クルーズ』では新町川と助任川に囲まれたひょうたん型の中洲『ひょうたん島』の周囲6キロメートルを周遊船で一周します。皇居一周より少し長い距離だそうです。

 

 両国橋北詰の乗船場から出航し、途中22本の橋や鉄橋をくぐります。美しく整備された親水公園や城山、藩政時代の松並木、県庁前のヨットハーバーなどを眺めながら、約30分の船旅です。

 

 周遊船を運行してくださるのは『NPO法人新町川を守る会』会長の中村英雄さん。中村さんは東新町の靴屋さんのご主人ですが、平成2年に新町川の浄化と新町川を中心とした街づくりを目的に有志10人でこの会を発足させて以来、新町川の清掃作業に率先して取り組まれるとともに自ら船長として周遊船を運行してくださっているのです。

 

 この日も中村さんはお気に入りの船長の帽子をかぶって名口調でガイドしながら周遊船を運行してくださいました。

 

 両国橋から新町橋を遡ると右岸には親水公園、左岸には徳島マルシェの洒落た白いテントの屋台や大きな銀行のビルなどが見えてきました。三ツ合橋からは川の名も助任川に。右岸に徳島城公園、左岸に親水公園。正面の城山に天守閣がないのが少し寂しく感じられました。

 

 助任橋からさらに助任川を下って行きますと右岸に藩政時代に作られた松並木が見えてきました。人柱伝説のある福島橋を過ぎると再び新町川に出ました。

 

 ここまで来ると河口も近く、再び新町川を遡りますと左岸に県庁、両岸にヨットハーバー。正面には富士のように綺麗な円錐型をした眉山が見えました。いつも見る眉山とは全く違った眉山でした。この後、周遊船は元の乗船場へ。30分の船遊はあっという間に終りました。

 

 このクルージングで私にはこんな句ができました。

 

徳島は橋多き街船遊

船遊皇居一周せし距離と

船動き出したる風の涼しさよ

汗臭き救命胴衣頭より

心地よき風に歓声船遊

川筋に洒落た市立ちかき氷

船長は靴屋の亭主船遊

江戸の世の松並木も見船遊

船遊富士のやうなる眉山も見

県庁の前はヨットのハーバーに

船遊水の都の真ん中で 

2016年7月4日

 

 静岡大学工学部の同窓会である浜松工業会の全国支部長会が浜松市の母校でありました。私は四国支部長を務めていますので今年も2泊3日で浜松に行ってきました。

 

 全国支部長会は7月2日にありました。ここでは様々な議案が報告され、大学の取り組んでいる課題や同窓会が取り組んでいくべき課題などが議論されました。

 

 北は北海道支部から南は台湾支部まで全国の支部長からは取り組んでいる課題や、本部に要望したい課題などが報告されました。私も今年11月に行う予定の四国支部総会の準備状況などを報告しました。

 

 支部長会の後の懇親会では会長や理事長をはじめ工学部長など大学の関係者も囲んで全国の支部長が大いに意見を交換して友好を深めました。

 

 全国支部長会の前日には私が勤務したヤマハの先輩や同僚と鱧料理を囲んで懇親会を行いました。先輩は80歳を越えられましたが、お元気そのものでした。同僚の皆さんも元気に活躍されている様子で安心しました。

 

 また全国支部長会の翌日はちょうど日曜日でしたのでヤマハの俳句クラブの皆さんと浜北万葉の森公園に吟行して浜北文化センターでの句会に参加しました。若い人たちも参加してくださり、爽やかな句会となりました。

 

 今回の旅行でこんな句ができました。

 

梅雨晴れて心浮き立つ旅路かな

長雨に洗ひ出されし緑かな

梅雨晴れの淡路は緑美しき

夏霧に曇る海峡ゆくフェリー

海峡と言ふは夏霧湧くところ

むくげ咲く神戸は異人多き街

梅雨雲を抜けて飛び立つ飛機光る

佐和山の城址夏草生ひ茂る

鱧尽くし平らげてなほ回顧談

八十を越へて健啖鱧尽くし

年寄りは淡白がよし鱧料理

朝顔の垣根茶店の店頭に

鉢植えの朝顔並べある茶房

朝顔や昨日は昔むかしなる

朝顔や昨日は昨日今日は今日

朝顔のさやけき風に翻る

朝顔の朝一番の鮮やかさ

瀑布山なる山寺の清水かな

瀑布山なる山寺の滝涸れず

万葉の恋の歌碑見て萩を見る

あさがほの名ある朝のむくげかな

八重に咲く赤いむくげの艶やかさ

あさがほと詠まれし桔梗見る朝

山寺の小さな滝に芭蕉句碑

万葉の花ある森の緑濃し

炎天を歩いてゆきし若さかな

炎天を歩いて来られたる若さ

夏霧や意外に狭き関ケ原

夏霧を抜けて新幹線の行く

夏霧の雫真横に走る窓

日没の後も青空残る夏

2016年6月2日

 

 高校のミニミニ同窓会で阿南市の伊島に行ってきました。この時季には伊島の笹百合が見られるとのことで楽しみに参加しました。

 

 出席者は岡山県から二人、兵庫県から一人、徳島県からは、私を含めて五人の総勢八人でした。伊島では漁業組合長ご夫妻と民宿のご夫妻に大変お世話になりました。

 

 伊島に民宿は二つありますが、今回宿泊したのはしばらく休業していた民宿です。徳島市で働いていた息子さん夫婦が島に帰って、お母さんの民宿を受け継がれたとのことでした。

 

 伊島への連絡船が着くと組合長自ら出迎えてくれました。夕食には採れたばかりの大きな岩牡蠣をぜひ食べてほしいと差し入れもしてくれました。

 

 夕食の用意は民宿のご夫妻と組合長のご夫妻がしてくれ、食卓には伊勢海老や鮑や栄螺や常節、海老、焼魚、牛肉の叩きをはじめ焼鯖の鮨や巻鮨などが大皿に並ぶ見事な皿鉢料理が三つも並んでいました。

 

 それに加えて現地でなければ食べられない生きのよい鯖の刺身もありました。岩牡蠣の刺身も大変おいしかったです。水雲の舌触りも最高でした。

 

 今年はこの島の出身でいつも同窓会をこの島で開いてくれていた同窓生の三回忌でもあり、出席者全員で心からの冥福を祈りながら夜の更けるまで思い出話に花を咲かせました。

 

 翌日は組合長自らの案内で三時間にわたって笹百合を探して山歩きをしました。急な崖も多く、上り下りも多くて私には大変厳しい登山になりましたが、落伍することなく完歩することができました。

 

 伊島の笹百合はこの島の固有種であり、香りが強いことで知られています。昔は島中に群生していたそうですが次第に少なくなり、今は大切な観光資源として大事に保護されているようです。

 

 そんな努力のお蔭で私たちはたくさんの笹百合を見ることができました。群生する笹百合をいろんなところで発見することもできました。

 

 今回の旅行でこんな句ができました。

 

原色の花咲く島の夏来る

サボテンの花咲く島の炎暑かな

紫陽花のこんもりと咲く孤島かな

年毎に人減る孤島額の花

笹百合を見んとて連絡船に乗る

登山靴はいて笹百合探訪に

崖に出て見れば笹百合目前に

固有種の伊島笹百合なる香り

笹百合を訪ね杣道一万歩

原生の森に笹百合ひっそりと

日当たりの笹百合の丈短かり

笹百合の木陰に咲くは丈長く

笹百合の群生見つけたる伊島

群生の笹百合四方から眺め

笹百合に会えたと言ひて船に乗る

2016年5月6日

 

 今年もゴールデンウイークに長男、次男、三男の家族が我が家に勢ぞろいして、連日15人でわいわいがやがやとにぎやかに過ごしました。

 

 初日には板野町の「あすたむらんど徳島」で遊んだあと、イタリアから来た料理人が太鼓判を押したばかりのピザで有名な徳島のレストランを子供たちが予約してくれ、イタリア料理のフルコースを御馳走になりました。

 

 15人の中に5月生まれが私を含めて3人いましたので誕生祝もしてくれました。孫たちが描いた私と家内の絵をはじめたくさんの記念品もいただきました。

 

 二日目は阿波市土成町で私の友人が毎年行うミニSL祭を楽しんだ後、次男宅で焼肉パーティをしました。テントを張って炭火で行う本格的なガーデンパーティです。子供や嫁達はもちろん孫達も大喜びでした。

 

 三日目はみんなで中華料理を楽しんだ後、私たちはゆっくりさせていただいたのですが、子供や嫁や孫たちはカラオケで大いに盛り上がったようです。

 

 四日目は鳴門市のリゾートホテルのレストランでフルコースのランチをいただきました。レストランでは 私たちの会食のために一面が全てガラス張りのパーティスペースを用意してくれました。

 

 このリゾートホテルは鳴門海峡の少し手前にあるのですが、地中海の旅籠屋をイメージした景観やお洒落なイタリア料理が人気のホテルです。

 

 私たちは2年ほど前から利用させていただいているのですが、鳴門市で地中海の雰囲気を味わいながら家族で過ごせるのは嬉しいものです。

 

 五日目は長男家族を見送った後、三男と三男の嫁が作ってくれたカレーと春雨サラダで次男、三男の家族とともにゆっくりと夕食を楽しみました。

 

 六日目は三男家族を見送った後、次男の嫁が作ってくれた「おでん」で家内とともにお互いの労をねぎらい合いました。

 

 三人の子供、三人の嫁、七人の孫が今年も全員揃って我が家に来てくれました。忙しかったけれども楽しい日々でした。みんなありがとう。また夏休みに会いましょう。お元気でね。 

2016年4月11日

 

 安倍晋三総理から「桜を見る会」の招待状が届きました。この機会にと夫婦で上京して一週間ばかりの国内旅行を楽しんできました。

 

 初日には千鳥ヶ淵の桜を鑑賞しました。北の丸公園から靖国神社までのお堀際の道を歩いたのですが、どこからも素晴らしい満開の桜が見えました。お堀にはたくさんのボートが浮かび、船上からお花見を楽しむ人たちもいました。

 

 二日目はあきる野市の山間部で山桜を鑑賞しました。菜の花や躑躅の大樹も咲き競いのどかな風景が広がっていました。手作りの蒟蒻や東京軍鶏で有名な蕎麦屋で名物の蕎麦をいただきました。

 

 その後、都立小金井公園で行われた小金井桜まつりにも参りました。日曜日でもあり、公園は家族連れで一杯でした。獅子舞などの郷土芸能も披露され夕方までお花見を楽しみました。

 

 三日目は明治記念館でルーマニアでお世話になった友人とランチをした後、銀座を散策しました。新しくできたばかりの東急プラザにも参りました。

 

 四日目は八王子の富士美術館で刀剣展を鑑賞した後、創価大学の構内を見学しました。大学にはたくさんの桜が植えられていてどの桜も満開でした。周桜や文学の池にも参りました。石楠花や連翹の花も咲き競っていました。

 

 五日目と六日目は小田原と箱根と湯河原、熱海に参りました。箱根のホテルは源泉かけ流しの素晴らしい温泉でした。芦ノ湖スカイラインの三国峠からは富士の全貌が見える幸運にも恵まれました。

 

 七日目は鎌倉の寿福寺で行われた虚子忌に参列。投句した後、鶴岡八幡宮の牡丹園で開かれていた牡丹祭りを鑑賞しました。

 

 八日目は新宿御苑で開かれた安倍総理主催の「桜を見る会」に出席しました。新宿御苑には65種類の桜1100本が植えられていますが、この日は散り急ぐ染井吉野と咲き始めた八重桜の両方を鑑賞することができました。

 

 この旅でこんな句ができました。

 

水面にも千鳥ヶ淵の桜かな

花仰ぐボートの二人寄り添ひて

山寺へ菜の花明かりの道を行く

山門に躑躅の大樹ある古刹

お花見や平和な日本ありがたく

縁日のやうなお花見獅子舞も

曲線の力学垂れ桜かな

春灯の銀座まばゆき新店舗

石楠花と連翹競ひ咲ける池

鶯や富士の全貌見える丘

虚子の忌へ伊予と道後の旅終へて

鶯をたっぷりと聴き門くぐる

けふ虚子忌あすは総理と桜見る

一夜さに散りし牡丹のはかなさよ

ぼうたんの一株毎の和傘かな

散り敷ける染井吉野の白さかな

招かるる桜吹雪のお花見に

2016年3月6日

 

 私は2月8日に「徳島赤十字病院」に緊急入院しました。この日午前3時ころから下痢と嘔吐が激しく続き夕方6時ころ激しい腹痛に襲われたのです。

 

 七転八倒するほどの腹痛でした。藍住町内の当番医に駆け付けたのですが、この病院では手が付けられないと救急車で「徳島赤十字病院」に運ばれたのです。

 

 生まれて初めての経験でしたが、若い救急救命士の的確で素早い行動には感動しました。救急車に乗り込む前に点滴を開始し、乗り込むと同時に「徳島赤十字病院」の医師と連絡を取って適切な処置を次々に行ってくれたのです。

 

 「徳島赤十字病院」では担当医はじめスタッフの皆様ががすでに待ち構えていてくださり、すぐに応急処置を取ってくれました。検査の結果、ロタウイルによる急性腸炎であることが判明しました。

 

 あまりにもひどい脱水状態で生命に危険があることからICU(集中治療室)で4日間を過ごすことになりました。

 

 これも人生初めての経験でしたが一人の患者に医師が5人、看護師さんが6人、交代しながら24時間付きっ切りで治療してくださるのです。まことにありがたいことでした。

 

 ICUを出て一般病室で3日間を過ごしたあと、一週間ぶりに「徳島赤十字病院」を退院することができました。この一週間で体重が5キロ減っていました。

 

 現在はロタウイルスからは全く解放されたのですが、4日ほど前から今度は帯状疱疹の痛みと戦う毎日となりました。

 

 帯状疱疹は子供の頃にかかった水疱瘡のウイルスが体内に潜在していて、免疫力が低下した時などに一挙に出て来るようです。

 

 私の場合はロタウイルス腸炎で入院して体力と免疫力が低下していたために帯状疱疹になったと考えられます。

 

 右脇腹一面に出て、激しい痛みがあります。診察するなり帯状疱疹と即断した「きたじま田岡病院」の医師はいい薬ができましたから一週間服用してみてください。必ず良くなりますよと言ってくださいました。

 

 それにしましても加齢現象でしょうか。次から次に襲ってくる病気と闘う毎日です。しっかり休養して体力と免疫力を付けなければと思っています。 

2016年2月7日

 

 私事で誠に恐縮ですが、今年も二つのカレンダーに私の句が掲載されました。一つは日本伝統俳句協会のカレンダーです。

 

 この協会は高浜虚子の孫である稲畑汀子さんや曽孫である稲畑廣太郎さんが作ったもので正岡子規以来の伝統俳句の本流を継承しようと運動している公益社団法人です。

 

 この協会のカレンダーに4月の俳句として「大凧の尾の荒縄でありにけり」の私の句が掲載されました。

 

 この句は鳴門市で「わんわん凧」を揚げる大凧揚げ大会を見たときにできたものです。鳴門の「わんわん凧」は直径が20メートル、重さが5トンもある大凧です。その長い尾が荒縄であることには本当にびっくりしました。

 

 この大凧を印半纏を着た大勢の男たちが息を合わせて揚げるのです。季節風に乗ってぐんぐん揚がっていく迫力には感動しました。

 

 もう一つのカレンダーは第19回ふるさと情報全国俳句大会の「ふるさと情報カレンダー」です。このカレンダーには私の「春物の並ぶ売場の明るさよ」の句が掲載されました。

 

 この句は句会に行くときに立ち寄った徳島市のそごうデパートでできたものです。冬物の並んでいだ売り場が季節を先取りしてすっかり春物に替わっているのです。

 

 広い売場全体がなんと明るくなっていることでしょう。そんな売場を見た感動を見たまま、ありのままに詠んだものです。

 

 私は見たまま、ありのままに詠むことが好きです。けれども単なる報告になってしまっては俳句にならないのです。そこにいつも苦心しています。

 

 先輩からは実感の深い句をとよく指導されます。今年もそんなことを心掛けながら俳句を楽しんでまいりたいと思っています。

2016年1月11日

 

 新年あけましておめでとうございます。ホトトギスの伝統俳句を継承する「祖谷」の初句会が岩田公次主宰を囲んで徳島市のグランドホテル偕楽園でありました。

 

 このホテルは眉山の山裾にあり、眉山からの湧水をたたえた池にはたくさんの鯉が泳いでいました。滝もあり、風情のある老舗ホテルでした。

 

 私たちは句会の前にすぐ隣にある瑞巌寺にお寄りして吟行しました。この名刹は蜂須賀侯が特にお気に入りだったそうでここの広い庭園にも眉山の湧水をたたえた池があり、鯉が放たれていました。

 

 万両や千両が庭のいたるところに咲き競っていました。南天も真っ赤な実をつけて万両や千両と赤を競い合っているようにも見えました。

 

 日溜りには寒牡丹が植えられていて赤い芽を出していました。庭園のいたるところに猪の跡が散見され、この冬牡丹も網で囲ってありました。

 

 この日、私にはこんな句ができました。

 

石庭の中に真っ赤な実南天

庭中に南天の実の爆ぜる寺

日溜りは寒牡丹にと空けておく

眉山には湧き水多し実南天

万両よ千両よ南天の実よ

藩侯の世よりの庭の実南天

寒鯉の籠り棲む水清からず

広き池なれど寒鯉片隅に

寒鯉に運動不足ないのかな

寒鯉の確かに呼吸してをりぬ

流れなき脇に寒鯉固まりて

山裾は水湧くところ寒の鯉

寒鯉や眉山は水の多き山

お元気なお顔の揃ひ初句会