石庭の紅葉いよいよ色極め
ドイツ兵架けたる橋に冬日かな
大麻へ登る山道紅葉道
一山を染め尽したる紅葉かな
綿虫の群れゐる時の白がすり
赤ん坊抱き上ぐるごと蓮根掘る
思案石なる石の上紅葉散る
天へ咲く山茶花の白ほの青し
草虱ありし野にありゐのこづち
二度咲きの花二三寸藤袴
踏みし音木の実と知りぬ歩きけり
一人来て木の実の道を歩きけり
視野溢る四国三郎冬麗
冬霞阿波の山々やさしかり
丘に立ち眼の下見れば街師走
山茶花の白の際立つ日陰かな
議事堂に桜紅葉の二三片
閉会の議事堂眠り銀杏散る
振り返り見てもさびしき冬桜
ガス灯を真似し街灯枯柳
波一つなき海原の冬日かな
粕汁を食ひて越へたる親不知
鴨の陣四国三郎占領す
鴨の陣匍匐前進する如く
風吹けどひるむことなき鴨の胸
船着きて関東焚に迎へらる
大鍋におでんひしめき客待てり
うどん屋にまづはおでんといふ讃岐
おでんなら竹輪麩といふ東京つ子
遠き日の加賀の金沢蟹おでん
踊る水跳ねる水にも冬日かな
日の翳り数を増したる浮寝鳥
外苑の堀の水面の冬紅葉
黄葉照葉天辺までも黄葉照葉
石垣を取り囲みたる冬紅葉
儀典馬車朝の演習息真白
どの道も山茶花の道今朝の道
大雪の東京の空真青なる
東京の夜景を下に忘年会
吟行は手袋忘ることなかれ
失える手袋片手吊しあり
一年のはや終はりけり年賀状
一年の過ぎにし速さ年賀状
年毎に過ぎ行く速さ年賀状
川風に流されてゐる鴨の陣
振り返り見れば初雪音もなく
初雪に閉ぢ込められてゐる淡路
初雪に閉ぢ込められてしまひけり
列島に寒気団阿波に初雪
雪ちらり散歩やめよかどうしよう
大雪の金沢からの蕪鮨
年忘米寿のをみな恋の歌
街の灯の残りてをりぬ冬の朝
遠き日の鱈の粕汁親不知
電飾の並木の増へて街師走
焚火して待ちゐてくれし里の人
裸木に垂るる滴や冬の雨
冬の雨もう風花となつてゐる
目を凝らし探せど見へぬ笹子かな
笹鳴ける一叢確かこのあたり
大麻へ続く野の道笹子鳴く
みちのくの林檎の何と冷たかり
オペラ観て我も雪降る街帰る
阿波の雪紅葉とともに散りにけり
雪置ける千両の赤ことのほか
退職の日の決まりたる年の暮
このところ逝く人ばかり年の暮
かいつぶり潜りし水面平らなり
鳰潜る後から尻の付いてゆく
熱燗のほどよき蕎麦の老舗かな
風の後まだ揺れてゐる萩の花
紅葉の里静けさの中にあり
安穏といふ幸せや柿実る
半分はいまだ蕾や菊人形
揃ひ咲くこと難しき菊人形
裏表にて明と暗菊人形
時計なき世界なるかな村祭
ゆるやかな時の流れや村祭
石段を避けて御出座秋の渡御
日溜りに里人あふれ秋祭
新規なるものは無けれど秋祭
段取りのゆるゆるとして秋祭
指図せずとも進みたる秋祭
秋祭裏方の白割烹着
秋祭男と子供ばかりかな
青竹の幟先立て村祭
秋祭山車手作りでありにけり
少子化で秋の御輿に車輪つき
朝市に味噌焼く香り秋晴るる
咲き始む泡立ち草の萌黄色
先付は甘露煮にせる子持ち鮎
松茸の吸物酢橘浮かべあり
秋鮭に栗と零余子と酢橘かな
蕪を煮て蟹の餡かけなどをして
白芋茎もつてのほかも添へてあり
柿ゼリー出て会席の終はりけり
沿線はどこも泡立ち草の花
鴨の陣たちまち出来て桂川
城跡のひろびろとして菊花展
鉢植の揃ひて咲ける小菊かな
懸崖の菊は孔雀の羽の如
白鷺の城の白壁薄紅葉
見上げゐる五層の天守秋高し
江戸初期のままの姿の城の秋
秋うらら世界遺産の城にゐる
千両の道をたどりて茶席かな
庭園の奥の奥まで実千両
千両は真つ赤万両まだ緑
千両の揺れ誘ひたる昼の鐘
縁側の日溜りにゐて帰り花
山茶花の一輪咲ける裏の庭
灯篭の隣の石蕗の花明かり
暮れ始む雨の御苑の石蕗の花
銀杏を拾ひ過ぎたり何としよう
銀杏を拾ひ土産のできあがる
大銀杏諸肌脱ぎて冬に入る
大銀杏大円描く落葉かな
立冬といへど上着を脱ぐ日和
紅葉に誘はれ皇居一周す
美術館出て紅葉の道帰る
一葉ごと違ふ色なる照葉かな
一葉ごと光の遊ぶ照葉かな
冬夕焼羽田に富士を浮かばせて
北斎展見た日の富士の冬夕焼
特賞の他の賞なき菊花展
子よりも親のいそいそ七五三
畝傍山桜紅葉に昼の月
鴨群れて食パン一斤瞬く間
振り返る人はなけれど残る萩
干柿の先付てふも明日香かな
吸物は鯛と蕪に柚子添へて
明日香路は野菜尽しの鍋料理
目の前に大和三山柿の秋
最古てふ飛鳥寺に来て破れ傘
一袋二百円也柿の里
百円で枝付三個柿の里
木の実落つ小径登りて畝傍山
まほろばの古都に旅して小夜時雨
古の歴史の舞台初時雨
蘇我入鹿思ふ一夜の初時雨
明日香路を巡りし夜の初時雨
案山子まだ残る棚田の初時雨
一年の終はりし棚田柿実る
小春日の飛鳥の石の遺跡かな
法隆寺日溜りの庭帰り花
夢殿へ続く桜の紅葉かな
法隆寺円き柱に冬日かな
八角の御堂のやさし冬日影
短日や明日香のガイド早仕舞
室の花遠き国より売られ来し
日曜日家族揃ひておでんかな
城の堀水清くして柳枯る
鴨の陣たちまち出来て名田の関
一叢の緑ありけり破れ傘
柿日和落柿舎に来て柿見上ぐ
この柿を芭蕉去来も見たるかな
尋ね来し嵯峨の落柿舎柿の秋
振り返りまた振り返り紅葉狩
水面まで紅葉の世界広がりぬ
秀頼の自刃の場てふ石蕗の花
搦手の石垣の下花八手
大手門くぐりて菊の香の中に
太閤に見せたき紅葉錦かな
城内の茶屋で一服冬うらら
新蕎麦の蕎麦湯お代り致しけり
川風のよくよく吹いて蕎麦の花
蕎麦の花咲く多摩川の河川敷
紅白の水引咲くや山の宿
女郎花玄関に咲く山の宿
白式部紫式部相並び
紫に古思ふ式部の実
紫に濃淡のあり式部の実
コスモスや田楽販ぐ蒟蒻屋
豆腐買ひ歩いて帰る女郎花
紅一点峡も奥なる曼珠沙華
頬白の庭に来てゐる朝まだき
韓国の松茸山と積まれをり
千葉産の落花生買ひ茹で上げる
パリで見し真つ赤に爆ぜて石榴の実
はやばやとニュースキャスター赤い羽根
駅頭に女子高生の赤い羽根
西瓜売る場所に冬瓜南瓜かな
滝を見て秋海棠の道帰る
雨止みし庭の一隅玉簾
光陰の過ぎ行く速さ金木犀
東京に村ありて水引の花
宵闇に秋明菊の花明かり
暗闇に金木犀の香りかな
名園のよき茶所の藤袴
抜け駆けて始まつてゐる櫨紅葉
拾ひたる橡の実二つ手の平に
木犀の香のなかにあり虚子の墓
木犀の大樹の香り虚子の墓
鎌倉の茶屋に一輪時鳥草
園児より親の賑やか運動会
秋桜倒れて起きて咲きにけり
渡る鷹けふは見られず帰り花
今年また鳴門こんなに帰り花
海峡の水面すれすれ鵯渡る
鵯の群れ見下す高さ秋の蝶
山雀の餌を選び取る速さかな
秋晴れの庭に散髪終はりたる
雲一つなき空広し秋晴るる
大仏に供へ林檎の小さくなる
風止めど萩の揺れゐる静寂かな
朱色なる堂宇に桜薄紅葉
切られたる角押し付けて老いし鹿
大仏のまします伽藍残る萩
鹿笛をよく聞く日なり古都にあり
落とされし角あと瘤の如きかな
常夜灯積もりし苔に秋時雨
小鹿のこのこ大鹿のそり煎餅屋
鹿のまりすぐに片付け煎餅屋
猿沢の衣掛柳紅ほのか
桜紅葉始まつてゐる浮御堂
古都の路地アメリカ産の水木に実
苔むせし芭蕉の句碑や角切場
芭蕉句碑守る若木も薄紅葉
鹿苑は鹿の溜り場角切る日
玉砂利を踏み締めて行く角切場
青信号鹿も一緒に渡りたる
大和路は柿の里また柿の里
家毎に菊を咲かせて飛騨の国
高山の古き町並み菊明かり
外つ国の朝顔花を咲かす路地
高山の上三之町菊香る
紅葉の前線間近飛騨の里
大藁屋すつぽり桜紅葉かな
次の鐘待つ静寂あり藤袴
刺し子する人動かざり柿熟るる
朝市に並ぶ赤蕪すぐ売れる
飛騨之国高山陣屋秋珊瑚
木の実落つ道の果てなる樵の家
一刀彫見て帰る道時鳥草
動かざる時は束の間花薄
朝市の赤い大根と赤い蕪
朴葉味噌焼きて奥飛騨夜の秋
合掌の大屋根の上秋晴れて
無花果の旬が嫁より届きたる
無花果の味のひかえめなりしかな
デザートはいつも無花果このところ
梨送り無花果届き嫁姑
わつと来てわつと去りたる稲雀
電線といふ電線に稲雀
稲実る黄金の田の十重二十重
列なして急ぐ鴉や秋暮るる
鷺雀燕椋鳥野辺の秋
正座して鮎雑炊の客となる
箸休め芋茎の酢味噌和の出て
落ち鮎の鼻の少々曲がりをり
川痩せてゐるかも鮎の小振なり
台風の前の静けさ花芙蓉
新しきこと始めたし竹の春
法師蝉一声鳴きてそれつきり
山萩の大きく垂れて雨滴かな
曲線のいびつなるかな花梨の実
吾亦紅ドライフラワーかと思ふ
皇居にて盗人萩に出会ひけり
紫を絞りたるごとほたる草
雨滴にも紫ほたるぶくろかな
白てふも凛たる白や白式部
女郎花男郎花また女郎花
禁足となりて夜食の届きけり
寝台車まずはともあれ夜食かな
夜食とは即席麺の日の遠く
飛行機の夜食おにぎり二つ出て
夜食にも和洋中ある都市ホテル
太刀魚の一尾も釣れず夜明かな
とろ箱に太刀魚の銀残りをり
太刀魚の歯よりこぼれし小魚かな
上弦の月ののぼりぬ破れ蓮
敗荷の田ひろびろと宵の月
蓮根掘る一つ抜き出しまた一つ
出産の予定日も過ぎ秋暑し
はやばやと減量カルテ届く秋
昼食のカロリー表に見入る秋
女の子生まれしの声爽やかに
母子ともに健やかと聞き秋うらら
初孫の写真の届く良夜かな
孫できてワインの進む夜長かな
湿原に静けさ戻りおみなへし
細き身で母となる嫁おみなへし
長き夜や世界遺産の旅の本
長き夜や歳時記めくり辞書めくり
長き夜やけふこそ読まんホトトギス
新藁の香り振り撒きコンバイン
脱穀機まだ動きをり宵の月
円錐の少し崩れて籾の山
爽やかや本日気温二十五度
爽やかや紺の背広に着替へたる
女郎花同じ野の道男郎花
鈴虫の音のしみわたる夜更けかな
十五夜を父となりたる子と眺む
赤ん坊寝入りて眺む今日の月
万博の庭園ごとの虫時雨
万博の四季の庭園女郎花
十六夜や万博終わる週となる
知多に来て名も知らぬ駅葛の花
鈴虫の野に馬追のひとしきり
知らぬ間に登りてをりし十七夜
馬追や学校の門開きしまま
家族皆揃ふてをりぬ居待月
スーパーの花売り場にも吾亦紅
残業の子の帰り待ち寝待月
すくと立ちぱつと咲きたる曼珠沙華
だしぬけに畦といふ畦曼珠沙華
畦道を通せん坊し曼珠沙華
自然流小学校の糸瓜棚
子らよりも丈の伸びたる糸瓜かな
校庭に糸瓜の花と糸瓜かな
田仕事のあと追ふ小鷺ありにけり
蓮の花背丈を凌ぎ咲ける位置
台風に出鼻くじかれピアノかな
雨止めばたちまちもとの蝉時雨
日盛りのバンド演奏けたたまし
下校子に会釈をされて青田風
咲き初めてこんなところに鳳仙花
お中元送り送られして電話
東欧の朝市をふと西瓜売り
朝顔や蔓の先ほど淡き花
無人駅真つ赤なカンナ今年また
炎昼に闇の世界を万華鏡
パリ今年冷夏とメール届きけり
パリの人夏のバカンス一ヵ月
鰻来て献立すべて変わりけり
お隣も土用の丑の鰻かな
向日葵やモネもゴッホもゴーギャンも
夜咲くといふ睡蓮のありにけり
仄紅き蕾を恋ひて赤とんぼ
川面まで下りてきそうな花火の尾
散りてなほ目の裏にある花火かな
花火見に堤防にわか桟敷かな
花火玉しゅるるるるると爆ぜて散る
音すれど音するばかり遠花火
花火果て川面に街の明りかな
唐黍の刈る時の来て群雀
南瓜から天麩羅を揚げ始めけり
煮南瓜のメーン季節のランチかな
東京のホテルの朝餉にも南瓜
この里にこんなにもゐて秋燕
先頭ははや消え消えに帰燕かな
咲き初めし芙蓉の花の淡さかな
一群に花まちまちの芙蓉かな
片陰を行く人ばかり人通り
懸樋より垂るる雫やほたる草
苔の庭焦土とまごう炎暑かな
蜻蛉の水面離れぬ残暑かな
平凡な山に一景花常山木
秋の蝉息つぎ足して鳴きにけり
流星とまごう飛機あり宵の空
山一つ越へ行くほどに星月夜
トンネルを抜けし山里星月夜
星降る夜峠を三つ越へにけり
稜線を描き出したる星月夜
北極を越へ行く機窓星月夜
天花粉まぶしたるごと稲の花
四国中少雨の今年稲の花
当分は雨なき予報稲の花
ダムの水干上るニュース稲の花
風吹かぬこと祈りゐて稲の花
流れ星また流れ星流れ星
飛騨の山合掌造り蕎麦の花
合掌の大屋根の下蓼の花
溝蕎麦の水路たどれば大藁屋
合掌の家それぞれの鳳仙花
水引の花のはじめの緑色
藪茗荷花咲く庭の静寂かな
米寿てふ友の作りし今年米
新米のご飯に茄子のお漬物
新米で作るぼうぜの姿鮨
蝉時雨夜は一転虫時雨
みちのくの友のことふとちちろの夜
中国の母語る娘やちちろ鳴く
やはらかき朝の光にゑのこ草
地に満てる朝顔の花小振りなる
売家に朝顔どつと押し寄せて
田仕舞ひの煙のほかは動かざる
吉野川北岸千里豊の秋
大竿のときおり撓み下り鮎
一頻り唯我独尊不如帰
喬木にはや毛づくろひ小雀の子
太陽へ伸びゆきにけり凌霄花
ハイウエー夾竹桃の花ばかり
夾竹桃燃え戦後も早や六十年
夏椿いづれ白花ばかりかな
紫陽花の葉ごと花ごと雨の粒
裏山の崖を覆ひて額の花
雨の日も梔子の香のはるかより
このあたりふつとすがしき半夏生
噴水の穂の天辺の踊りをり
ねこじゃらし思ふ虎の尾なりにけり
雨の日の権萃の紅殊のほか
垂るる実に白雲木の高さ知る
間道は令法の花に埋もれをり
花空木谷を埋めたる白さかな
渇水のあとの卯の花腐しかな
眉山より老鶯しきりモラエス忌
モラエスの昔は知らず凌霄花
モラエスの旧居の石碑濡らす喜雨
モラエスも見しかこの路地花樗
ポルトガルワイン涼しきモラエス忌
たまさかの雨間の光に蓮の花
雨止みて蓮の葉ぴんと立ちにけり
雨上がり青田いよいよ競ひをり
呼び込まれ朝顔市の客となる
市の帰路朝顔二、三しぼみをり
東京は花のお江戸か朝顔市
江戸つ子となりし法被や朝顔市
外つ国の売り子も法被朝顔市
花槿ロダンの像に咲きにけり
葛桜出て会席は終はりけり
阿波に喜雨鳴門金時生き返る
路地裏に始まつてゐる阿波踊り
宵の街そぞろ歩けば祭笛
田を渡る風運び来る祭笛
鳴門路の一望千里蓮の花
小屋といふ小屋に玉葱淡路島
豊葦原瑞穂の国の青田かな
どの顔も若き日の顔宿浴衣
愛・地球博炎天の花真つ赤
万博の一番人気かき氷
地球博炎天の徒歩旅行かな
炎天の長蛇の列のしんがりに
スーパーの鮮魚売り場に金魚かな
金魚鉢床の間に置き眺めゐる
藻を入れて金魚の世界できあがる
我が庭の天辺からも蝉時雨
刈りし庭はや青々と夏の草
添ひ寝してなほ動きゐる団扇かな
美術館浴衣の方は無料なる
鎧着ておつとり刀かぶと虫
入場を待つ列に着き団扇かな
街中が静止して見へけふ大暑
空蝉の葉を掴みゐる強さかな
アーケード金魚の幟下がりをり
脱け殻の蝉も時雨の中なるか
空蝉の葉を掴みゐる強さかな
曲流れはたと止みたる蝉時雨
花すべて天へ向きをり百日紅
風通る大樹の陰の浮巣かな
母の日に届きし花の白さかな
日曜の朝の静寂や花水木
宿に覚め朝の光に花水木
散歩する何時もこの道さくらんぼ
振り返り見ればこんなにさくらんぼ
スニオンの岬で見たし大西日
はるかへと夕日映せる植田かな
新市議に当選の報風薫る
十薬の彼誰時の白さかな
ニュータウン十薬干してありにけり
蔵のある屋敷の側に立葵
日曜日一家総出の田植かな
田植機の父の姿を見て居りぬ
両隣すまして競ひ田水張る
老夫婦二人となりし田植かな
走り梅雨面を濡らすほどであり
走り梅雨はや晴天となりにけり
雨少し馬鈴薯の花生き返る
ダム底をついてあがりぬ走り梅雨
鯵鮨の合せ酢我の出番かな
立葵去年と同じ角に立つ
ゆすらうめ口に含みし日の遠く
琉球のマンゴー届き御裾分け
雨蛙鳴き去りて来る蟇蛙
蚯蚓鳴くことの嘘とも真とも
手水鉢終の目高の棲家かな
ともしびを映し水田眠りけり
花菖蒲さつきと色を競いをり
一巡のあと一巡の菖蒲園
巡り来て紫が好き花菖蒲
白とふは粋な色なり花菖蒲
花菖蒲夕日ひときは目立ちをり
上向きに咲ける菖蒲の「五月晴」
この蝶の縄張りらしき菖蒲園
風止みて凛と立ちたる菖蒲かな
菖蒲園いづれも俄カメラマン
更衣今年流行とクールビズ
七変化はじめは白でありにけり
しもつけの寄り添う如く咲きにけり
花卯木重なり合ひて散りにけり
山風に泰山木の花散れり
梅雨晴間眉山眼前句碑除幕
寺町に虚子恋ふる句碑濃紫陽花
句碑ひとつ入梅の日に生まれけり
どこまでも真実一路藍茂る
雑草は一本もなし藍茂る
雨のなき阿波の北方藍茂る
藍の葉を登り来しもの天道虫
藍茂る畑の土の見えぬほど
刈り入れは明日かも知れず藍茂る
藍の葉の揺れて涼風届きけり
藍若葉始まる苦労知りもせず
太き幹朽ちてあれども樟青葉
大樟は幹朽ちてなほ青葉かな
梢ほど泰山木の花真白
十薬も丈伸ばしゐし御苑かな
十薬や真昼の闇の白十字
うかうかと黴に取られしメロンパン
でで虫と聞けどお代はりエスカルゴ
満天星の花に置きたる雨雫
血糖値正常となり若葉かな
鉄棒の子らの歓声五月鯉
残こされて田の一隅に母子草
隣より筍飯の香りかな
筍飯家族総出で作りけり
山荘に猿の親子や春の宵
会席は粽餅から始まれり
独活若布葱もぶち込み潮汁
冷蕎麦に山葵大根卸しかな
山桃を添えて塩焼き天魚かな
薇に木の芽いろいろ信田巻
烏賊胡瓜茗荷木耳胡麻酢和え
山菜の加薬御飯を御代りす
外輪船出入りの港花水木
ゆつくりと入りし温泉菖蒲の湯
菖蒲十束浮かびてをりし露天の湯
子と二人山の露天の菖蒲湯に
飛行雲描くを見つつ菖蒲の湯
菖蒲湯に入りて体重減りにけり
駿河台マロニエの花咲き始む
藤の花揺らし山雀去りにけり
藤の花揺れて二拍子三拍子
藤の花幹は仁王の足のごと
紫の淡きこの色花あやめ
鵜の一羽鳴門海峡渡りけり
透き通る潮目に渦の生まれけり
大渦といへど束の間春の潮
観潮や渦に始終のありにけり
春の潮大河となりて大海へ
観潮船二つ並びて帰りけり
灯台へ続く尾根道立浪草
新任の土地より便り五月晴
母の日の翌日は我誕生日
黒鯛の泳ぐお堀でありにけり
海城の堀の黒鯛周遊す
黒鯛や讃岐高松海の城
車輪梅香る城址の茶会かな
豆剥きは私の仕事豆御飯
我が剥きし豆たちまちに豆御飯
焦げ飯の御代わりをして豆御飯
豆剥きてけふといふ日の終わりけり
苗代田出番待ちつつ暮れにけり
たはむれに入りし温泉や菖蒲浮き
菖蒲湯に手足伸ばして子と二人
菖蒲湯の菖蒲の香り家路まで
何事かあらん雲雀の急降下
水平の次は斜交ひ夏燕
連続技一呼吸して夏燕
糠雨にいよいよおぼろ花樗
紫といふ淡き色花樗
義経の屋島への道花馬酔木
白に白重ねて真白花辛夷
あと追ひてあと追はれゐて恋雀
軒先に今朝も尾を立て恋雀
大根の花を染めたる入日かな
朝市の目玉手作り花菜漬
遠き日の母の笑顔や花菜漬
虚子の忌の鎌倉の花盛りなり
釈迦像に甘茶をかけてけふ虚子忌
鶯に導かれゐし墓参かな
虚子の墓訪ねし道の著我の花
歩み来し道はるかなり夕桜
歩み来し一筋の道花の道
虚子の初志四代つづき山桜
一筋に花鳥諷詠けふ虚子忌
ホトトギス百八齢の虚子忌かな
風なくて花こぼれをりこぼれゐし
花一片斜交ひに舞ひゆきにけり
余すなく咲き満ちてこの桜かな
水に映え花花花と咲きにけり
夜桜の宴に浮かびて遠桜
句作りも忘れ桜に見とれをり
番かも同じ高さや揚雲雀
蓮の田に水張れば来て燕
梨の花蕾のころは仄赤し
花と葉の犇きあひて梨の棚
大根もキャベツも花を競ひをり
いざ行かん金毘羅歌舞伎山笑ふ
金丸座残花の道の幟かな
鼠木戸くぐれば闇に江戸の春
吉右衛門見て金毘羅の春に酔ふ
舞台はね春灯の道帰りけり
菜の花に隣も余所もなかりけり
蝌蚪逃げてあと追ひかけし目高かな
そこにある阿波の山々春霞
見返れば山といふ山笑ひをり
台風の爪痕無残竹の秋
五月鯉泳ぐ里山萌黄色
阿波の山重なり合ひて草朧
道後への一泊吟行山笑ふ
木漏れ日に透き通りをり藪躑躅
箒の目入りたる庭に落ちし花
三重の塔を越へかし樟若葉
燕来る道後の奥の旅の宿
石手川菜の花の中流れけり
キューイの芽蔓の先ほど開きをり
囀や雑事忘るる子規の里
里人と朝の挨拶豆の花
鯉群れし淵の青さや花筏
踊子草陰に控へてをりにけり
真白なる家に赤と黄チューリップ
樟落葉ありてこの樟若葉かな
予の国の城の跡なる雪柳
千羽鶴残して行きし遍路かな
竹の子も芽吹きし今朝の遍路茶屋
ケイタイで怒鳴りつつ行く遍路かな
湯掻きたる蓬の青さ蓬餅
釜茹での蓬の香り蓬餅
一年の蓬茹でおく餅屋かな
茹で上げし一年分の蓬かな
蒲公英の野に鈴鳴らし徒遍路
道標隣の花は大手鞠
朽ち果てて寄り添ひし墓金鳳華
遍路茶屋一番人気蓬餅
名物の草餅五つ四百円
タラの芽の天ぷらうどん五百円
お札所の十二単の紫色かな
花水木躑躅と白を競ひたり
梅日和華燭の宴始まれリ
梅日和新郎新婦相似合ふ
ゆつたりと四国三郎鴨帰る
けさはもう茎立ちてゐし蕗の薹
遅速あり遅速ありたるふきのとう
蜂須賀の墓所の老梅まだ蕾
蜂須賀の墓所の広さや春日向
剪定の梅の小枝をもらひけり
繁縷の花にこぼるる光かな
手造りの小川なれども柳鮠
蜷の道九十九折でもありにけり
雛飾外つ国人に連れだちて
青い目の人形をふと雛祭
野に風の吹きすさぶ日のつくしんぼ
伸びるほど数を増やして豆の花
桃の枝箸置にしておままごと
遠目にも山茱萸の花明かりかな
どの花も天を指したる辛夷かな
天地をつなぐもの皆凍て返る
着膨れの押し競饅頭山手線
凍て返る朝のホームに我一人
皇居前広場の松に忘れ雪
湯豆腐や卒寿傘寿の父母囲み
三椏の花は照れ屋でありにけり
振り向けば満作の花浮かびをり
木瓜の花隠し持ちたる棘数多
桜草こぼれこぼれて増えにけり
ツンドラの凍てし地に村見えて来し
春の雲浮かびテムズの流れかな
アーモンド咲きたる下の乳母車
風強き丘に古城と紫木蓮
黄水仙群れしタブローコートかな
流氷のきしめる港鴨群るる
玄関にローソク灯し雪の夜
猫柳古都の花屋の一隅に
芽柳のそびえ流るるマイン川
フランクの像への古道花の道
春の日に合せて人の移りけり
ブローニュの森なるしだれ桜かな
ブローニュの森のせせらぎクロッカス
黄水仙咲きし水辺で憩ひをり
訪ね得しゴッホの墓や犬ふぐり
お彼岸のゴッホの墓へ参りけり
黄連翹咲ける路地来てふとゴッホ
晩年のゴッホの寓居桜咲く
マロニエの芽の総立ちに空の青
馬刀食べてバルセロナの夜更けにけり
ガウディの街春雨に煙りをり
木瓜咲いてキューガーデンの虚子の句碑
ロンドンに虚子の句碑あり木瓜の花
ロンドンで出会ひし染井吉野かな
辛夷咲くキューガーデンの空広し
ウィンザー町の奥なる花ミモザ
ウィンザー芝の緑と黄水仙
いかなごの釘煮大方曲がりをり
茹で上げしいかなご並ぶころとなり
菊の枝菊の葉も挿し苗作り
もう一度深呼吸して大試験
大試験送り出す子に励まされ
草餅が追ひ掛けて来る草津の湯
瀬戸内に鰆来る日か海荒るる
大寒の日本列島縮こまる
年賀状当たりましたと返書かな
ちゃんちゃんこ子犬も同じちゃんちゃんこ
ここもまた道の普請の日脚伸ぶ
窓といふ窓開け放ち冬うらら
フレームを仕上げし農婦日脚伸ぶ
紅白の梅競ひたる空青し
野良に出る人の増えけり春隣
冬うらら遠き友より句集かな
ふきのとう男が作る酢味噌和え
日本中雪の達磨の予報絵図
大寒波日本列島包み込む
冬北斗悲しきまでに冴え渡る
金柑に積もりし雪のまぶしかり
北陸に大雪阿波にささめ雪
降る雪や何処にも行かず誰も来ず
牡丹雪眺めて一日暮れにけり
わが庭に氷を残し寒波去る
薄氷を踏みて歩きし日のはるか
薄氷のはかなきまでに薄きかな
薄氷のまことに薄くありにけり
薄氷の放ちし朝の光かな
北風に向かへる一歩前のめり
隅どりて田毎田毎に残る雪
外堀の客はキンクロハジロかな
立春の空ひろびろとありにけり
湯気立てて出湯の湯気の猫柳
中国の母思ふ娘や梅蕾
中国の娘らの歓声梅日和
野の市の独活の隣の独活もどき
菜の花忌嘉兵衛を読みし日の遠く
水張ればもう鴨の来し蓮田かな
古屋敷ぽつりぽつりと咲きし梅
両の手に余りし香り蕗の薹
花咲けば見る人のなしふきのとう
ほろ苦き遠き日のあり蕗の薹
船泊埋め尽したる若布かな
軽トラの物売りも来て若布刈り
若布褒め和布蕪一山頂戴す
海水で洗ひし和布蕪丸かじり
わが茹でし鳴門若布でありにけり
磯の香の丸ごと和布蕪とろろかな
きらきらと光返して犬ふぐり
日溜りに犬ふぐり又犬ふぐり
句作りに四苦八苦して犬ふぐり
カタカナの氾濫ここも椿苗
ふつくらとミセス・デービスてふ椿
天女なる椿の花の淡さかな
花椿巡る目白の慌し
水軍の隠れ古道の落椿
そのかみの虎丘斜塔や枇杷の花
上海の豫園商場小夜時雨
冬の灯や租界でありしあたりかな
懐かしき子らのセーター出できたり
オペラ見てこの一年の年の暮れ
年の暮れ募金の声に挟まれリ
大書店一巡りして日記買ふ
年の瀬の光のプロムナードかな
どの花もいづれ向き向き野水仙
訃報あり昨日賀状を出せし友
極月の光の宴やルミナリエ
鎮魂の聖夜なるかなルミナリエ
異国の香添へクリスマスカード来る
下仁田の葱大年に届きたり
去年今年牛の歩みに似たれども
元旦やいつもの街の新しき
阿波の山ほんのり白き年初かな
御降の風花となる景色かな
数の子と田作あればよかりけり
子も嫁も皆揃ひたる雑煮かな
互例会終えて内輪の年始酒
街角に賑わい戻る四日早や
帰省子に持たせる土産杵の餅
つかの間の光りて冬の夕日落つ
白星は新成人の力士かな
募金箱新成人の胸にあり
墨磨つて初硯にて古端渓
子らの顔墨だらけなる書始め
丑紅と云えり濃い目にひきにけり
王義之の蘭亭をふと筆始
書初めの大書なるかな何と読む
慎重は最初の一字筆始
書初めの手本はあれど我は我
書初めに人それぞれの思ひかな
黒紋付引き締めてをり寒の紅
寒紅に白粉の白際立てり
丑紅のメーカーどこと聞く売り子
塁跡は風鳴くところ石蕗の綿
名も知らぬ野草にも花冬日向
風吹かば吹けとばかりに冬桜
ちらほらと否そこかしこ冬桜
鴨のゐる水面ばかりが光りをり
一羽来てあつと言う間に鴨の陣
ここにまた伸び放題の野水仙
前倒しして竹馬の一歩かな
竹馬に乗りて天狗の顔となる
帰省子に初電話よく掛かりをり
時勢かな初電話より初メール
八重椿花の盛りに落ちにけり
藪椿先に行くほど数多咲き
落ち椿太極拳の声に落つ
苔むせる青き石段八重椿
見つめても知らぬそぶりの恋の猫
耕せし畑つかの間に草萌ゆる
蝋梅や古き屋敷の窓明かり
歳時記の世界に遊び春炬燵
見つけたり囀りの主天に在り
鳥帰る小川の岸辺ざわめけり
卒業の子らの列あり昼の街
梅明かり黒き天守の聳えをり
薄氷の光れるを見て阿蘇下山
家中に春子焼きゐる香りかな
閉校の日となりにけり梅も散り
嘘まこと梅に鶯蓬餅
天空へ螺旋描きて揚げ雲雀
土手沿ひに花菜明かりのつづきけり
この家もまたこの家もさくらかな
はくれんやこの青き空ありてこそ
うかうかと大根の花の伸びにけり
菜の花やゴッホの好きな黄をこぼす
春の雨葬送の人濡らしをり
姫沙羅の芽の総立ちに真淵の碑
苗市の花の数より人の数
彼岸会の善男善女となりにけり
侘び助や一人となりし人の末
天女なる名の椿かな天に咲き
北風と太陽背中合わせかな
一句成す思案してをり日向ぼこ
嫁御よりバレンタインの日の祝ひ
仕放題気儘放題春嵐
春の虹道行く人の映えにけり
北側の玄関の花梅の花
梅咲きし空真青なり大藁屋
棟上の木槌の軽ろし日脚伸ぶ
町中の雛が雛呼び雛の壇
春の雷人それぞれの門出かな
若布刈り一族郎党浜に在り
浜茹での若布芯まで真青なり
浜で食うめかぶとろろの青さかな
枝の先その先々にも寒雀
柚子味噌を作り終えての柚子湯かな
寒見舞いかの人からは無かりけり
ボルシチの蕪の真つ赤や寒波来る
真二つの白菜干せる車上にも
空豆と豌豆の芽や空つ風
節分や鬼は内へと哀れめば
ヤンバルのたんかん熟れて届きたり
春近してふに訃報の続きけり
沖縄の冬を旬なり島らつきょ
風花に何時かかはりて昼の雨
立春や小川に鮠の群れてをり
春隣り川蜷少し動きけり
蕗のとう二つ三つ四つ五つ六つ
如月の新郎新婦凛として
梅一枝添へて宴の始まれリ
手造りの華燭典かな梅匂ふ
凍て返るお堀に街の明かりかな
冬晴れのなかどこまでも歩きみん
鴨遊ぶ四国三郎昼の月
七種のぺんぺん草となりにけり
冬桜頭を垂れて咲きをリぬ
大根の大根の葉に抱かれをり
うどん屋のうどんののぼり冬茜
うどん屋となりし藁家で日向ぼこ
昨日来て今日も来てをり寒雀
京へ出す室の壬生菜を選別す
生け捕りの大根の大葉切り落とす
垣間見る室の苺の殊に赤
雪の野に豌豆の芽の青さかな
初風呂やありがたきかな無事息災
一番星頭上におきて初湯かな
初風呂に手足伸ばせば宵の月
芹薺ふるさとの川やさしかり
初詣思ひて居りし人に会ふ
凧揚ぐる鳴門の空の青さかな
辛夷咲く武蔵野の空真青なり
日に燦と干し柿すだれ大藁屋
雪の原白鶺鴒の白異に
雪の夜の犬の遠吠え甲高し
徳島の雪は霙となりにけり
いとけなき芽枝に雪の重さかな
数の子と田作りありて事足りぬ
うかとして黴に取られし鏡餅
橙が柚子へ転がり女正月
都より河豚食べに子の帰郷
河豚食ひて友の孤舟を聞きをりぬ
寒き身を温め上手白子酒
鰭酒に酔ひける夜の星の下
九絵鍋をつつきしあとの寒昴
ひめゆりの乙女らの碑や寒の雨
早咲きの蒲公英見たり平和の碑
大寒に残波岬の海荒るる
大寒の八重岳に興ありとせん
旅はるか緋寒桜の紅淡し
登るほど咲き競ひたる桜かな
餅餅餅旧正月の街の市