2024年4月17日

 

 私は4月14日、日本伝統俳句協会四国支部徳島県部会研修会を兼ねて行われた4月の『祖谷』の吟行句会で徳島県上勝町の「月ヶ谷温泉」を訪ねてきました。

 

 徳島駅まで迎えに来てくれた「月ヶ谷温泉」のバスで正木ダム周辺の残花を見た後、85歳の方が生家でチューリプをはじめたくさんの花を栽培されている庭園を見学させていただきました。

 

 「月ヶ谷温泉」では牡丹桜が咲いておりこれを見た後、温泉の下を流れる勝浦川の河原に降りて河鹿を聞きました。しばらくすると河鹿が鳴き出し、たっぷりと聞くことがました。

 

 温泉では新鮮な山菜が盛られた美味しい昼食をいただいた後、岩田公次主宰を中心に吟行句会が開催されました。

 

 また、4月16日には5年ぶりに開催された香川県琴平町の「第37回四国こんぴら歌舞伎大芝居」を岡山県の友人夫妻とともに鑑賞してきました。

 

 今回は四国こんぴら歌舞伎が行われる金丸座のすぐ近くにある「琴平グランドホテル桜の抄」に前泊してゆっくりと琴平の町と歌舞伎を堪能してきました。

 

 歌舞伎の出し物は伊賀越道中双六沼津と羽衣でした。沼津では松本幸四郎と中村鴈治郎が息の合った絶妙の演技を見せてくれました。

 

 羽衣では天女を演じた中村雀右衛門が宙乗りする場面もあり、金丸座ならではの演出が印象に残りました。

 

 この旅行でこんな句ができました。

 

田植機のおもちゃのごとし小さき田

チューリップ育てることが生きがいと

チューリップ咲かせ生家に戻り住む

石垣に犇き咲きて芝桜

犇きて咲く美しさ芝桜

山吹の桜ひとひら乗せて咲き

石楠花も咲かせ八十五歳とか

著莪の花咲ける崖下り河鹿聞く

河鹿鳴く声のだんだん近づきぬ

左から右から河鹿鳴きにけり

木琴を叩けるごとく河鹿鳴く

重唱のやうな河鹿の鳴きっぷり

河鹿鳴く次第に声を張り上げて

独唱の河鹿の声の乗って来る

いやといふほどに河鹿を聞き昼餉

甘酒の差し入れまでもいただきて

山宿の昼は旬の山菜尽くしかな

青空に鶯を聞く露天の湯

たっぷりと鶯を聞く朝の湯に

樟落葉二つ三つ四つ露天の湯

湯上りに残る桜を眺めゐる

鼠木戸より薫風と共に入る

木戸開けて薫風入れて金丸座

歌舞伎見る課外授業や子らの初夏

宙乗りの雀右衛門も見柏餅

空へ舞ふ天女鮮やか風光る

芝居はね初夏の眩しき俗界に

2024年4月12日

 

 私は3月30日、神山町にある明王寺で樹齢100年になる枝垂れ桜を見てきました。翌31日には美馬市脇町のデ・レイケ公園でチューリップと桜を見て、帰りに河野メリクロンで牡丹桜と青い胡蝶蘭を見てきました。

 

 4月5日には吉野川市の向麻山公園で満開の枝垂れ桜を見ました。好天に恵まれ何組もの家族連れがお花見に来ていました。

 

 4月7日は鳴門市の観音寺で始まった牡丹祭りを見たあと、ホテル・モアナコーストの庭園で満開になったばかりの染井吉野を見ました。帰り道に北島町のチューリップ園に立ち寄りました。

 

 4月12日には阿波市土成町の神宮寺で牡丹を見てきました。ここの牡丹は紅白の牡丹が有名ですが、いずれも綺麗に咲いていました。

 

 この5日間でこんな句ができました。

 

百歳の枝垂れ桜の威容かな

百歳の枝垂れ桜の枝垂れやう

百歳の枝垂れ桜を仰ぎ見る

百歳の枝垂れ桜を見んと来て

百歳の桜に屋台まで出来て

百歳の桜に臨時駐車場

百歳の桜に人の集まれる

遠目にもほんのり赤き山桜

枝垂れ桜越しに山桜も見え

境内を敷き詰め枝垂れ桜散る

チューリップ眺め桜も仰ぎ見て

原色といふ美しさチューリップ

整列もまた美しきチューリップ

もう走り出してゐる子らチューリップ

咲き初めし染井吉野のほの赤く

チューリップ園に水車の建物も

赤い花白い桜と咲き満ちて

枝垂れ咲く牡丹桜でありにけり

室咲きの胡蝶蘭かな一列に

室咲きの青美しき胡蝶蘭

遠目にも咲き満ちてをり花の山

満開の花のトンネルくぐり行く

下山する人が優先花の山

この山の枝垂れ桜を今年また

枝垂れ桜越しに阿讃の峰も見て

枝垂れ桜とはこんなにも大振りな

風なくも枝垂れて枝垂れ桜かな

満開の桜広場を走る子ら

咲き満てる花を眺めてゐる二人

お花見をするのは大人子は走る

子ら遊ぶ枝垂れ桜を身に纏ひ

散り敷ける上に一片また落花

桜散る大地に早も蒲公英が

散り急ぐ花はなけれどまた落花

散る桜残る桜もやがて散る

桜散る大地の土に帰りゆく

午後となり少し萎れてゐる牡丹

日を浴びて牡丹いよいよ艶やかに

犇きて咲ける牡丹もありにけり

咲き揃ひ牡丹の寺となりにけり

鉢植の牡丹の紅の艶やかさ

鉢植の白い牡丹に見惚れゐる

咲き満てる染井吉野の白さかな

青空に染井吉野の白眩し

日曜のチューリップ園には父も来る

チューリップ園には家族皆で来る

チューリップ園の水車は喫茶店

とりどりの色美しきチューリップ

大好きと駆け回る子らチューリップ

チューリップ園に歓声こだまして

けがれなき色でありけり白牡丹

懸命に生きて真っ赤や赤牡丹

遠目にも薄く紅差し白牡丹

紅差していよいよ美しき白牡丹

日当たりにありても凛と赤牡丹

門前にありし一株赤牡丹

2024年3月28日

 

 今年は3月2日と3日にNPО法人蜂須賀桜と武家屋敷の会が主催する蜂須賀桜のお花見会が徳島市中央公園の助任川南岸にある桜並木と武家屋敷である原田家住宅で開催されました。

 

 今や蜂須賀桜のお花見の名所となった助任川南岸では、桜並木が大きく育ってたくさんの人が一月も早くお花見を楽しんでいました。ここでは蜂須賀桜と武家屋敷の会の皆さんがお花見の席を用意されていました。

 

 原田家住宅では同じく蜂須賀桜と武家屋敷の会の皆さんが武家屋敷で安達流の華道展を開催してお花見に来た皆さんに楽しんでもらっていました。庭園にある蜂須賀桜の母樹は今年も見事に咲き満ちていました。

 

 今年は初の試みとして原田家住宅にも助任川南岸にも俳句の投句箱が設えられており、お花見をしながら俳句を楽しまれている風景が見られました。

 

 私は二か所のお花見会に出席するとともにその後、蜂須賀桜が散ってゆく助任川南岸にも吟行しました。こんな句ができました。

 

これはまあ雪の花見となりにけり

青空に紅美しき桜かな

蜂須賀の殿の愛でたる桜見る

蜂須賀の世より伝へし桜見る

戦災を耐えし蜂須賀桜見る

焼夷弾落ちても桜生き延びて

お花見のできる日本のありがたく

戦争の無き世を願ひ見る桜

一と月も早く満開なる桜

雛飾る部屋より眺む桜かな

武家屋敷には春の花生けられて

廊下には安達流なる寒椿

庭園の岩にはミモザ美しく

玄関に椿一輪活けられて

武家屋敷よりも蜂須賀桜見て

蜂須賀桜と木札にありし母樹大き

母樹なりし蜂須賀桜仰ぎ見る

投句箱あるを確かめ桜見る

観光船よりも蜂須賀桜見て

コーヒーをいただきながら桜見る

お花見の一句を投句箱に入れ

エチオピア大使も来られ見る桜

阿波踊しつつ花見に来る人も

一と月も早く花見のできる阿波

阿波藩の世より伝へし桜見る

植ゑし人思ひ出しつつ見る桜

花も葉も赤き蜂須賀桜かな

一と月も早く散りゆくこの桜

敷き詰めし上にひとひらまた落花

散り急ぐ花はなけれどまた一花

落つる花しばし眺めてをりにけり

遠目にも見ゆる川面の花明かり

川面にも桜並木の美しく

散り残る花を訪ねて来し人も

散る花をじっと見る人見ない人

敷き詰められし落花の美しき

敷き詰められし落花を踏んで行く

2024年1月7日

 

 今年の正月は能登半島地震と羽田空港での航空機事故という誠に悲惨な出来事から始まりました。

 

 航空機事故では日航機の乗員と乗客の適切な行動で乗客と乗員が全員救出されました。日航機に滑走路上で衝突した海上保安庁の飛行機の乗員は6人のうち5人が死亡しました。

 

 能登半島地震では余震がなおも続いており、6日午後5時現在、死者は126人、安否不明者が210人。死者や安否不明者はなおも増え続けています。

 

 そんな中、石川県珠洲市で地震発生124時間経つ倒壊家屋から90代の女性が救出されたという嬉しいニュースが報道されました。

 

 目を世界に転じますとウクライナではなお戦争が続いており、ガザでも寒さの中で戦火にされされている人々が多数います。二つの戦争では死者が増え続けています。

 

 日本の平穏と世界の平和を祈りつつ、私は長男の運転する車で高知県の足摺岬まで初旅をしてきました。

 

 足摺岬は四国に生まれて80年経つ私がまだ行ったことのない四国南端の岬です。ここで今年一年の明るいスタートを切りたいと思い切って行ってきました。

 

 3日に徳島を出発して道後温泉、内子座と巡り、西予市のホテルで一泊。翌、4日は宇和島市、四万十市、土佐清水市から足摺岬に参りました。

 

 足摺岬で見た太平洋は大きく水平線が弧を描いて見えました。地球の丸さを実感する水平線を見て徳島に帰ってきました。

 

 この旅でこんな句ができました。

 

正月の道後温泉賑はひて

初売の道後の町の華やかさ

初売の街ぶつからぬやう歩く

初旅は伊予の名所を駆け足で

初旅は内子座にまで立ち寄りて

西伊予の初旅魚尽くしかな

好きなだけ蜜柑どうぞとあるホテル

冬晴の宇和島駅の明るさよ

冬晴の宇和島駅の椰子仰ぐ

松山へ土佐へ行こうか乗初めは

宇和島の駅の綺麗な松飾

正月の四万十川のゆったりと

水澄める四万十川の青さかな

冬日差す足摺岬灯台に

正月の光真白き灯台に

初旅の遠く足摺岬まで

新年を足摺岬より始む

初旅は丸い水平線も見て

初旅ははるか黒潮見ゆ岬

野路菊のへばりつくかに咲く岬

野路菊も見て寒椿咲く岬

冬晴の太平洋の明るさよ

正月の太平洋の青さかな

寒晴にジョン万の像高き岬

初春や土佐は偉人の多き国