今月の俳句

2023年12月

ふるさとの川にも田にも鴨の来て

この小さき鴨のはるばるロシアより

穭田もおむすび山も黄に染まり

この小さきため池にまで鴨の来て

敗荷田じっと眺めてゐる佳人

敗荷にたたずむ佳人ありにけり

名園の池に早くも鴨の陣

園広し鴨ゐる池とゐない池

赤と黄と緑の美しき冬紅葉

ゆったりと冬の紅葉を見て回る

根上がりの松の緑と冬紅葉

芒の穂越しに客乗る舟の見え

水澄みて鯉の口髭見える池

七五三帰りの子らも鯉の池

木の実降る磴を登りて下界見る

小春日の舟はゆったりのんびりと

舟で行く紅葉狩りかな贅沢な

名園の紅葉を舟でゆったりと

水面にも紅鮮やかに冬紅葉

青空を独り占めして鰯雲

鰯雲広がる空に昼の月

石庭の箒目確と冬日差す

紅葉に松の緑のいや増して

夕暮れとなりても美しき冬紅葉

やはらかき冬の日差の石庭に

冬紅葉とはこんなにも真っ赤っ赤

日の差していよいよ真っ赤冬紅葉

新海苔を掻き取る海女の手際かな

冬紅葉には寂しさのありにけり

山頂は滅多矢鱈に石蕗咲いて

笹鳴きを聞きたく野鳥園巡る

ちつちつと一声確か笹鳴ける

寒禽の止みてはっきり笹鳴ける

眉山ではあそこもここも猪の跡

丹念に耕せしごと猪の跡

掘り散らかせる狼藉はきっと猪

山頂はどこ歩きても石蕗の花

太陽に背伸びするかに石蕗咲ける

青空と紅葉の赤と石蕗の黄と

日の差して紅葉の赤の輝きぬ

登り来て紅葉の下に停車する

南国の阿波のもみじは冬紅葉

小春日のふるさとの川ゆったりと

冬日背にふるさとの町見下ろして

一つまた一つ山茶花の咲ける道

山茶花の咲いてここより野鳥園

宮殿やキューガーデンの温室は

温室の中にジャングルありにけり

一年中バナナの実る温室と

人参の町フレームの町となる

雑炊をいただくための鍋料理

もう一度締めの雑炊お代りす

雑炊は別腹と云ひお代りす

ほかほかの焼藷ずらりスーパーに

焼藷はねっとり甘きものが好き

焼藷は金時よりも紅はるか

焼藷の屋台懐かし駅前の

降り立ちし眉山山頂枇杷の花

野生して木立の中に枇杷の花

大方は知らず過ぎ行く枇杷の花

ロンドンでいただく牡蠣のフルコース

ロンドンの生牡蠣ことに旨かりし

生牡蠣はレモンたっぷりかけてより

一斗缶で瀬戸の生牡蠣届く朝

レシピまで添へて生牡蠣送りくれ

蒸し牡蠣の殻のするりと剥がれけり

寝る少し前に湯たんぽ入れて置く

ストーブを囲み話の弾む夜

薪焼べるストーブ今もある暮らし

ストーブの薪積み上げてあるホテル

霜の夜の明けて輝く朝日かな

ボンネット覆ふ霜より払ひけり

きらきらと輝く霜を払ひけり

霜柱わざわざ踏みて登校す

徳島の生牡蠣ですと持ちくれし

牡蠣蒸すに清酒一滴垂らされと

愛宕柿大和柿もと吊るしけり

小春日の開戦の日でありにけり

寄席鍋と云ふはごった煮にはあらず

御歳暮に熊本名産晩白柚

一抱へする晩白柚二つも来

熟すまで待って食べると晩白柚

ざぼん漬け懐かしきかな晩白柚

熟すまで飾っておけと晩白柚

仏前にどかつと供へ晩白柚

クリスマスコンサートにはピアノ弾き

クリスマスコンサートには普段着で

クリスマスコンサートなる発表会

拍手拍手のクリスマスコンサート

寒風に柿吊るしたくなりにけり

寒風に今年二度目の柿吊るす

寒風に逃げ込む竪穴住居かな

子ら走り我は芯まで悴んで

竪穴の住居は冬も温かりし

日差出ても一度巡る冬の園

臘梅の香までさらってゆきし風

日溜りに臘梅の黄のまぶしかり

笹鳴いてゐるかと園を二巡せど

竪穴住居冬の温しと子らも云ふ

青空と臘梅の黄と冬紅葉

縄文の昔を今に冬日差す

ダンボール橇に枯芝降りてくる

縄文の史跡を抱へ山眠る

縄文の里の山茶花瑞々し

史跡見て山茶花も見て古墳へと

青空に臘梅金を散らし咲く

様々な古墳を抱へ山眠る

御歳暮に蘭を一鉢贈られて

御歳暮に届く黄色い蘭の花

2023年11月

目の前で生搾りしてモンブラン

生搾りして栗の香のモンブラン

天辺に始まってゐる松手入

十年の先を見越して松手入

一木に五時間かけて松手入

時々は離れて見上げ松手入

松手入上から下へ少しづつ

松手入終り青空近づきぬ

満開の金木犀を刈り込みぬ

刈り込まれ金木犀の花あらは

さっさっと金木犀を刈る庭師

曲線を描き金木犀を刈る

ちょっとだけ秋のあれどももう冬に

錦秋の過ぎ去ってゆく早さかな

紅葉の美しき文学書道館

紅葉もまた美しき花水木

咲き残る萩に吹く風やはらかく

咲き残る萩をどなたも見てをらず

見事なるほどの歪や榠樝の実

柿丸く榠樝は歪なるままに

鈴生りのままに残ってをりし柿

讃岐路はあそこもここも柿実り

敗荷田抜けて無人の駅に着き

ここもまた無人駅かな秋寒し

まんまるの大きな月の敗荷に

敗荷の水面に月の光かな

柴漬で捕りし鰻は時価となる

柴漬を揚げれば鰻出て来たる

柴漬を作るに家伝あると云ふ

四万十に柴漬漁をして生きる

四万十に移住して来て柴漬ける

柴漬を引き揚ぐ時の重さかな

柴漬は今日も小魚ばかりかな

阿波産と野沢菜漬けの野沢菜は

大桶に大根漬けし日の遠く

河原にて拾って来たる茎の石

馴染むほど丸くなりをり茎の石

年毎にか細くなりぬ木の葉髪

髪梳けば悲しき別れ木の葉髪

櫛の歯にしかと残りて木の葉髪

どさつと音して朴の葉の落ちにけり

一つまた一つと朴の葉を落とす

朴葉味噌懐かしきかな朴落葉

神社には行かずに七五三祝ふ

七五三セットありけり写真屋に

日本は平和な国よ七五三

この子らに未来を託し七五三

江戸前の新海苔あまりにも高価

前払せねば江戸前新海苔は

江戸前の新海苔子らにお裾分け

江戸前のこの新海苔のこの香り

おむすびはこの新海苔でなければと

海守る金比羅さんもお立ちかな

灯明を消す間も無くて神お立ち

茶の花の咲きてここより庫裏となる

生垣の茶の花二つ三つと咲く

茶の花の一つ咲きゐる寺の裏

茶の花の白のまぶしき日差かな

切干を旨しと思ふ齢かな

切干の簾の如く吊るされて

切干は常備されゐる保存食

ポルトガル大使迎えて秋の宴

三番叟より始まりし秋の宴

吊橋を渡れば萩の残り咲く

残り咲きなほも鮮やか萩の花

群れ咲けど何故か淋しき赤のまま

遠き日の遠き思い出赤のまま

山の湯の宿は黄葉に囲まれて

染め上げし黄葉の美しき大樹かな

山道に赤の鈴生り実南天

一つづつ粒の光りて実南天

キャンピングカーどっと来る秋の山

吊橋を渡り黄葉を見回して

コスモスの畑一枚埋め尽くし

夕日差しコスモスの色鮮やかに

遅速無く咲き満つ菊の美しさ

一株の菊がこんなに花つけて

それぞれの菊それぞれに美しく

菊咲けるチームワークのある如く

品評会あすに控へし菊の花

咲き揃ふこと難しき菊の花

美しき菊衣かな佳き香り

それぞれに視線の合はず菊人形

菊花展小学生の作品も

市役所の前で今年も菊花展

盆栽の菊それぞれにある形

盆栽の菊に貫禄ありにけり

我が庭に咲きてまぶしき石蕗の花

石蕗の花咲きて明るき庭となり

ひっそりと八手の花の咲いてをり

近く見る八手の花の美しさ

ショッピングモールは早もクリスマス

クリスマスツリーまぶしく輝きて

戦争はもう止めましょう冬に入る

冬に入るウクライナまたガザのこと

ネタニヤフプーチンやめろ冬に入る

鱈を買ひ今日の献立湯豆腐と

湯豆腐は木綿豆腐と決めて買ふ

湯豆腐は旨し昆布も残さずに

初雪のニュース見ながら湯豆腐を

床暖を入れて湯豆腐いただきぬ

三ケ日の蜜柑昔の上司より

懐かしき三ケ日よりの蜜柑かな

蜜柑狩りせし日を思ひ出す蜜柑

蜜柑狩りせし上司より蜜柑来る

蜜柑狩りせし三ケ日の蜜柑来る

蜜柑狩る上司も我も若かりし

若き日の遠き思ひ出蜜柑狩り

今年また婦唱夫随で柿吊す

晴れの日の続く日選び柿吊す

今年また同じ所に柿吊す

塩入れて湯通ししたる柿吊す

朝の間に五十の愛宕柿吊す

洗濯の竿に次々柿吊す

屋根のある干場を選び柿吊す

2023年10月

北国の遠き思ひ出吾亦紅

榛名見ゆ木道行けば吾亦紅

群れ咲いてをれど淋しき吾亦紅

そよ風の秋の彼岸でありにけり

ほんたうに秋の彼岸となりにけり

名月の空の青さでありにけり

名月のウクライナにもロシアにも

まんまるは美しきかな月今宵

まんまるの今宵の月の凛として

観月会すすきと団子持ち込みて

献立を眺めてよりの観月会

無花果の天麩羅も出る観月会

観月会窓辺の月を眺めもし

観月会はねて団子をお土産に

観月会はねても月を見てをりぬ

運動会とは青空と万国旗

青空に子らの歓声運動会

一番にテープ切る子や運動会

懸命に走るは楽し運動会

万さんの笑顔が浮かぶ草の花

万さんの声が聞こえる草の花

万さんにその名聞きたし草の花

中世の街に葡萄の実る家

朝顔のローデングルグの街角に

勝沼の葡萄を摘みし日の遠く

黒げらの彫りたる穴の大きさよ

黒げらの彫たる穴の巧みさよ

こげら打つ音の今年もこの森に

叩きゐしこげらのぱっとゐなくなり

無花果の天麩羅もある御献立

無花果は何といっても丸かじり

無花果のローマの廃墟にも実り

無残なる敗荷の野となりにけり

敗荷となりて始まる大仕事

列成してなほも立ちゐる敗荷も

敗荷田突っ切って行く鳴門線

遠き日の母の手白し障子貼り

障子貼る仕上げの霧を吹き付けて

継ぎ接ぎで過ごす今年の障子貼り

機窓より今日初雪の富士を見る

雲の上に白雪の富士浮かびをり

秋空に東京タワーすくと立ち

秋晴れの空に東京タワーかな

宿泊のホテルくっきり秋空に

秋風にひるがえる旗よく見えて

新蕎麦は深大寺でと今年も来

九割蕎麦なる新蕎麦の香りかな

混み合ってゐる新蕎麦の深大寺

新蕎麦の幟がここの老舗にも

参道に蕎麦の花咲く深大寺

蕎麦の花残り咲きても色褪せず

無患子の鈴生りなりし大樹かな

無患子の降る深大寺しんとして

手水桶には黄花コスモスの花

コスモスの手水の水に生き生きと

虚子像と枯野の句碑とむら薄

像の虚子凛としてをり秋風に

コスモスと竜胆の花大鉢に

コスモスは花やぎ竜胆つつましく

こぼれ落つ上にもこぼれ萩の花

門前に紅白の萩しだれ咲き

残りたる花は嫋やか曼珠沙華

残りゐる一つは白い曼珠沙華

錦秋の候や歌舞伎に人の列

歌舞伎見る穴子の鮨を弁当に

結社越へ競ふは楽し夢道の忌

年一度会える句友や夢道の忌

夢道忌に五十人もの句友来て

夢道の忌来れば二番の藍に花

生誕百二十歳の夢道の忌

藍の花供へ夢道の忌を修す

絵日記の朝顔一つなほも咲き

参道の蕎麦の畑に残る花

名刹の参道脇に蕎麦の花

産直の市の零余子の売れてゐず

これなあにと零余子見てをり子も母も

取れとれの零余子の並ぶ市なれど

零余子飯一度作りはしたものの

稲刈れど新藁を見ぬ時世かな

美しき新藁残りゐる緑

新藁を待ちて土俵を作らると

冬支度せねばせねばと日の過ぎて

冬支度まづは体調整へて

住所録整へ置くも冬支度

新札を用意するのも冬支度

予定皆書き出すことも冬用意

里からと一升瓶の柚子酢提げ

いただきし柚子酢を子らに御裾分け

素手で柚子搾る女の手際かな

いただきし柚子悉く手で搾る

駐車場までも金木犀匂ふ

仰ぎ見る金木犀の大樹かな

木犀の朝一番の香りかな

暮れてなほ金木犀の香の甘き

2023年9月

一と月も遅れ我が家の百日紅

枝ぶりの自在我が家の百日紅

紅の色薄き我が家の百日紅

日を受けてまぶしき紅や百日紅

松花堂弁当秋を先取りし

離れにはトルコ桔梗の飾られて

爆発のやうに入道雲の湧き

雲の峰東に西に南にも

競ふかに入道雲と秋雲と

分け合ひて入道雲と秋の雲

熱中症警報続く残暑かな

スーパーブルームーンなる盆の月

スーパーブルームーンてふ盆の月

八月の二度目の望や盆の月

八月は満月二回盆の月

東から西へゆっくり盆の月

人の世を照らしてゆきぬ盆の月

ふるさとの町照らしをり盆の月

日本中どこからも見え盆の月

戦争の無き世を祈り盆の月

世界から眺めてをりぬ盆の月

湯に手足伸ばしてをれば虫すだく

深々と虫の鳴きけり雨の後

灯を消して何もせずゐる夜の秋

灯を消してをれば虫の音近くなる

学校で枝豆作りせし昔

枝豆で球具を買いし日の遠く

田の畦に植ゑて育てし枝豆と

ビールより先に枝豆無くなりし

黒豆の枝豆ですと持ちくれし

淡路行くここもあそこも竹の春

やはらかき明るさここも竹の春

七輪をいそいそと出し秋刀魚焼く

秋刀魚焼く時にだけ出す七輪と

だんだんとお目にかかれぬ秋刀魚かな

秋刀魚焼く煙よく立ちゐし昭和

あれほどの秋刀魚のどこへ行ったのか

愛知よりはるばる酢橘秋刀魚にと

木犀の朝一番の香りかな

更けゆけば木犀の香のより甘く

休耕の田にコスモスの咲ける里

花屋には鉢植されしコスモスも

盆栽苑にもコスモスの鉢植が

歩いても歩いてもコスモスの花

コスモスの花を見てより茶室へと

水澄みて鱏の鰓孔見える川

水澄みて鯉の髭まで見えにけり

露草の小さき古墳に群れて咲く

露草の露をしとどに行く古墳

露草の露の朝日に光る径

旅にあり帰燕の朝に出合ひけり

来合はせし帰燕の朝でありにけり

何回も空を舞ひをり去ぬ燕

鳴き合ひて帰燕の朝の騒がしく

これ程にゐしかと思ふ帰燕かな

友の逝きまた友の逝き秋深し

取れ立ての無花果並ぶ朝の市

当たり外れありても買ひぬ無花果は

菅平高原よりのもろこしと

頂きし日にもろこしを茹で上げる

傘寿なる友の作りしもろこしと

もろこしのお礼に送るさつまいも

藷ならば鳴門金時しか知らず

初物は手掘り鳴門金時は

海砂が一番鳴門金時は

学校で育てし鳴門金時と

岡山の友より葡萄三箱も

頂きし葡萄四方にお裾分け

フルーツの王国らしき葡萄かな

ほとばしる果汁の甘き葡萄かな

皮までも食べられますと言ふ葡萄

シャインマスカットなる名の葡萄皮も食べ

日光に棘無かりけり今日白露

外に出て見たき白露の風であり

障子開け放ち白露の風入れる

心地よき白露の風でありにけり

空青く風心地よき白露の日

来年は米寿の友の葡萄園

黒葡萄育てることが生き甲斐と

紫の極まってゐる黒葡萄

産直の市に出荷を待つ葡萄

出荷日は朝一番に葡萄摘む

まあ食べてみてと葡萄を進められ

日々万歩歩かれ葡萄作らるる

お元気で葡萄作りをなされよと

作り手の書かれて並ぶ葡萄かな

朝一に摘まれし葡萄並ぶ市

たわわなる柿のやうやく色づきて

庭先の柿も実ってをりにけり

絵日記の朝顔一つこぼれ咲き

こぼれ咲きても朝顔の凛として

萩咲いてゐるかと来れば咲いてをり

城垣の紅白の萩咲き初めて

咲き初めし萩に勢のありにけり

人通る度にさ揺れてしだれ萩

白も佳し赤もまた佳し萩の花

紅白の萩に城垣覆はれて

銀杏の生り放題の落ち放題

空襲を受けし銀杏も実をつけて

鈴生りの銀杏見入る人の無く

鈴生りの銀杏枝の垂るるほど

公園の銀杏たわわに実をつけて

いつの間に銀杏こんなにも実り

四方よりすいっちょの声寄せて来る

馬追の声だんだんと近くなる

秋風を浴びて静かに二胡を弾く

二胡を弾く男にやさし秋の風

花壇には撫子の花犇きて

撫子の花には蔭の無かりけり

百歳に励まされゐる敬老日

健やかに過せて嬉し敬老日

子規の忌に根岸の糸瓜ふと思ふ

子規庵を訪ひし日のこと今日子規忌

待ちかねし秋の彼岸の入りであり

ほんたうの秋の彼岸の入りなれと

2023年8月

玄関に胡蝶蘭をと二鉢も

胡蝶蘭並び玄関華やげる

店頭で土用の丑の鰻焼く

休み無く土用の丑の鰻焼く

鉢巻し土用の丑の鰻焼く

汗流し土用の丑の鰻焼く

百匹の土用の丑の鰻焼く

焼き立ての土用の丑の日の鰻

焼けば売れ土用の丑の日の鰻

売り切れて土用の丑の日の鰻

高値かな土用の丑の日の鰻

ショッピングモール風鈴飾りして

風鈴に願ひを込めて吊るしあり

ベランダに出れば早くも秋の蝉

海見ゆるベランダにもう秋の蝉

海峡に波一つ無く秋の蝉

秋の蝉しんしんと鳴き海静か

スーパの店頭苧殻高々と

バーコード付けて苧殻の売られをり

胡蝶蘭しばし眺めて店に入る

胡蝶蘭も一度眺め店を出る

日本に台風二つ秋立つ日

さう言へば蝉も静かや秋立つ日

開け放ち台風一過の風入れる

田風の洗ひ出したる空の青

土色や台風一過の吉野川

海のごと台風一過の吉野川

大の字に寝て秋の蝉を聞く

やはらかき日差となりて秋の蝉

戸締りに出ていきなりの虫の音に

海よりの新涼の風心地よく

新涼に百名店の饂飩屋へ

銭形を見下ろしをれば秋の蝉

海よりの風やはらかく秋の蝉

瀬戸の海波一つ無く爽やかに

爽やかな浜風津田の松原に

根の付いた樒を供花にする墓参

話し掛けつつ弟の墓洗ふ

台風の行方気にしつ阿波踊

少雨なら決行したし阿波踊

ずぶぬれになりても踊るしなやかに

戦争を語らぬ父の終戦日

蝉鳴かず虫ばかり鳴く時化の後

青空の戻りし昼も鳴かぬ蝉

静寂の戻りたる夜の盆の月

父母の顔弟の顔盆の月

伝へ聞く友の訃報や盆の月

逝かれたるは丸顔盆の月

まんまるの笑顔が浮かぶ盆の月

どの家も芙蓉を咲かせゐる在所

蔵のある屋敷大きな白芙蓉

威のあれど猛きにあらず秋の蝉

鳴かねども生きてをりけり秋の蝉

一匹は淋しくないか残る蝉

じっと待ちゐても鳴かない残る蝉

鳴き声のか細かりけり秋の蝉

一鳴きし少し間をおき秋の蝉

明日は今日今日は昨日に走馬灯

走馬灯あっという間に傘寿なる

走馬灯とは何とまあアナログな

晴天は久しぶりなり稲の花

時化後の田に一杯の稲の花

稲の花ほのかに米の匂いする

咲きやうのてんでばらばら稲の花

稲の花咲くに遅速のありにけり

天皇も孫の世代や終戦日

二歳今傘寿となりし終戦日

父の骨還らぬ友の終戦日

胡蝶蘭飾られてゐる道の駅

紅白の対で飾られ胡蝶蘭

風鈴のうだつの町の家毎に

家毎の風鈴の音の涼しさよ

藍商の屋敷大きな扇風機

藍商の屋敷干し藍展示して

店頭に藍の花咲く藍屋敷

少しづつ咲き店頭の藍の花

青筋揚羽来てをり庭の金柑に

金柑の花は五弁の小さき白

値下げされ再値下げされ夏物は

ショッピングモール夏物値下げされ

世の中は値上げ値上げの残暑かな

値上げされ再値上げされ炎暑なほ

2023年7月

辣薤漬け梅酒も仕込みモラエス忌

モラエス忌来れば徳島梅雨明ける

阿波踊稽古の騒きモラエス忌

資料館再開できてモラエス忌

ポルトガルワインは甘しモラエス忌

路地にファド流るリスボンモラエス忌

ケーブルで行きし旧居やモラエス忌

万緑の眉山となればモラエス忌

ほととぎす眉山に鳴けばモラエス忌

カステラと滝の焼餅モラエス忌

復刊す「おヨネとコハル」モラエス忌

買い立ての新車に土砂降り夕立来る

前見えぬ土砂降り夕立いきなりに

夕立来て走れぬ橋の長きこと

夕立のあっけらかんと終はりけり

甚平で行きて無料の美術館

甚平をどうぞとファーストクラスには

甚平はファーストクラスの記念品

淡路まで鱧鍋食べに案内され

大振りの淡路の鱧でありにけり

徳島の鱧に祇園で出合ひたる

軍手して夜釣りの鱧の鉤外す

鱧の口まさに凶器の歯が並ぶ

その上の庄屋屋敷に端居して

端居して隠居となりし気分かな

モラエスの像は西日に向かひ立ち

リスボンは西日のもっともっと先

大西洋染める西日やロカ岬

床張りにリフォーム心地よき跣足

床張りに跣足ひやっといい気持

一日を跣足で過ごす家居かな

道後には跣足に下駄がよく似合ふ

青柿の成り放題の落ち放題

青柿をどのこの家にも見る在所

こんなにも落ちて青柿可愛さう

人住まぬ家に青柿たわわなる

空蝉を恐いと逃げる幼かな

空蝉をブローチにして帰る子も

空蝉となりても風に飛ばされず

水都かなヨットハーバー県庁に

豊葦原瑞穂の國の田を植ゑる

新幹線右も左も青田かな

新幹線青田の中をまっしぐら

鰻池今はソーラーパネル張り

養鰻業減れど鰻は浜松と

浜松に来て旧友と食ぶ鰻

傘寿打ち揃ひ鰻重平らげる

鰻重の鰻大きくたっぷりと

六十年ぶりの母校の緑濃く

母校の木どれも茂りて大緑蔭

玄関の蘇鉄も緑鮮やかに

贈られしプールに今日も水泳部

雨止みて西日明るき神戸港

青竹の茂り緑の淡路島

梅雨霧の鳴門海峡すっぽりと

梅雨明けの報は聞かねど蝉時雨

梅雨明けを宣するごとく蝉時雨

土曜日も日曜日も無し蝉時雨

熱中症警報続き蝉時雨

帰省子にふるさとの鮎馳走する

焼き上げしばかりの鮎を頭から

食べ頃を書きてメロンを贈りくれ

ずっしりと重き夕張メロンなる

メロン来る北海道よりはるばると

善入寺島なる中洲日輪草

太陽にいつも顔向け日輪草

日本一広い中洲の日輪草

向日葵を見んと潜水橋も行き

向日葵の黄色が視野の果てまでも

青空と真白き雲と向日葵と

睡蓮の池より広き園巡る

睡蓮の池に亀ゐてすっぽんも

天然の滝ぞ栗林公園は

滝落ちて我に冷気の心地よく

公園の池から池へ舟遊

外つ国の人に人気や舟遊

鯉の餌の麩を持ちアイスクリームも

群がれる鯉を見つめてゐる日傘

茶店では氷の旗をなびかせて

足取りを軽くさせたる氷の字

夏痩せを期待すれども夏太り

人の死すほどなる暑さ日本に

夜もまたクーラーかけっぱなしにし

噎せ返る暑さがどっと道路より

産直の市に出てゐる蘭の花

蘭の花並ぶ辺りの静もりて

マンゴーをクール便にて贈りくれ

九州の最高級のマンゴーと

完熟しネットに落ちしマンゴーと

夏休み始まり今日は梅雨も明け

梅雨明けて値上げラッシュのいよいよに

梅雨明けてずらりと並ぶ晴れマーク

梅雨明けて旅行案内どっと来る

梅雨明けて心地よきかな朝の風

沖縄のマンゴー届く二箱も

沖縄の太陽浴びたマンゴーと

種もまた立派なるかなマンゴーは

種までもしゃぶりマンゴー大好きと

2023年6月

中華街緑蔭選び歩きけり

遠目にも若葉の美しき中華街

薫風の上からも来る中華街

関帝の廟にも若葉爽やかに

遠目にも泰山木の白い花

整然と泰山木の花の咲く

紫陽花の道は歩いてみたくなる

五分咲きの額紫陽花の勢かな

空港のロビー新茶の幟立つ

誘はれてみたき新茶の香りかな

眉山より眺めん初夏の徳島市

眉山にも枇杷のたわわに実をつけて

我が庭に白百合そっと咲いてゐる

一輪の白百合なれどありがたく

禅林を抜ければ河原雪加鳴く

水清く河原ひろびろ雪加鳴く

何事かあるか雪加の鳴き続け

名刹の裏はひっそり蛇苺

蛇苺真っ赤っ赤なり赤過ぎる

恐る恐る食べてすかすか蛇苺

蛇苺葷酒許さぬ禅林に

萍の固まってゐるひとところ

瑞々し御苑の水の萍は

湧水に緑の美しき萍よ

蜻蛉乗る萍水を突っぱねて

よるべなきものをよるべに糸蜻蛉

湧水を離れられずに糸蜻蛉

湧水を行ったり来たり糸蜻蛉

見渡せば視野の果てまで菱の花

川幅を埋めて咲けり菱の花

健気なる白でありけり菱の花

菱咲いて水路明るくなりにけり

山里の夜は真っ暗火取虫

火取虫捕らんと夜の灯を巡る

かぶと虫くはがた虫も火取虫

こびりつくヘッドライトの火取虫

城山に眉山に枇杷の増えて来し

小粒なる野生の枇杷の鈴生りに

人採らぬ枇杷は小鳥の御馳走に

鈴生りの枇杷の大樹の城山に

浜松の鰻今年も食べに行く

鰻食う約束をして旅程組む

本店の鰻丼をまず予約して

うどん屋の庭に黄色い百合の花

犇きて咲ける黄色い百合の花

御苑へと手ぶらで菖蒲見に行かん

御苑かな塵一つ無き菖蒲園

御苑かな水澄み渡る菖蒲園

御苑かな名札に気品菖蒲園

遅速なく咲かせ御苑の菖蒲園

一斉に咲く美しさ花菖蒲

どれ見ても勢ありけり花菖蒲

株毎に違う品種や菖蒲園

紫は静もる色や花菖蒲

白てふは目立つ色なり花菖蒲

外つ国の人はしゃがんで菖蒲見る

もう一度巡る御苑の菖蒲園

田の隅に一叢残り半夏生草

半夏生草白の輝きをりにけり

雨後の紫陽花の花勢あり

紫陽花の盛り上がりをり雨の後

整然と白を散らして額の花

美容院今日はお休み額の花

球形を保ち鮮やか濃紫陽花

球形の遅速なく咲き濃紫陽花

仙人掌の花を眺めて店に入る

仙人掌の花を眺めて店を出る

我が家にも小振りなれども濃紫陽花

庭先に顔出してをり濃紫陽花

船遊あっと云ふ間に終はりけり

船遊何事も無く終はりけり

遊船の生まれ故郷の街を行く

遊船の吉野川には行けぬ潮

県庁も眉山も指呼に船遊

川の駅へと次々にヨット来る

夏の海来し外つ国の帆船も

遊船に眉山大きく見えて来し

父の日を独りで竿を垂るる父

戦争の今もこの世に花梯梧

世に戦火無き日の来よと花梯梧

咲き残る薔薇に夏日の容赦無く

炎帝よ薔薇が悲鳴を上げてゐる

騒がしき鷺の巣立ちでありにけり

風を待ち風をとらへて巣立つ鷺

2023年5月

遠目にも卯の花らしき白さかな

雨後の卯の花の白際立ちて

鳴子百合その名の通り鳴子つけ

この道のいつもこの時季鳴子百合

人影の無き公園に躑躅咲く

大小の蕾の並び躑躅咲く

竹の葉に滑らぬやうに筍掘る

掘り頃の筍そこにあそこにも

筍の山猪垣のめぐらされ

取り損ねたる筍の背丈超す

花水木咲ける文学書道館

遠目にも白のまぶしく花水木

水木咲き明るき今日のカフェテラス

水木咲き葉のさ緑の瑞々し

煉瓦塀覆ひ尽して蔦若葉

青柳そよぐ川辺に二人して

両岸に若葉の柳並木かな

若楓美しき倉敷美観地区

風薫る倉敷の町舟で行く

洋館に真っ赤や躑躅群れ咲いて

犇きて咲ける躑躅の白であり

海渡る橋に五月の空青く

新緑の山より下界眺めもし

鶯を背に淡路までよく見えて

連休を家族で初夏の海岸で

松林キャンプの人もちらほらと

みどりの日白鷺城を木陰より

白鷺城五月の晴に真白かな

初夏の日に城の白さの極まりぬ

大手門前にビールと穴子めし

薫風に歌舞伎の幟立つお城

緑陰で登城されたる人を待つ

眠る子と大樹の陰にみどりの日

天守閣見ゆるお濠で舟遊び

遊船の客の笠なる夏帽子

海峡の大橋越えて燕来る

大橋の花壇に躑躅金盞花

これからといふとき何ぞ竹の秋

赤茶けてみすぼらしきは竹の秋

上司より遠州森の新茶来る

六十年昔の上司より新茶

沖縄の友より海雲一斗缶で

沖縄の海雲美味しと御裾分け

返されて返されて堰上る鮎

鮎来れば鷺来て鵜来て鶚来る

堰を跳ぶでんぐり返りゐる鮎も

待ち伏せし上り来る鮎食らふ鷺

午後からはもっと上ると鮎を待つ

鮎上る一二三と続く堰

鮎番の堰を遡上の数しかと

鮎番の大きものから上るてふ

大方は堰跳び損ねゐる稚鮎

弾かれて弾かれて堰落つる鮎

堰の水弾き飛ばして上る鮎

堰上る鮎に二の堰三の堰

堰の水背面跳びで越ゆる鮎

植ゑられし藍にやさしき雨の降る

ひろびろと藍植ゑてあり裏にまで

植ゑられし藍の葉雨に美しく

仙人掌に花や傘寿を祝ふかに

仙人掌のぱっと花咲き今日傘寿

仙人掌のこんなにも咲く朝となり

仙人掌の花のこんなに美しく

日盛りにあれど生き生き薔薇の花

朝刊に出し薔薇園に人の列

園長の今年の薔薇は上出来と

白薔薇の午後となりても凛として

白といふ美しき色薔薇の花

巡り見てやっぱり赤よ薔薇の花

三百種千株の薔薇咲き競ふ

やすらぎの常盤忍の若葉かな

若葉出て常盤忍となりにけり

ひろびろと青田青田や土佐広し

すぐそこに岩石蘭と聞くからは

群生の岩石蘭を仰ぎもし

あやめ咲く植物園の水盤に

植物園中の野草に初夏の花

名も知らぬ野草に美しき初夏の花

土佐に来て五月の雨の冷たさを

八金の五月の雨は冷たかろと

新緑の園にしとしと雨が降る

歩いても歩いても万緑の園

目の痛きほどの新緑高知城

民権の土佐の緑の瑞々し

退助の像に木蔭を花樗

晩柑の後味涼し風涼し

朝市の雪餅草の八百円

朝市に若葉の野草並ぶ土佐

草草に初夏の花咲く土佐の市

鈍行で阿波の若葉の町々を

各停で初夏の徳島本線を

ここもまた無人駅かな草茂る

鈍行で初夏の町見るゆっくりと

区画整理できぬ土地にも田植して

車窓から見上げるほどの花樗

この里はどこの家にも柿若葉

吉野川平野ひろびろ田を植ゑて

大方は歪泰山木の花

壊れたるやうに泰山木の散る

花つけし泰山木も土佐の市

目の前で焼いて叩きに初鰹

叩き好し刺身また好し初鰹

鉢巻をこじゃんと結び初鰹

横丁は朝からビール初鰹

八金のてきぱきと売る初鰹

鶯を聞きほととぎす鳴くを待つ

ほととぎす待てど鶯鳴くばかり

待ちかねしほととぎす聞く続けざま

ほととぎす鳴けば次々次々に

日の陰りいよいよ鳴けるほととぎす

ほととぎす聞くことができ山降りる

山頂の燕は高く高く飛ぶ

2023年4月

川沿ひの桜並木に店も出て

満開の桜が川の両岸に

咲き満てるさくら祭りの桜かな

出し物も揃へてさくら祭りかな

桜見てフラダンスも見る祭り

釣り堀もあるてふさくら祭かな

舟下りしながら桜眺めもし

舟からのお花見子供にも人気

順番を待って乗り込む花見舟

お花見の舟にも救命胴衣して

滝のごとしだれてしだれ桜かな

青空を透かししだるる桜かな

地に触るるほどにしだるる桜かな

やはらかにしだれしだるる桜かな

しなやかにしだれしだるる桜かな

満開のしだれ桜のあでやかさ

とりどりの色美しき糸桜

里山にしだれ桜の咲き競ふ

青空にしだれ桜のくつきりと

日本一しだれ桜を咲かさうと

花の下結婚式の前撮りも

お花見に丸太の椅子も用意され

並ぶとは美しきことチューリプ

オランダは自転車の国チューリップ

オランダの風車懐かしチューリップ

チューリップ何色が好き赤が好き

白もまた美しき色チューリップ

オランダは山を見ぬ国チューリップ

バブル生みたるはこの花チューリップ

チューリップ運河を訪ひし日の遠く

デ・レイケの堰見ゆ岸辺チューリップ

その先に風車も見えてチューリップ

デ・レイケの堰ある川辺桜散る

チューリップ畑の中に散る桜

六十種五万本てふチューリップ

ログハウス風車も出来てチューリップ

カタカナの名札ばかりやチューリップ

これがまあてふものもありチューリップ

年毎に増える新種やチューリップ

家族皆来て楽しめるチューリップ

チューリップ畑に子らは走り出す

年配の夫婦は椅子にチューリップ

私らが植ゑたと木札チューリップ

畝毎に競ひて咲けるチューリップ

原色といふ美しさチューリップ

一巡しも一度赤いチューリップ

今日よりの牡丹祭りの牡丹見る

我独り初日の牡丹見て回る

初日より咲き満ちてゐる牡丹かな

住職も今年の牡丹早咲きと

雨の日の牡丹は午後も生き生きと

大輪の牡丹の凛とあでやかに

百五十種四百五十株の牡丹かな

牡丹咲き塵一つ無き朝の寺

晴れの日の牡丹の金の蕊光る

日の差してまぶしかりけり白牡丹

遠目にも際立ちをりし白牡丹

赤い牡丹白い牡丹と見て回る

庫裏の庭までも牡丹の続く寺

犇きて咲ける牡丹に犇ける

戻り来て同じ牡丹に見入りをり

ちらと見し赤い牡丹をしかと見る

とりどりの牡丹それぞれ美しく

百種三百五十株なる牡丹

三姉妹皆で育てし芝桜

総理より表彰されし芝桜

煙草畑今一面の芝桜

何たって除草除草よ芝桜

仰ぎ見て眼下にも見て芝桜

青空の戸口にまでも芝桜

日当りて影の無かりし芝桜

芝桜まつりはこれでお仕舞と

傘寿なほ好きで育てる芝桜

芝桜育てることが生き甲斐と

一匹で一万円を超す鰆

一匹で一万円の桜鯛

鳴門では一網打尽桜鯛

苗代は作らず苗は農協で

棚田へと田水を引くは竹の樋

水張れば棚田に早も水馬

水を張る棚田歩けば蟇蛙

猫の額ほどの棚田に代搔機

名人の技や棚田の代掻機

竹の樋走る田水や千枚田

百選の棚田の代を掻き始む

百選の棚田に水を引き始む

河鹿聞きたくて鶯聞くことに

河鹿鳴く谷への道の著莪の花

初めての雪持草と出合へもし

初日より咲き満ちてをり藤まつり

藤まつり始まり香り満つ寺苑

ローアングルで撮れと立札藤の花

二百年生き来し藤の瑞々し

百尺の棚一木の藤の花

紫よ白よと咲ける藤の花

満開もこれからも好し藤の花

甘き香の噎せ返るほど藤の花

蜜蜂も熊蜂も来て藤の花

藤咲いて賑やかなりし山の寺

藤咲いて寺に人来る蜂も来る

旅やめて余生を池に残る鴨

広大な池に二匹の残る鴨

一団で残りをりたる川の鴨

どれ見ても太り過ぎかも残る鴨

2023年3月

下萌や大地は命の母である

高齢者ばかりとなりし梅の里

雛人形三万体のひな祭り

ビッグひな祭り今年三十五回目と

ひな祭り見んと三万人が来る

恐竜の町美女と野獣のひな祭り

人形の浄瑠璃も見て雛も見て

品の良き笑みたたえゐる古雛

選ばれし三万体の雛飾る

三万の雛を箱から出し飾る

丁寧に保ちて来たる雛飾る

子供らも混じり総出で雛飾る

とりどりの光彩浴びし雛の顔

ウクライナから来し人も雛を見に

お茶席も設へビッグひな祭り

お抹茶を頂きながら雛を見る

泣き上戸一人をりけり仕丁雛

お澄ましの雛より仕丁雛が好き

見るほどに味あるお顔仕丁雛

仕丁雛ばかりを眺め雛巡る

どの顔も面白かりし仕丁雛

仕丁雛喜怒哀楽のお顔かな

表情の豊かなりけり仕丁雛

遠山に雪の残れど水温む

町川に小魚群れて水温む

水温む川に何やら動くもの

ゆつたりと鯉の泳ぎて水温む

斜交ひに斬って次々挿木する

挿木してこの薔薇園を作りしと

挿木して蜂須賀桜増やせしと

世に遠くゐることに慣れ春炬燵

出かけねばとは思ひつつ春炬燵

春炬燵とは居候かも知れず

仕舞はねばとは思ひつつ春炬燵

山椒の芽一つ含みて味見する

芽山椒のこの美しき緑かな

山椒の芽噛み締めながら山下りる

蛍のために作りし蜷の川

蛍に会社で作る蜷の川

蜷の川社員総出で作り出す

谷の水引けば水路が蜷の川

作りたる川に立派な蜷の道

爆発のやうな茎立ちアスパラは

芥子菜は茎立ち気味が旨かりき

茎立てるものも混じりて朝の市

鮊子のちりめん探し探しても

紀の海へ鮊子船の一筋に

茹で立ての鮊子どつと並ぶ店

茹でられて折れて曲がりし鮊子よ

春泥を踏んで行かねば行けぬ家

春泥をわざわざ踏んで下校の子

春泥を付けて帰る子元気な子

いそいそと四年振りなるお花見に

川面まで赤く蜂須賀桜咲く

咲き満ちて赤き蜂須賀桜かな

お花見のできる平和のありがたく

花嫁も花婿も来るお花見に

朱に染めて蜂須賀桜咲き満てる

青空に赤き蜂須賀桜かな

船からも水の都のお花見は

早々と咲きて蜂須賀桜かな

早咲きの桜に小鳥鈴生りに

早咲きの桜に人も鳥も来て

母樹となる蜂須賀桜聳え立ち

蜂須賀の殿の愛せしこの桜

蜂須賀の世をさながらの桜かな

戦災も生き抜きて来し桜咲く

この桜見んと来る人絶え間なく

四方から仰ぎて眺むこの桜

この時季は昨日も今日もよもぎ餅

五割引なれどふくよかよもぎ餅

この香りこの香りとてよもぎ餅

粒餡の手作りが好きよもぎ餅

日の経てば炙りても好しよもぎ餅

よもぎ餅一品だけで商へる

幟立てよもぎ餅売る札所前

特選句取りし草餅今日も買ふ

花冷えの雨に立つ鷺身じろがず

降る雨に梅の新芽の勇み立つ

ずぶ濡れの恋の猫かなとぼとぼと

花咲けど人来ぬ雨の日曜日

城中の桜を一つづつ巡る

濠の上までも迫り出し咲く桜

濠にまでしだれ咲き満つ桜かな

満開の桜を雨に独り占め

城山の裾に群れ咲き著莪の花

著莪咲いて城山の道明るかり

落椿敷き詰め椿咲き続く

城山のあちらこちらに落椿

どれも皆落ちしばかりの椿かと

とりどりの桜の色でありにけり

美しき若葉をつけしこの桜

垂るるほど犇めき咲ける桜かな

雨の日のしだれ桜のしつとりと

ほんのりと紅差すしだれ桜かな

花冷えの城山巡り花巡る

咲き満ちてゐてもお花見できぬ雨

雨の日の桜を独り見て歩く

ゆつくりと花見る雨の日曜日

日本の野球に見惚れ桜見る

お花見の平和な日本いつまでも

2023年2月

大寒にパンジーの咲くレストラン

大寒にアフリカよりの飾り買ふ

新品の急須が春の襤褸市に

襤褸市に新品の出る初春かな

初春の市で常滑急須買ふ

鹿児島は雪美しき朝ですと

鹿児島の山に積雪ありと云ふ

水彩画展を目指すと初便り

薩摩より水彩画添へ初便り

水彩の絵の美しき初便り

我が庭に今年も嬉し蕗の薹

三つばかり蕗の薹摘み酢味噌和へ

蕗の薹摘めば香りの広がりぬ

蕗の薹摘めば滴る滴かな

蕗の薹この美しき緑かな

天麩羅は酢味噌和へはと蕗の薹

我が庭に春が来てをり蕗の薹

若返りますよと言はれ蕗の薹

苦さこそこの苦さこそ蕗の薹

畑に水張れば来てをり初鴨が

初鴨のゴルフ場の池にまで

ごうごうと雪解の水の走りをり

岩削る雪解の水の白さかな

越後かな雪解水とはほとばしる

旨さうであれど飲むなと雪解水

コンビニに売る節分の恵方巻

節分の恵方巻もう半額に

下萌の土ふっくらと盛り上がり

下萌の休耕田に隙間なく

節分の鬼は園長逃げ回る

節分の鬼に泣き出す子等もゐて

立春に搾り出されし新酒買ふ

蔵元で搾り立てなる新酒買ふ

立春の朝搾りたる酒甘し

その朝にできし酒飲む春立つ日

今朝できし新酒いただく春立つ日

立春の明るき峠越えて行く

立春の光まぶしき瀬戸の海

下萌の土掘り上げてゐる土竜

立春の四国三郎煌めける

出来立ての土竜の土に春日差す

臘梅の屑一つ無き朝の磴

磴下るほどに臘梅匂ひ来る

満作の下界に春を告げるかに

満作の花はもじゃもじゃなりしかな

梅咲いてゐるかと来れば咲いてをり

梅咲いて子の駆け回る日曜日

梅咲いて団欒の輪の広がりぬ

一輪の冬薔薇残る薔薇園に

噴水に春の日差の柔らかく

噴水に虹出る春の日差かな

ひろびろと寺領の畑を焼いてをり

焼畑の中なる備中国分寺

五重塔聳える寺の畑を焼く

猫柳見てより山の札所へと

撫でてみるものの一つに猫柳

猫柳探せば今日も水際に

無造作に生けて絵になる猫柳

鶯を丸太の椅子に待ちて聞く

鳴き競ふかに鶯の左右から

鶯の谷渡りなるアリアかな

鶯を飽きるほど聞き山下りる

目の前の梅に鶯来て鳴ける

目の前に梅に鶯なりしかな

箥薐草一と日採らねば伸び過ぎて

根の赤きところが旨し箥薐草

江戸前の海苔前金で買ふことに

江戸前の海苔の香りでありにけり

江戸前の海苔なる艶でありにけり

ひろびろと東京湾の海苔の篊

富士見える東京湾の海苔の篊

下萌えの土ほかほかとしてをりぬ

捨石をひっくり返し下萌える

梅咲いて今日弟の七回忌

日脚伸ぶ今日も旅行の案内が

飾られませんかと届く古雛

飾りしは一度切りてふ古雛

古雛なれどお顔の若々し

色白で見目麗しき古雛

爺婆となりて初めて雛飾る

雪洞を灯せば雛のかしこまる

雪洞を灯してこその雛飾

咲いたよと梅の名所の句友より

耳元に来られて梅を見に来よと

四分咲きの見頃の梅を見に来よと

見頃なる名所の梅を見て見たし

句碑の辺に芹も薺も蘿蔔も

句碑を守る紅白の梅揃ひ咲き

藁苞にかしこまりゐる寒牡丹

黄花亜麻咲かせ句碑守る人の春

句碑囲むやうに今年も福寿草

草萌る土踏み締めて句碑巡る

句碑の辺の土やはらかく繁縷萌ゆ

黄花亜麻咲く早春の日溜りに

藁苞の小さきに寒牡丹二つ

見廻せば蕾あまたや寒椿

明日は咲きそうな蕾も寒椿

2023年1月

齢毎に過ぎゆく早さクリスマス

一年の早過ぎにけりクリスマス

一年のかくも短しクリスマス

白夜なる北欧をふとクリスマス

クリスマスサンタになりし日の遠く

太っちょのサンタと吾子に言はれし日

美しき雪の帽子や花八手

雪被り赤の極まる実南天

百六年振りの大雪徳島市

徳島に雪雪雪の一と日かな

飛び出して雪玉作る姉弟

一日で消えて仕舞ひし阿波の雪

見るたびに艶の出て来し吊し柿

晒すほど曝されるほど吊し柿

大振りや産直市の門松は

手作りの門松立てて竹の里

店頭のミニ門松のよく売れて

小さくとも門松らしき勢あり

葉牡丹の渦に見惚れてをりにけり

葉牡丹の渦に勢のありにけり

閑話には空耳となるこつごもり

あと一日ある嬉しさのこつごもり

孫らも来おおつごもりのうどんすき

一番に起きて暦を新しく

一番に起きて若水供へもし

子と嫁と孫に囲まれお正月

子の洗ひくれたる車初乗す

初乗はビーチホテルへ家族らと

十六人家族揃ひて新年会

お正月家族全員健康で

初暦めくりて虚子の句を吟ず

初暦めくり句友の句を探す

初暦めくり我が句を確める

初暦めくり傘寿の日をめくる

真つ新な明日の並ぶ初暦

春著にもマスク外せぬ年なりし

幾度も鏡見てゐる春著の子

走るなと皆に言はれて春著の子

解説の元横綱も春著著て

凍蝶に老いの厳しさ見てをりぬ

凍蝶に動く力の残りをり

死んでゐるかの凍蝶の飛び立ちぬ

大方はレンタル春著なるさうな

福引の外れはティシュ山に積み

福引は子供の運に任すべし

福引で鍋をもらひし昭和かな

福引の一等賞を子が当てし

寒灯の藁家を訪へばカレーの香

寒灯を満艦飾に客を待つ

奥宮の寒灯昼も灯されて

健康に生きよと叱咤する賀状

綿綿と近況綴る賀状も来

今年までてふ賀状多くなり

メールより賀状が嬉し温かし

繰り返し読める楽しさ年賀状

今年こそ会おうと賀状アテネより

水仙の紀伊水道に傾れ落つ

傾れ咲く灘黒岩の水仙は

門松の立つ料亭で初句会

一番に来て門松の門くぐる

門松の脇に正月飾りかな

葉牡丹を芯に正月飾りして

屋敷まで正月飾り続く道

小さくとも正月飾り勢あり

老松に寄り添ふように実万両

日の差して赤の極まる実万両

庭園の岩抱けるかに実万両

遠目にも赤美しき実万両

庭園の箒目にある淑気かな

箒目の一際美しき小正月

山茶花のこぼれては咲き続く庭

山茶花を散らしてゆきし昨夜の雨

寒鯉の固まり合ひて動かざる

ぢつと見てをれば寒鯉動き出す

寒鯉の一つ動けば三つ四つと

寒鯉の水を蹴立てて走り出す

庭園を見てより新年句会へと

小正月ですと繭玉飾られて

繭玉に触れて大玄関に入る

雑煮も出女正月の日の句会

はじかみを添へて鰆の菜種焼き

数の子もごまめ雑煮も出る句会

小正月どなたも健啖なりしかな