徳島の雪のニュースが全国に
南国の阿波で凍死のニュースとは
大根の白のまぶしき日差かな
日向ぼこして野の市の中にゐる
野の市に冬の日差のありがたく
新米のおまけはジャンボ宝籤
持て余しゐる大根と蕪買ひ
冬の日に財布の紐もゆるみけり
寒ゆるみ財布もゆるむ朝の市
日の差してゆるむ財布や冬の市
大雪で孤立のニュース阿波で聞く
大雪の限界集落直撃す
大雪の予報風花舞ふばかり
低気圧三つ居座り冬荒るる
風邪の子を預かり一と日過ぎにけり
抱いて知る風邪の子かくも熱きかな
眠りたる風邪の子の頬真っ赤なる
眠りても風邪の子の息荒々し
わが胸に抱きついてくる風邪の子よ
ストーブを一日つけて家居かな
ストーブや灯油の値下げありがたく
ストーブの部屋で吹雪のニュース聞く
赤々と燃えるストーブ余生また
寒風の仕上げてゆきし干菜かな
遠き日の祖母思い出す干菜かな
干からびて食べ物らしくなき干菜
干からびて紐のやうなる干菜かな
豪雪のニュース小春の阿波にゐて
起きて知る床暖房のありがたさ
クリスマスどのフロアにもゐるサンタ
メルヘンの世界をここにクリスマス
北欧の夜の長さよクリスマス
トナカイに注意の国のクリスマス
クリスマスサンタはショートケーキにも
灯を消してローソク灯しクリスマス
ほの暗き中世の町クリスマス
新年へ家も体もリフォームし
冬晴や術後の痛み和らぎて
信濃路は林檎畑の天までも
天に地に林檎畑や信濃路は
街路にも林檎の実る信濃かな
甘かりし信濃スイーツなる林檎
道の駅ここも林檎を山と盛り
渦の上に螺旋を描き鷹柱
傾けばたちまち崩れ鷹柱
予報にはなき雨寒し神の旅
大山に雪の予報や神の旅
穏やかな立冬の日となりにけり
知事賞の菊に勢のありにけり
立ち菊の大輪なれば葉も厚く
小さきほど強き香りや菊の花
嵯峨菊の心細げに咲きゐたる
日の差せば菊に彩り蘇る
盆の菊大樹の如く林立す
時雨来て急ぎ一巡陶器市
時雨来て市の陶器の濡れ放題
客疎ら時雨の中の陶器市
短日や陶器の市も早仕舞
そこにゐし鴨のあんなに遠くまで
冬の蝶とはこんなにも小さきかな
川幅を満たし冬日の煌めける
遠山は冬霞かな濃く淡く
藻屑蟹すっぽんも捕れ冬の川
鴨去れば空より鴨や鴨の川
鴨の陣ありしあたりに鳰の陣
小春日の障子明かりの家居かな
爺婆に高き石段七五三
三代の家族揃ひて七五三
幼には短きがよし千歳飴
千歳飴抱へて帰る幼かな
走り来て抱かれて帰る七五三
冬めくといふはいきなり知らぬ間に
冬めくと背ナに感じる齢かな
誰からも阿波の小春を愛でられて
客迎へうれしき阿波の小春かな
川までもやさしき阿波の小春かな
大会に阿波の小春を賜りぬ
江戸前の新海苔の香でありにけり
なかんづく江戸前の新海苔が好き
江戸前の新海苔ですと送りくれ
吉野川乗っ取りたるか海苔の篊
河口まで十重に二十重に海苔の篊
東京湾狭しとばかり海苔の篊
大綿に羽根あるを知る角度かな
大綿のいきなり浮かびさっと消ゆ
連凧をまづ揚げ風の向きを知る
大凧を揚げきる風のなき日和
小凧にはよき風なれど大凧は
我こそと凧揚げ自慢集ひ来て
凧揚の好きな漢がこんなにも
カメラマン遠退けてより凧揚げる
大凧の尾の荒縄でありにけり
凧揚げる航空力学語りつつ
お土産に手作りの凧用意して
これ見よと印半纏凧揚げる
大凧の泰然として昇りゆく
風を読み呼吸を合はせ凧揚げる
指揮を執る一人に合はせ凧揚げる
小春日の鳴門は静か潮青く
茶の花の千代田区日比谷公園に
絶海の島の校門カンナ燃ゆ
休日の毎に台風来る日和
夢道忌や鮒を釣りたる日の遠く
夢道忌や鮒よく釣れし日の遠く
夢道忌や釣り損ねたる鮒のこと
夢道忌や逃がしたる鮒大きくて
一木で棚埋め尽くしたる葡萄
店頭の棚の葡萄の良く茂り
天に地に葡萄の棚の伸びる町
ワイナリー巡り葡萄の棚も見て
新酒汲む葡萄の香り愛でながら
立宗を宣言せし地初紅葉
水澄めり群れ出る鯛のくっきりと
秋晴や灯台高し野島崎
房総の南端巡り秋惜しむ
門くぐり入れば静かや女郎花
庭隅に秋明菊の花明かり
身構えてゐし台風のあっけなく
台風のあっけらかんと行きし朝
何事もなく台風の行きにけり
台風の過ぎたる朝の肌寒く
台風の掃き清めたる空の青
韋駄天のごと台風の走り抜け
青空へ凛と立ちたり秋の薔薇
城山の裏は日陰や石蕗の花
秋空へリンカーンてふ薔薇の赤
マロニエの葉に透く秋日やはらかく
マロニエの葉音清かに秋澄めり
はやばやと弁当広げ運動会
やはらかき秋日なれども些と暑く
見上げれば右に左に鴨の竿
崩れてもすぐ立て直し鴨の竿
大歩危の淵は藍色水の秋
行く秋や大歩危峡に舟下り
秘境かな紅葉早しかずら橋
かずら橋渡り紅葉の谷渡る
落人の憩ひし滝の水澄みて
瀬戸の海波一つなき小春かな
山の上のホテルに冬日暖かく
菊着せる菊師は遠く豊後より
菊人形凛々しき下絵ありにけり
手にしたる下絵見ながら菊着せる
まづ背ナに水口作り菊着せる
菊人形固き蕾を選び着せ
青石の磴掃き清め里祭
里祭鯛を祀りて始まりぬ
雲一つなき空の下里祭
レバノン杉なるは松なり新松子
カッパドキアレバノン杉に新松子
夕焼けやレバノン杉に新松子
大きかりレバノン杉の新松子
日の入りの早き奥祖谷肌寒し
人住まぬ空家の増えて肌寒し
午前五時届く朝刊肌寒し
天辺に始まってゐる松手入
手入せし松にはなくて新松子
松手入とはむしり取りむしり取り
鋏より手でする松の手入かな
松手入済みて青空近くなる
白壁に映える緑や松手入
松手入済みて緑の瑞々し
塵一つ残さず終はり松手入
松手入庭師は軽き方がよい
遠き日の弁天島の浅蜊狩
目に浮かぶ弁天島の花火かな
茹で立ての玉蜀黍の甘さかな
取れ立ての玉蜀黍を送りくれ
取れたての玉蜀黍を即茹でる
菅平高原よりのもろこしと
梨もぎの帰りに梨を届けくれ
梨の皮剥けば滴る滴かな
茹で上げしばかりの栗の柔らかく
包丁で栗の皮剥く手際よく
剥かれたる栗をいただく一口で
ドライブインにも山盛りの栗並ぶ
虫食いの栗一つなく丸々と
落鮎を待ちゐる釣師動かざる
落鮎を釣るとは待ちに待てること
青楓抜け来る風の涼しさよ
禅林に蚊遣香持ち来られたる
ありがたき蚊遣香かな四阿に
菩提子を実らせ阿波の法隆寺
木豇豆の大樹の実る寺の秋
禅林の裏山よりの鵙高音
蝉の声退けるかに鵙鳴けり
鳴く間合次第に長く秋の蝉
リフォームの終はれば秋となってをり
目の下に小さき江の島秋高し
雲の間に黒々とあり秋の富士
セントレアその真上行く秋の旅
行く秋を惜しみ旅からまた旅へ
山合に実る稲田の明るさよ
鶏頭や木曽は山国妻籠宿
格子まで朝顔咲かせ妻籠宿
コスモスを手桶に活けて妻籠宿
街道の路地に明るき葉鶏頭
朝顔に乗りたる露のまぶしさよ
店頭に活けてまぶしき秋桜
石庭の砂にやさしき秋の雨
百日紅咲き継ぐ山の湯宿かな
秋晴や花も輝く記念館
木犀の香の降りてくる坂の道
夜食とは即席麺の日の遠く
記念館花野の先の丘の上
台風の連れてきし雨降り止まず
晴天の台風一過とはならず
蒸し暑さ残し台風行きにけり
台風の後に台風雨連れて
台風の予兆の雨の降り止まず
濯ぎもの乾く暇なく台風来
台風の見舞地球の裏からも
台風の四国目指して次々に
台風の晴間に長崎原爆忌
雲間より明るき日差し原爆忌
こちら冬とありし暑中見舞来る
真冬なる国より暑中見舞かな
台風の目の中にゐる静寂かな
台風の去るを待ちかね蝉時雨
台風の後の青空赤蜻蛉
二拍子で静から動へ阿波踊
動もよし静もまたよし阿波踊
気風よき男と女阿波踊
静かなることも女の阿波踊
川よりの夜風涼しき阿波踊
心地よき風吹き抜けて阿波踊
町中に俄か舞台や阿波踊
殿さまも先駆け踊る阿波踊
亡き人を呼び寄せ津田の盆踊
精霊を呼び寄せ津田の盆踊
残されし子を背に津田の盆踊
精霊を呼び寄す声や盆踊
よしこのの声透き通る盆踊
宴はね虫の宴の始まりし
窓開けて風呂に入れば虫時雨
吹かれ来し蝉の骸の軽さかな
流星や神話の島の午前二時
流星を共に見し人今は亡く
斜交ひに斜交ひに星流る夜
南風や漁師は船を引き返し
南風の吹く日は窓を閉めておく
南風や南半球今真冬
南風やじめつく肌のべとべとに
地を這ひて咲く朝顔の小振りなる
行く日々を取り戻すかに蝉時雨
殿は法師蝉なる蝉時雨
蝉時雨帰りの道の法師蝉
束の間の休みもなしに蝉時雨
臨終へ命の限り蝉時雨
急かされて急き立てられて蝉時雨
土左衛門祀りし昔地蔵盆
地蔵会や子らの姿はなけれども
地蔵盆酒もビールも祀られて
をぢさんとをばさんでする地蔵盆
渡し場の跡なる碑文地蔵盆
花野来てクラーク像の丘に立つ
海へ落つ北の大地の花野かな
丘越えて花野の道のまっしぐら
大花野詠みたる人の今は亡く
陸果つる東尋坊の鉦叩
断崖に昼の闇あり鉦叩
静けさをいよいよ深め鉦叩
若葉萌ゆ浜松城は出世城
若き日の家康の城新樹晴
城内は森の公園若楓
木の橋の架かる庭園風涼し
城の森意外に深し木下闇
天守門新調の城風涼し
日盛りの新しき門まぶしかり
ヴェネチアのガラスの皿の夏料理
品の良き小鉢と小皿夏料理
真っ白な大皿に盛り夏料理
泣くほどに汗の吹き出す赤子かな
汗かきし日は昼間より風呂に入る
汗をかくたびにシャワーを那覇の宿
汗拭ふタオルを絞りまた絞り
地引網穴子を蛇と逃げ出す子
地引網海月を捨てて終はりけり
涼しさやがらんどうなる海の家
海の家茘枝の棚の日除かな
潮浴びてゐるのは子供ばかりかな
心地よき昼寝でありぬ海の家
水着着て海に入らぬ乙女かな
飛び跳ねて汀に急ぐ水着の子
滴りを蕗の葉に受けいただきぬ
滴りの滝の名所となる眉山
滴りの名水となる一と所
橅の森水筒要らず滴るる
濯ぎもの乾きし頃の夕立かな
夕立去るノルマンディの虹高く
束の間の虹を残して夕立ゆく
これといふ催事もなくて海開
山の子の海開待ちかねてゐる
海開プール開の後となる
海開きしてより海の色の濃く
地平まで続く麦畑虹架かる
遥かなる虹地平線丸くあり
天に虹カマンベールは小さき村
追ひ立てて追ひ立てられて蝉時雨
噴霧せる噴水の虹淡きかな
小雨来てそれっきりなる蝉時雨
泉下なるわが師よ句碑の泉枯る
雨宿りしてゐる蝉の動かざる
蝉時雨そんなに根を詰めずとも
燃え尽くしたくなき命蝉時雨
夏柳髪ふさふさとありし日も
瀬を渡る風の涼しき鵜飼かな
篝火に照らし出されし鵜の猛る
篝火の照らし出したる鵜の猛り
漆黒に鵜の影しかと鵜舟行く
総がらみして鮎を追い込む鵜舟
鵜の縄を緩めて鵜飼終はりけり
川よりの風の涼しき鵜宿かな
飢えて目の血走ってゐる鵜飼の鵜
岐阜城は緑滴る山の城
岐阜城の天守に立てば風涼し
天守より濃尾平野を一望に
信長の城より雲の峰を見る
万緑にロープウエイの呑み込まれ
犬山の城は国宝心太
天守閣杜鵑花明かりの上にあり
御城主はをみななる城著莪の花
天守への急な階段玉の汗
天守まで登り詰めれば風薫る
残雪の穂高を指呼に露天の湯
残雪や飛騨高山は山の古都
葉柳の下に陣取り朝の市
葉柳や川岸通り朝の市
玄関に鉄線咲かせ古都に住む
水盤の水に冷やして菓子を売る
甚平に着替え落ち着く古都の宿
古都の宿をのこをみなも甚平に
甚平のお子様用も用意され
甘酒や酒蔵並ぶ古都の路地
植田はや合掌造り映しをり
あやめ咲く合掌の里水の里
百年の昔のままにあやめ咲く
虹鱒の泳ぐ小流れ雪解水
十薬ややきものの道坂多く
曲がり角毎に十薬咲ける坂
炎天の坂は急坂土管坂
頂上の四阿で待つほととぎす
ほととぎす片端聞きて山降りる
子燕の早くも燕返しして
水木咲く眉山に雨を呼ぶやうに
そこらぢゅう水木の花の咲く眉山
水木咲く眉山は雨の多き山
親のあと追ふ子燕の宙返り
葉煙草の里芝桜咲く里に
煙草畑ありしは昔芝桜
太陽を浴びてまぶしき芝桜
南面の畑をくまなく芝桜
太陽に向きを揃へて芝桜
芝桜咲かせて人の来る里に
芝桜見んと県外ナンバーも
鯉幟ここに里あり人家あり
吹く風に命をもらひ鯉幟
五月鯉には青空のよく似合ふ
五月鯉泳がす風の心地よく
薔薇の園盛りの薔薇の次々に
大振りのものより萎へて薔薇の園
今朝咲きし薔薇太陽を正面に
日を浴びて輝く薔薇の黄金色
カルメンといふは知らねど赤い薔薇
傷一つなき純白の薔薇に逢ふ
カクテルといふ名の薔薇の鮮やかさ
薔薇園に浜茄子の花咲き競ひ
壁伝ひ魚道へ躍り込む稚鮎
水温の一度上がりて鮎上る
鮎上る小さきものほど残されて
末子ほど多き苦労や鮎上る
上る鮎太りたるものなかりけり
雌のあと雄の飛び立ち雉と知る
雪加啼く四国三郎ゆったりと
大川の静寂を破り行々子
閑谷は青葉若葉に鎮もれる
楷若葉樹齢白寿の輝きよ
鶯や閑谷学校森深く
島もまた新緑に萌え瀬戸の海
海よりの風の涼しさ露天の湯
雨晴れて島のくっきり夏の海
葉柳や倉敷の町川に沿ひ
舟で行く倉敷の町涼しかり
柳好き川も大好きつばくらめ
倉敷の舟着き場跡花樗
葉柳をさ揺らす風のありにけり
本堂に腰を下ろせばほととぎす
鳴くたびに声の近づくほととぎす
本堂に寝転びて聞くほととぎす
ほととぎす聞きゐる耳に河鹿鳴く
谷渡るうぐひすの声ながながと
大の字に寝て薫風の中にゐる
迎へくれ送りてもくれほととぎす
遠くより河鹿の声の澄み渡る
せせらぎの音に紛れず河鹿鳴く
河鹿鳴く姿形は見えねども
河鹿鳴くメロディよりもハーモニー
聞きに来て存分に聞くほととぎす
ほととぎす聞きて河鹿も聞く一と日
辞す吾を呼び止めるかにほととぎす
お遍路の白衣まぶしき日和かな
新緑といふ輝きのありにけり
新緑の光まぶしき野の札所
お遍路の鈴の音色の軽やかに
茎立ちの支度かキャベツ膨らめる
咲き満ちて花の名所となる札所
お花見をしてゐる親子遍路かな
春キャベツはち切れんほど膨らみて
俯きに咲きて垂るる桜かな
雨止みて背伸びせしごと犬ふぐり
雨雫乗せて鮮やか黄水仙
縺れてもすぐに解けて糸桜
この里の垂れ桜の見て飽かず
来年の苗木も育て桜守る
連翹と垂れ桜の咲ける里
これほどの桜街道この里に
里人の桜街道作る里
咲き満てる桜の幹の太さかな
太き根の大地をつかむ老桜
太き幹いよいよ黒き老桜
熱々のおでんに人気花見茶屋
公園は花見の宴の昼間より
花冷えのお花見であり今年また
本丸は桜の老樹競ひ咲き
桜散りチューリップ咲く日和かな
原色の並ぶ明るさチューリップ
オランダの風景をふとチューリップ
なかんづく赤白黄色チューリップ
畝毎に色を違へてチューリップ
畝毎の遅速もありてチューリップ
チューリップ咲いて明るき公園に
群れ咲きて重なる桜濃く淡く
雲厚き空より落花きりもなく
日の差して色蘇る花の山
法花なる由来を尋ね桜狩
仰ぎ見る桜の花のこちら向く
春時雨過ぎたるあとの明るさよ
山椒の芽摘みたる指に残る香よ
芝桜には翳といふもののなく
外つ国の花も混じりて花御堂
太陽に真正面向き芝桜
花御堂椿に虚子のことをふと
鎌倉の寿福寺をふと花御堂
群れ咲きて一つ一つや芝桜
その色に濃淡のあり芝桜
群れ咲きて重なりをらず芝桜
芝桜一つ一つを揺らす風
鎌倉のこと虚子のこと花御堂
虚子の忌に行きし日のこと花御堂
麗らかや虚子の忌の鎌倉もまた
花御堂今年は虚子の忌に行かず
畑のものどれも茎立つ日和かな
初夏を咲くその名ヒマラヤユキノシタ
花開く朝の牡丹を見に来よと
花びらの薄き牡丹の日に弱く
ぼうたんや秋田美人は日を避けて
牡丹寺鉢の牡丹の即売も
多品種の牡丹を育て牡丹寺
まだ固き蕾も数多牡丹咲く
開きたる牡丹開く日待つ牡丹
ふくよかに大振り牡丹咲き満てる
株ごとに犇めき咲ける牡丹かな
太陽に微笑んでゐるチューリップ
ハネムーンてふ真っ白なチューリップ
畝毎に名札をつけてチューリップ
チューリップ数へて数を教はりぬ
チューリップフェアに家族連れ多く
燦々と太陽を浴び梨の花
どれもみな太陽を向き梨の花
どの花も太陽を向き梨の棚
梨棚に咲き満てる花真っ平
古木より咲きて真白や梨の花
老木に純白の梨花咲き満ちて
隣まで宅地の園の梨の花
この町に残りし園の梨の花
鉢植えの牡丹より咲き牡丹寺
鉢植えの牡丹品よく並べられ
日向より日蔭の牡丹艶やかに
大振りの牡丹のかくも妖艶な
妖艶な赤い牡丹の咲き満ちて
小振りなる牡丹のかくも凛として
鉢植えの咲きて始まる藤祭
藤棚の藤まだ咲かず藤祭
縺れるといふことのなく藤垂れて
風のなきときにも揺れて藤の花
懸り藤見る人のなき寺静か
テント張ることに始まる藤祭
新しき雪洞吊りて藤祭
町中に犇めく幟藤祭
梅雨の引く頃の牡丹が見頃とか
楊貴妃の好きてふ牡丹吾も好き
富貴には遠き身なれど牡丹好き
近づけば紫しかと諸葛菜
灰まぶし若布干す浜諸葛菜
諸葛菜根元に黒き若布屑
はからずも雪持草に逢へる春
残雪や有馬山の湯坂の町
凍解の風の冷たき有馬の湯
雪乗せていよいよ赤き実南天
蕗の薹佃煮となり店頭に
蕗の薹季節限定佃煮に
佃煮屋多き有馬や蕗の薹
この辻も雪積み上げて有馬の湯
太閤もねねの像にも余寒かな
囀りや山の有馬の露天湯に
雛飾眺めてよりの宴かな
雛飾る御殿飾をまづ飾り
春塵の明石海峡橋消えて
海峡に鮊舟の二艘づつ
鮊の網引く二艘一組で
薔薇の芽のいづれも赤に始まりぬ
薔薇の芽の赤に違ひのなかりけり
新御堂古き礎石の暖かく
千年の礎石に御堂建ちし春
町内に国分寺あり豆の花
池の鴨引く気配なり散り散りに
鶯の一声ありてそれっきり
しだれ梅雲一つなき空青く
鐘つきて祈る遍路のうら若く
お遍路の笑顔残して行きにけり
振り返りお辞儀して去る遍路かな
山門を入り山門出る遍路
裏口を入る遍路のなかりけり
路地を行くお遍路さんの次々に
行楽の出で立ちで来るお遍路も
先立ちて蜂須賀桜満開に
咲き満ちてこぼれ始めし桜かな
こんなにも目白来てゐる桜かな
一本の桜に人も目白も来
花の色幹黒ければさらに濃く
雲一つなき空を背に桜咲く
蜂須賀の殿に拝受の桜咲く
焼夷弾落ちたる庭の桜咲く
七十年続く平和や桜咲く
咲きにけり蜂須賀桜紅仄と
紅しかと蜂須賀桜咲く日和
蜂須賀の世に咲く桜今も咲く
蜂須賀の時代を今に咲く桜
緋毛氈敷くお茶席で見る桜
お元気な亭主は卒寿桜守る
桜守る亭主と共に見る桜
蜂須賀の世より伝へて紅桜
山茱萸の黄を極めゐる空の青
町中の目白を集め桜咲く
水仙の咲き満つ丘を登りゆく
水仙の香に包まれて丘登る
水仙の香の突然に降りてくる
水仙の香りの中に立ってゐる
なだれ咲く水仙どれも下を向き
満作の花のほどける日和かな
登るごと臘梅の香の近づきぬ
臘梅の通り過ぎての香りかな
梅咲きて平和な日本青い空
節分の日差明るくありにけり
紅梅の一花一花に虻の来て
梅日和公園どこも家族連れ
立春の光あまねくありにけり
立春の光の中へ飛機の旅
雪吊の松に音なく氷雨降る
氷雨降る昼も明るきレストラン
洋風の明治の館氷雨降る
それぞれに句の木札立て冬牡丹
冬牡丹一つに一つ句を添へて
冬牡丹苑に集まる日差かな
肌を刺す風の中来て冬牡丹
冬牡丹園に火鉢も用意され
雪残る土黒々と冬牡丹
降る雪にいよいよ凛と冬牡丹
寒きほど色艶やかに冬牡丹
霜柱踏みて東照宮に入る
春光に東照宮の金まぶし
つくづくと都会は雪に弱かりし
日本中雪また雪の一日かな
大雪のニュース炬燵で見る隠居
霜柱踏みしめ社殿仰ぎ見る
新若布朝一番に鳴門より
さつと湯に通せば真青新若布
歯応えの鳴門若布でありにけり
知らぬ間に長けてをりけり蕗の薹
わが庭の蕗の薹はや長けてをり
わが庭の蕗の薹にも雪の朝
わが庭の金柑雪に色増せる
松葉杖頼りに過ごし根深汁
何もせず自宅静養根深汁
少しづつ歩けて嬉し根深汁
新若布茎もいただき佃煮に
春物の並ぶ売場の明るさよ
冬物の売場は隅に寄せられて
冬物はバーゲンばかり並べられ
重ね着を脱ぎて春物見て廻る
青空へ突っ立てる枝梅の花
独りゐて梅の香りに包まるる
まだ風の尖ってゐる梅日和
梅の香の不意に届きてすぐ消ゆる
千年の大楠青く初音聞く
日に向かひ陰のなかりし梅の花
吾が靴の巨人の靴に犬ふぐり
下萌の土ほかほかと柔らかく
下萌や地球は命宿る星
お隣は今年も空地下萌ゆる
町内に公園四つ下萌ゆる
雑草を駆除の条例下萌ゆる
抜けさうで抜けぬしつこさ春の風邪
何事をするも物憂し春の風邪
初夢の途切れ途切れでありにけり
初夢にストーリーなるもののなく
あっけなく覚めて初夢らしきもの
温めたる水に寒鯉よく泳ぎ
まづ玄関のストーブに迎へられ
門前に臘梅活けて客を待つ
石蕗残る庭に師の句を諳んじる
料亭の広間借り切り初句会
いささかの緊張もあり初句会
ごまめに手つけて始まる宴かな
琴の音の料亭静か初句会
曲水の庭ある屋敷初句会
料亭の昼は静かや初句会
初句会いつもの顔のかしこまり
熱燗の杯に始まる初句会
熱燗も御馳走も出て初句会
初戎禰宜の炬燵を離れざる
本堂にでんとストーブ初戎
うまいもの市へ福笹提げて行く
戎市裏の通りは苗木売り
街中に横丁のあり初戎
返納の去年の福笹山を成し
深紅とは黒き赤なり冬薔薇
凛と立ち咲き始めたる冬薔薇
奥宮へ寒禽の森抜けて行く
ドイツ俘虜造りし橋や冬日差す
神田の耕されあり春隣
奥宮は標高五百冬残る
奥宮へ里の参道琵琶の花
奥宮へ行くといふ人着膨れて
千年の樟にやさしき冬日かな
雪乗せて凛々しかりけり寒牡丹
上野なる東照宮の寒牡丹
小顔なる乙女のやうな寒牡丹
霜除けの蓑の大きく寒牡丹
蓑もよし傘もまたよし寒牡丹
雪の日のいよいよ赤き寒牡丹
寒牡丹見て来て熱き御茶嬉し
凍蝶の飛び立ちにけりよろよろと
冬の薔薇チャールストンの花小さく
山茶花の咲き継ぐ赤と散りし赤
紅梅の含める蕾紅確か
石庭の砂の箒目冬日差す
冬枯れの園に黐の実真っ赤かな
寒風のなき日溜りの見当らず
落椿瑞々しきもありにけり
まづ日差ある処より探梅す
蜂須賀の御殿庭園探梅す
探梅といふはとにかく歩くこと
風痛みしても凛々しく冬の薔薇
天守なき城址広し梅探す
皇居前瓦斯灯模せる寒灯
奥宮は裸電球寒灯
臘梅や史跡公園山裾に
臘梅を見んと次々来られたる
臘梅の臘を透かせる空の青
臘梅や散歩コースの案内板
臘梅の香りの届く間合いかな
臘梅を丹念に見る日和かな
満開に咲く臘梅に出会へたる
臘梅や古墳の里の日溜りに
臘梅や丸い古墳の其処此処に
臘梅や散歩コースの地図呉るる
臘梅やこれより散歩コースなる
寒禽の森へと入る遍路道
空海の道は寒禽鳴くばかり
寒椿これより遍路ころがしへ
空海の道は辿らず冬遍路
徒歩で行く人なきけふの冬遍路
新婚のやうな二人も冬遍路
新築の庫裏の玄関実南天
新築の槌音高く日脚伸ぶ
棟上げて大工忙し日脚伸ぶ
棟上げて工事本番日脚伸ぶ
大工さん休む間もなし日脚伸ぶ
竜の玉探す幼き日に帰り
竜の玉探せば誰も童なる
この瑠璃を竜の玉とは大層な
棟上げのあとの嬉しき四温かな
組み上がる梁に冬日のやはらかく