今月の俳句

2021年3月

二分咲いて赤き蜂須賀桜かな

二分咲きの桜に目白椋鳥も

早春の山の古刹に鹿の糞

塵一つなき境内に梅の散る

散り敷きてなほも咲き継ぎ梅の花

蔵のある屋敷大きな臥竜梅

広き野を行けば初音の向かうより

初音聞きたくて野道を行き戻り

畑一枚埋め尽くして仏の座

耕せば雀鶺鴒付いて来る

太陽光パネルの光る里の春

大楠に続いて見上ぐ藪椿

芽を出せばいきなりの花クロッカス

この道のいつもこの場所クロッカス

梅林の梅の野梅となる速さ

梅林の土やはらかく草萌ゆる

彼方此方に犇めき咲ける黄水仙

雑草と云ふ草はなし草芽吹く

江戸の世を今に蜂須賀桜咲く

塵の無き庭に蜂須賀桜咲く

一本で庭埋め尽くしゐる桜

散り初めていよよ咲き満つ桜かな

山茱萸の花咲いてゐる武家屋敷

裏庭に山茱萸の花咲き満ちて

川面にも蜂須賀桜赤く咲き

ダウン着て蜂須賀桜見に来しと

花の下親子の無料撮影会

能面の享保雛は何思ふ

首傾げポーズ取りしは古今雛

芥子雛の少し目尻を釣り上げて

贅沢をするなてふ世の雛小さき

巣作りの小枝くはへて鷺帰る

地虫出づ御殿の庭に鳩雀

人群るる花見の宴はできねども

吉野川堰まで汽水蜆掘る

蜆掘るにも入漁料支払って

潮待てば中洲ひろびろ蜆掘る

蜆掘る漁師は水に胸までも

接木して世に無き新種作らんと

薔薇園に挿木の並ぶサンルーム

挿木して枯らしてしまひまた挿木

虎杖を折ればすぽんと音のして

虎杖の瑞々しさよ酸っぱさよ

塩ありていよいよ旨き虎杖に

懸命に螺旋描きて揚雲雀

引力に任せゐしごと落雲雀

地に降りし途端に雲雀ゐなくなる

雲雀野を来て雲雀野に出る札所

手作りの蓬餅にて迎へられ

餡もまた手作りといふ蓬餅

一輪の添へて出されし蓬餅

蓬餅一品だけの小商ひ

畝立てていつもこの場所芋植うる

里芋の子芋が好きで芋植うる

自家用の芋は屋敷の内に植う

野蒜摘み酒は清酒か白ワイン

野蒜摘む心弾んでをりにけり

野蒜とはあそこにそこに足元に

紀の海へいかなご舟の淡路より

ゆったりといかなご舟の浮かぶ海

釘煮好しちりめんも好し小女子は

小女子のちりめんですと送りくれ

料理屋の生垣真白雪柳

咲き満ちてこその青春雪柳

船着き場ありしは昔馬酔木咲く

馬酔木咲く卯建の町の港跡

端に柳の大樹芽吹く町

ほんのりと黄ばみ始めし柳の芽

葉牡丹の渦盛り上がり茎立てる

店先の鉢植春を彩りて

鉢植に春の日差の暖かく

控え目でゐる美しさ霞草

花嫁のベールのやうな霞草

春風に家中の窓開け放ち

箒目の残る寺苑に落椿

地に落ちし椿のなほも瑞々し

春雨に鯱鉾烟る国分寺

春雨に庭の青石美しき寺

巨岩組み合はせし庭に牡丹の芽

去ぬ気配なき鴨のよく太りをり

花の雨滑らぬやうに磴下りる

2021年2月

初場所の平幕優勝めでたけれ

初場所の平幕重いと賜杯抱き

初場所の賜杯を抱きて重かった

初場所の賜杯は突きの平幕に

鴨群るる中学校のプールにも

七羽もの鴨の来てをり学校に

こんもりと畑一面仏の座

仏の座茂る畑を冬耕す

鬼やらふ園児も声をはりあげて

節分の鬼の面つけにこにこと

立春の光まぶしき新居かな

立春の風のわづかに尖って

立春の風に残ってをりし棘

立春の光りは松の葉先にも

玄関の松に春立つ日の光

立春の星座明るくありにけり

春耕の後に雀も鴉も来

春耕の土掘り返す鴉かな

地虫出て雀に鴉白鷺も

二ン月の四国三郎きらめいて

噴水のしぶきまぶしき二月かな

水撥ねてまぶしき春の光りかな

満作のもじゃもじゃの黄のまぶしさよ

眉山嶺のパゴダまぶしき二月かな

マスクしてゐても梅の香ほんのりと

昨夜掘りし土竜の土か温かし

土竜打なるは知らねど土竜跡

草萌ゆる土竜の土のほかほかと

満作の枯葉纏ひて咲きにけり

満作の後生大事に枯葉つけ

去年の葉を大事に咲けり満作は

満作の咲き満つ空の青さかな

満作の黄に始まれる磴上る

畦を焼く寺領ひろびろ国分寺

野焼の火いきなりどっと走り出す

生き生きとワイングラスの椿咲く

水吸って見る間に伸びし蕗の薹

春の風邪なんぞ引いてはをられぬと

熱の無く一安心の春の風邪

春風邪と云へど巣籠りしてゐると

昼はただ寝てゐるばかり恋の猫

猫の恋三毛もペルシャも野良猫に

恋猫に「放蕩息子の帰還」ふと

ずぶ濡れて虚ろな眼恋の猫

春耕の畑に椋鳥鶺鴒も

なづなもうぺんぺん草となってをり

なづなからぺんぺん草になる速さ

ひろびろと雛を飾りあるロビー

階段を上ればそこに飾り雛

梅咲いて昔と同じ空の青

清き水流るる岸辺梅の花

咲き満てる梅林の土やはらかく

独りゐて梅の香りを存分に

そこここに咲き初む梅の白さかな

梅咲いて亡き人のこと語り初む

山に野に川辺にも梅咲ける里

梅林の土ほかほかと仏の座

盛り上がるほどに群れ咲き仏の座

石垣の上の方より枝垂れ梅

釣鐘のやうな形に枝垂れ梅

春一番吹いたと後で聞くばかり

春一の恐さは伝へ聞くばかり

春一の来るてふ予報聞かざりし

踊り食ふ白魚の目のいとほしく

椀泳ぐ白魚の目のいとほしさ

群れて来る白魚じっと待つ四手

朝潮に乗りて白魚来ると云ふ

寒戻る阿波に初雪牡丹雪

降り続きゐても積もらず牡丹雪

きっぱりと晴れ渡りたる雨水の日

青空のまぶしきほどや雨水の日

寒牡丹ならぬ葉牡丹藁苞に

藁苞の葉牡丹渦を巻きあげて

句碑の辺に紅白の梅咲き添ひて

句碑の辺に少し離れて蕗の薹

近づけば蜘蛛の子のごと目高散る

日の差せば水面に寄ってくる目高

この小さき初蝶の目と目の合ひぬ

くっきりと紋あり小さき初蝶に

うららかや句碑を囲みて句に遊ぶ

句碑の字の墨黒々と梅白し

2021年1月

スーパーに竹輪麩けふはおでん鍋

竹輪麩のおでん東京日々遠く

蟹の身を詰めたおでんよ金沢よ

正月の客に振る舞ふおでんかな

客迎ふ亭主自らおでん茹で

大鍋におでんを茹でて迎へくれ

冬紅葉越しなる空の青さかな

ちらほらと咲いて満開冬桜

つまものに冬の日差の暖かく

山葵田にやさしき冬の日差かな

冬枯れの山に山葵の田の緑

葉山葵の緑輝く冬日向

取る人もなくて残ってをりし柿

キャンピングカーも来てゐる冬の宿

青竹の正月飾り凛として

門松の材で正月飾りかな

門松の凛と創業百年目

門松の青竹高く正門に

門松や今年創業百年と

門松を見上げ出社の足軽く

初暦めくれば小川芋銭の絵

初暦一茶の句にて始まりぬ

初暦掲げば気持ちしゃんとして

年毎に小振り我が家の鏡餅

鏡餅飾らぬ家の多くなり

子の家は鏡餅なく餅もなく

子も嫁も鏡餅など飾らぬと

鏡餅飾る頑固と言はれても

鏡餅だけは断固として飾る

鏡餅飾れば気持ち引き締まる

鏡餅飾れば早もひび割れて

鏡餅だけは飾ると頑なに

鏡割して七草の粥の具に

欠餅にしていただきし鏡餅

欠餅にすれば絶品鏡餅

欠餅にすれば完食鏡餅

濡れ羽色いと美しき寒鴉

颯爽と来て颯爽と去る寒鴉

群れてゐて一つ一つや福寿草

禁苑のいつもこの場所福寿草

ふるさとはもう福寿草咲きしかと

ふくよかな母の顔ふと福寿草

庇より槍のやうなる氷柱垂れ

落ちさうな氷柱の槍の真下行く

背丈越す氷柱草津の宿の朝

いと赤し雪の越後の寒灯は

星かとも思ひし祖谷の寒灯は

昼もなほ寒灯灯しある末社

迷ひ来し径の寒灯ありがたく

寒灯の一つに一つある夕餉

見つけたりわが坪庭に竜の玉

その奥に潜んでをりし竜の玉

お散歩のブルドッグにもちゃんちゃんこ

首すぼめ身じろぎもせず番鴨

山茶花の垣根ばかりの輝きて

戻り来し鷺の冬日の暖かく

どの鷺も身を乗り出して冬日受け

冬日向鷺のコロニー復活す

石庭に一点の赤実万両

梅一輪一輪なれど凛として

その中に独りで来る子大試験

一抱へもの山茱萸の花活けて

山茱萸の花の明るきロビーかな

雨三日臘梅の香の消えてゐず

雨三日臘梅の艶いや増して

俯けるもの少なかり落椿

散るほどにいよよ咲き満ち姫椿

石段の青石真青寒の雨

除かれし橙に雨どんど跡

受験子の絵馬新しく美しく

初場所の天晴平幕初優勝

初場所の平幕上位を総嘗めし

初場所を突き押し一本まっしぐら

初場所の上位力士の腑甲斐無さ

葉牡丹を眺め入って来られよと

雨の日の葉牡丹にある勢かな