今月の俳句

2024年6月

雨の日の額紫陽花の白さかな

雨の日の額紫陽花の凛として

梅雨晴の空より港見下ろして

梅雨晴の空より見えて江ノ島も

残雪のわずかばかりの富士も見え

六月の富士黒々とありにけり

梅雨晴れて知多半島もくっきりと

梅雨晴れてあれは確かにセントレア

でで虫の逃ぐる速さよもうゐない

でで虫の一目散に逃げてゆく

でで虫の前へ前へと休みなく

ゆっくりとでで虫のごと生きたかり

青紫蘇の苗とはかくも小さくて

青紫蘇の苗の伸び来し速さかな

青紫蘇の育ち過ぎないやう日除

走り来し車に灯虫こびりつき

運転の窓に灯虫のつぶてかな

かぶと虫くはがた虫も街の灯に

灯虫来る町に一つの信号に

灯虫来る明治の街のガス灯に

若竹のもう竹林の背を越えて

若竹の生え放題の伸び放題

流れ無きところを選び鳰浮巣

名水の池の真ん中鳰浮巣

蛇の来ぬやうにと祈る鳰浮巣

大木の木蔭の川辺鳰浮巣

浮巣よく観たく抜き足忍び足

卵ある浮巣と聞けばなほ観たし

つつがなきことを祈らん鳰浮巣

蜘蛛の巣の始めの一糸襷掛け

見えぬほどなる高さより蜘蛛の糸

銀色に光ってをりぬ蜘蛛の糸

梅花藻の花美しき上高地

梅花藻の花咲く水の清らかさ

梅花藻の花水中に水面に

百選の水に藻の花畑かな

十薬も百合紫陽花も白き庭

酢漿草の花犇きて咲く狭庭

日の蔭の酢漿草の花美しき

七夕の笹に戦争やめましょう

七夕の笹に平和の来ることを

解禁の鮎をぜひとも食べたくて

品の良き鮎の香りでありにけり

待ちかねし鮎の背ごしもいただきて

頭ごといただき鮎の天婦羅は

梅雨に入り入梅の日は快晴に

入梅の日の徳島は快晴に

入梅の徳島晴れの日の続く

入梅の徳島今日も晴れ渡り

鉢植の葡萄の早も実をつけて

鉢植の葡萄の葉っぱ大きかり

紫のアガパンサスは夏の花

暑さにも強きアガパンサスの花

鮮やかな白でありけり半夏生

半夏生見てより入るお寿司屋に

明日からは雨の予報よ額の花

雨欲しい雨が欲しいと額の花

これはまあこんな所に捩り花

近づきて見たくなるもの捩り花

2024年5月

二百歳なる藤の根の無骨さよ

藤の花二百歳なる枝垂れやう

百歳の白藤もまた勢よし

紫も白も盛りや藤の花

門入れば藤の香りの中にゐる

藤の香の甘さに蜂の群がれる

藤を見る蜂に刺されぬやうにして

甘き香をたっぷり吸って藤を見る

筍の竹となりゆく速さかな

筍のめったやたらに顔を出し

春菊に綺麗な花が咲いてをり

春菊の花には香りなかりけり

犇ける大葉の苗の小ささよ

こんもりと育ち大葉となってをり

ピーマンの苗に綺麗な写真添へ

野菜にも初夏の太陽たっぷりと

人住まぬ家に鮮やか柿若葉

鮮やかに生きていゆきたし柿若葉

春宵の道後の町をそぞろ来て

宇和島の鯛めしに来る宿浴衣

風薫る平山郁夫美術館

門入れば緑の美しき美術館

清楚なる庭に卯木の群れ咲いて

新緑の庭に卯木の白い花

紫蘭咲く道より美術館に入る

部屋の中からも五月の庭を見る

春の月かもと名画を眺めもし

冷房の部屋で名画の旅も見て

尾道の港にそよぐ風は初夏

初夏の旅尾道ラーメン旨かった

遠浅の海に遠投鱚を釣る

竿上げば鱚のぞろぞろ釣れてをり

砂丘下り遠州灘に鱚を釣る

離陸する飛行機見つつ鱚を釣る

吉野川河口ひろびろ鱚を釣る

母の日の父鱚釣に出掛けたる

橡の花ピエロの帽子みたいだね

松蝉を聞く大神子の松原に

波音に負けず松蝉鳴き始む

松蝉の私呼ぶかにぢいぢいと

長堤の茅花流しのさはさはと

雨意のある茅花流しでありにけり

ペダル漕ぐ茅花流しを浴びながら

我が家の筍飯は具沢山

筍飯この筍は子の掘りし

部屋中に筍飯の香りかな

子も孫も筍飯が大好きと

一夜さにこの狼藉は根切虫

ほどほどにしてくださいよ根切虫

根切虫その正体は知らねども

彩雲のたなびく初夏の青空よ

東京は緑緑の都かな

夏の闇にも眠らない都心

雪の富士見えるよ初夏の東京に

都心からはっきり初夏の富士も見て

涼風に誘はれ滝に立ち寄りぬ

涼しかりホテルの庭の滝なれど

見上げれば目にもやさしく若楓

石庭の五月躑躅の垣の美しさ

鯉の池には睡蓮の三つ四つ

鯉泳ぐ岸辺茅花の残り咲き

犇ける五月躑躅の真っ赤っ赤

遠目にも五月躑躅の明るさよ

十薬とあじさゐ白を競ふ庭

走っても疲れない子ら運動会

昼までで終る五月の運動会

家族とは嬉しきものよ運動会

運動会終へて皆さんご苦労さん

太陽へたじろがぬ花仙人掌は

仙人掌の花は太陽正面に

放ったらかしの仙人掌咲き満ちて

放ったらかしがいいのよ仙人掌は

ほととぎす聞きたく眉山山頂に

山頂に着いた途端のほととぎす

遠峰を眺めてゐればほととぎす

鶯の鳴けど鳴かないほととぎす

鶯の間に一声ほととぎす

聞き止めし一声確かほととぎす

ガリバーの足が来てをり石菖に

几帳面なる作りやう落し文

捨てられず几帳面なる落し文

巻き立てか緑の美しき落し文

風に舞ふ毛虫の糸の強さかな

青嵐眉山丸ごと吹き流し

2024年4月

百歳の枝垂れ桜の威容かな

百歳の枝垂れ桜の枝垂れやう

百歳の枝垂れ桜を仰ぎ見る

百歳の枝垂れ桜を見んと来て

百歳の桜に屋台まで出来て

百歳の桜に臨時駐車場

百歳の桜に人の集まれる

遠目にもほんのり赤き山桜

枝垂れ桜越しに山桜も見え

境内を敷き詰め枝垂れ桜散る

チューリップ眺め桜も仰ぎ見て

原色といふ美しさチューリップ

整列もまた美しきチューリップ

もう走り出してゐる子らチューリップ

咲き初めし染井吉野のほの赤く

チューリップ園に水車の建物も

赤い花白い桜と咲き満ちて

枝垂れ咲く牡丹桜でありにけり

室咲きの胡蝶蘭かな一列に

室咲きの青美しき胡蝶蘭

遠目にも咲き満ちてをり花の山

満開の花のトンネルくぐり行く

下山する人が優先花の山

この山の枝垂れ桜を今年また

枝垂れ桜越しに阿讃の峰も見て

枝垂れ桜とはこんなにも大振りな

風なくも枝垂れて枝垂れ桜かな

満開の桜広場を走る子ら

咲き満てる花を眺めてゐる二人

お花見をするのは大人子ら走る

子ら遊ぶ枝垂れ桜を身に纏ひ

散り敷ける上に一片また落花

桜散る大地に早も蒲公英が

散り急ぐ花はなけれどまた落花

散る桜残る桜もやがて散る

桜散る大地の土に帰りゆく

午後となり少し萎れてゐる牡丹

日を浴びて牡丹いよいよ艶やかに

犇きて咲ける牡丹もありにけり

咲き揃ひ牡丹の寺となりにけり

鉢植の牡丹の紅の艶やかさ

鉢植の白い牡丹に見惚れゐる

咲き満てる染井吉野の白さかな

青空に染井吉野の白眩し

どっと来る日曜のチューリップ園

チューリップ園には家族皆で来る

チューリップ園の水車は喫茶店

とりどりの色美しきチューリップ

見るよりも駆け回る子らチューリップ

チューリップ園には歓声こだまして

放ったらかしでなけれど葱坊主

種を取る積りなけれど葱坊主

プランターの葱にも花の咲いてをり

葱坊主だらけ日曜菜園は

葱坊主畑三枚埋め尽くし

蜜蜂のゐなくて人のする授粉

蜜蜂は仕事師花粉まみれかな

初物の筍なりしやはらかし

いただきし筍その日茹で上げる

筍は旬が命とさっと茹で

大楠を仰ぎ見てゐるみどりの日

植樹祭せし日懐かしみどりの日

県木の楊梅育てみどりの日

風船の行方を誰も知らざりし

風船を貰ふのっぽのピエロより

風船で気象観測せしと聞く

風船を追い掛ける子を追い掛ける

味噌入れるだけや私の浅蜊汁

この旨き浅蜊の採れし浜はどこ

舟でしか行くけぬ浜での浅蜊てふ

浅蜊しぐれ一つで出来る茶漬かな

鎌倉五山巡る道々濃山吹

虚子の墓参りをしても濃山吹

連綿と山吹ばかり続く道

けがれなき色でありけり白牡丹

懸命に生きて真っ赤や赤牡丹

遠目にも薄く紅差し白牡丹

紅差していよいよ美しき白牡丹

日当たりにありても凛と赤牡丹

門前にありし一株赤牡丹

田植機のおもちゃのごとし小さき田

チューリップ育てることが生きがいと

チューリップ咲かせ生家に戻り住む

石垣に犇き咲きて芝桜

犇きて咲く美しさ芝桜

山吹の桜ひとひら乗せて咲き

石楠花も咲かせ八十五歳とか

著莪の花咲ける崖下り河鹿聞く

河鹿鳴く声のだんだん近づきぬ

左から右から河鹿鳴きにけり

木琴を叩けるごとく河鹿鳴く

重唱のやうな河鹿の鳴きっぷり

河鹿鳴く次第に声を張り上げて

独唱の河鹿の声の乗って来る

いやといふほどに河鹿を聞き昼餉

甘酒の差し入れまでもいただきて

山宿の昼は旬の山菜尽くしかな

青空に鶯を聞く露天の湯

たっぷりと鶯を聞く朝の湯に

樟落葉二つ三つ四つ露天の湯

湯上りに残る桜を眺めゐる

鼠木戸より薫風と共に入る

木戸開けて薫風入れて金丸座

歌舞伎見る課外授業や子らの初夏

宙乗りの雀右衛門も見柏餅

空へ舞ふ天女鮮やか風光る

芝居はね初夏の眩しき現世に

2024年3月

雛飾る人の踏み場も無きほどに

とりどりの雛や雅叙園らしく

雅叙園らしき雛の飾られて

早々と河津桜に目白来て

見るほどに河津桜は赤きかな

これはまあ雪の花見となりにけり

青空に紅美しき桜かな

蜂須賀の殿の愛でたる桜見る

蜂須賀の世より伝へし桜見る

戦災を耐えし蜂須賀桜見る

焼夷弾落ちても桜生き延びて

お花見のできる日本のありがたく

戦争の無き世を願ひ見る桜

一と月も早く満開なる桜

雛飾る部屋より眺む桜かな

武家屋敷には春の花生けられて

廊下には安達流なる寒椿

庭園の岩にはミモザ美しく

玄関に椿一輪活けられて

武家屋敷よりも蜂須賀桜見て

蜂須賀桜と木札にありし母樹大き

母樹なりし蜂須賀桜仰ぎ見る

投句箱あるを確かめ桜見る

観光船よりも蜂須賀桜見て

コーヒーをいただきながら桜見る

お花見の一句を投句箱に入れ

エチオピア大使も来られ見る桜

阿波踊しつつ花見に来る人も

一と月も早く花見のできる阿波

阿波藩の世より伝へし桜見る

種芋の貯蔵の穴の床下に

種芋の穴の昼なほ暗かりし

種芋は子芋ばかりでありにけり

植ゑ付けは種芋の芽を確かめて

残りたる種芋甘く旨かりし

水中に葦の角あり句碑のあり

水中句碑ありし水辺に葦の角

葦の角琵琶湖の波に見え隠れ

種袋そのまま挿して苗札に

苗札のカラー写真の美しく

苗札のカタカナばかりなりしかな

苗札の文字より写真見て回る

真っ直ぐの畦がぐちゃぐちゃ陽炎ひて

蜃気楼陽炎もまたぼんやりと

ふるさとの町すっぽりと陽炎ひて

弧を描き上り詰めたる揚雲雀

大地へと一目散に落つ雲雀

雲雀鳴く天下とったる如く鳴く

四方から続けざまなり揚雲雀

休耕の畑は即ち雲雀の野

電光石火落つる雲雀となりにけり

肥やす馬ゐないけれども苜蓿

防風摘む大鳴門橋そこに見て

防風の勝手に伸びてをりし浜

白砂に浜防風の白い花

浜防風つまめば芹の香りして

飲兵衛は刺身のつまに浜防風

卒業をしたとはるばる愛知より

卒業をしたとセーラー服で来る

今年また三万体の雛飾る

雛を見に三万人が来ると云ふ

婚活のイベントもあり雛祭

日替のイベントもあり雛祭

ライトアップまでは見られず雛祭

雛飾眺め人形浄瑠璃も

雛祭る恐竜化石出る町に

雛飾には外つ国の人形も

雛飾りせしは小学三年生

その中に泣きべそのをり仕丁雛

南米の調べも聞こえ雛祭

飾られし雛それぞれに物語

飾られてこその雛人形であり

ウクライナ国旗の描かれし雛も

雛祭記念の写真撮り合ひて

雛の顔時代時代でありにけり

植ゑし人思ひ出しつつ見る桜

花も葉も赤き蜂須賀桜かな

一と月も早く散りゆくこの桜

敷き詰めし上にひとひらまた落花

散り急ぐ花はなけれどまた一花

落つる花しばし眺めてをりにけり

遠目にもはくれんの白際立ちて

上向きに咲きはくれんの白い花

薔薇の芽を覆ひさうなる繁縷かな

清らかな水の岸辺に芹茂る

こんもりと芹の犇めくひとところ

城山の緑に紛れ著莪の花

遠目にも見ゆる川面の花明かり

川面にも桜並木の美しく

散り残る花を訪ねて来し人も

散る花をじっと見る人見ない人

敷き詰められし落花の美しき

敷き詰められし落花を踏んで行く

黄水仙咲いて明るき庭となり

ロンドンの城の庭ふと黄水仙

マーガレット咲かせデンタルクリニック

マーガレット大好きだった人をふと

ネモフィラにまぶしき春の光りかな

ネモフィラにひたちなか公園をふと

世の遠くゐることに慣れ蕨餅

世に遠くゐることに慣れ草の餅

堤防の芥子菜摘んで漬物に

春場所の新入幕の初優勝

春場所のあっぱれ幕尻初優勝

2024年2月

ふるさとの歌作りしと初便り

ふるさとの山河を歌ひ春を待つ

あっぱれな年の始めでありにけり

坪庭に三つ四つ五つ蕗の薹

水仙の四つ並んで咲きにけり

何たって生が一番寒卵

小豆島醤油一滴寒卵

卵かけ醤油を少し寒卵

炊き立ての御飯最高寒卵

黄身二つありてめでたし寒卵

放し飼いしたるを選び寒卵

ぷりぷりの黄身でありけり寒卵

やはらかき日差にまぶし猫柳

門前にせせらぎのあり猫柳

活けられてなほも艶やか猫柳

かはいいと皆に触られ猫柳

水音のかすかに聞こえ猫柳

猫柳触れれば仄と温かし

ぎんねずの控へ目が好き猫柳

青空へぽつりぽつりと梅咲きぬ

梅咲いて寺訪ふ人の増えて来し

青空へ咲き初む梅の白さかな

剪定をされたる梅の花大き

剪定のされし梅林勢あり

春菊はささっと入れてさっと煮る

好き嫌ひあれど菊菜は香りかな

金縷梅何でそんなに縮れ咲く

満作は枯葉大事と咲きにけり

まづ咲くと云ふ満作の咲き初めし

満作の咲きてもうじき一年生

満作の松の廊下のありし地に

満作の町見下ろして咲きにけり

コロナではないです春の風邪ですと

立春の一位当選めでたけり

春立つ日一位で町議会議員

春立つ日見事一位で初当選

春立つ日青年議員誕生す

春立つ日子の旧友が議員へと

新人が一位当選春立つ日

あっぱれや一位当選春立てり

雛段の雛を囲みて吊し雛

高々と雛段の雛飾られて

様々な願ひ込められ吊し雛

手作りの情のありけり吊し雛

鳴門かな詰め放題の新若布

新若布詰め放題と聞くからは

鳴門産牡蠣にも人の押し寄せて

新若布牡蠣と見る間に売れ尽くし

新若布詰め放題に長き列

若布牡蠣ともに完売昼までに

新若布入りのふるまひ汁も出て

新若布牡蠣で祭となる鳴門

ウィスキーボンボンバレンタインの日

孫からもチョコ来るバレンタインの日

義理チョコのバレンタインの日は遠く

その人は知らねどバレンタインの日

春一に船戻り来る戻り来る

春一の恐さを語る老漁師

黄花亜麻大事に育て句碑の春

黄花亜麻句碑を囲みて咲き競ふ

句碑囲み幸せ招く福寿草

日を浴びて開き始めし福寿草

忘れらる日干しの蛙鵙の贄

生殺与奪句碑の辺にあり鵙の贄

日の差せど菰に隠れて寒牡丹

隠れん坊してゐるやうな寒牡丹

句碑の辺に白梅紅梅濃紅梅

句碑の辺に今年も出でし蕗の薹

句碑の辺は土筆に薺犬ふぐり

紅梅は枝も芯まで赤かりし

万両の赤に見惚れて足止まる

紅白の万両句碑を守るかに

水温み目高の親子すいすいと

幕上がる春の選抜出場と

雨に濡れ椿の花に勢あり

句碑よりも少し離れて椿咲く

秩父かな雪の武甲の朝焼けは

朝焼けに輝く雪の武甲山

早春の武甲はなほも雪乗せて

春を呼ぶおきざり草のまぶしさよ

おきざり草春はそこまで来てをりぬ

2024年1月

うっすらと初冠雪の眉山かな

徳島の初雪夕べには晴れて

一年のあっといふ間や去年今年

年毎に速く過ぎゆき去年今年

戦争の無き世を願ひ年迎ふ

辰年に願ひを託し年迎ふ

手作りの小さき門松並ぶ市

小さくとも門松らしく凛として

寒風の仕上げてくれし吊し柿

やはらかく甘く仕上がり吊し柿

正月の道後温泉賑はひて

初売の道後の町の華やかさ

初売の街ぶつからぬやう歩く

初旅は伊予の名所を駆け足で

初旅は内子座にまで立ち寄りて

西伊予の初旅魚尽くしかな

好きなだけ蜜柑どうぞとあるホテル

冬晴の宇和島駅の明るさよ

冬晴の宇和島駅の椰子仰ぐ

松山へ土佐へ行こうか乗初めは

宇和島の駅の綺麗な松飾

正月の四万十川のゆったりと

水澄める四万十川の青さかな

冬日差す足摺岬灯台に

正月の光真白き灯台に

初旅の遠く足摺岬まで

新年を足摺岬より始む

初旅は丸い水平線も見て

初旅ははるか黒潮見ゆ岬

野路菊のへばりつくかに咲く岬

野路菊も見て寒椿咲く岬

冬晴の太平洋の明るさよ

正月の太平洋の青さかな

寒晴にジョン万の像高き岬

初春や土佐は偉人の多き国

門松の立てる鳴門の菓子屋へと

買初めのひっきりなしに来る老舗

歳の数なるは遠き日雑煮餅

塗碗を出していただく雑煮かな

雑煮餅一つで足りる歳となり

子供らの食べっぷりよき雑煮餅

子ら去にて四日の雑煮ゆつくりと

大正の芝居小屋にも松飾り

産直の市の門松蜜柑付け

餅花の柳の枝のよく撓る

料亭の表玄関餅の花

撓るほど花餅つけて客迎ふ

繭玉のふはりふはりと吊されて

繭玉の一つが回ってをりにけり

繭玉の捩れ戻して吊しけり

餅花の咲ける如くに飾られて

女子会と云ふ女礼者の集ひかな

皸の昭和も遠くなりにけり

普段着の女礼者でありにけり

スーパーで女礼者と鉢合ひぬ

霜焼は見れど皸見ぬ令和

皸の子を見ぬ令和の小学校

皸の血が包帯に滲み出て

寒椿咲き満つ端にある岬

寒椿くぐり足摺岬へと

寒椿へばりつくかに咲く岬

寒椿野路菊競ひ咲く岬

天狗の鼻なる岬にも寒椿

橙の転がってゐるどんど跡

爆竹の音凄まじく炎立つ

石庭の箒目にある淑気かな

箒目に踏むをためらふ淑気かな

寒鯉の底にちっとも動かざる

阿呆息災と云ふ長老も初句会

初句会和服のありて花やかに

門松の竹に瑞気のほとばしる

小さくとも正月飾凛として

手水鉢にも正月の飾りかな

浴びるほど日差を集め実万両

枯山水紅一点の実万両

寒晴の枯山水の明るさよ

色とりどりなるもめでたし繭の花

繭花を見れば触れてもみたくなり

美しき花も飾られ初句会

初めてといふ人も来て初句会

初句会全ての料理平らげて

健啖を確かめ合ひて初句会

喜寿傘寿米寿白寿も初句会

新春を祝ひて駅に蘭の花

駅頭に春を先駆け蘭の花

大寒波能登の地震の被災地に

寒波来る命からがら逃げし身に

何もかも失ひし身に寒波来る