台風の来るぞ来るぞと今日も待つ
台風の風に空蝉飛ばされず
賓客のごとく台風来るを待つ
こぼれてもこぼれても咲き百日紅
こぼるほど紅増しにけり百日紅
あつけなく台風行つてしまひけり
事も無く台風一過せし我が家
台風の過ぎたる空の青さかな
晴天の二百十日となりにけり
大過なく過ぎし二百十日かな
倒伏の稲無く二百十日過ぐ
これほどにゐしかと思ふ帰燕かな
寄り合へる帰燕の朝の騒がしさ
寄り合へる帰燕の数のおびただし
黒山のやうに帰燕の集まり来
一羽より帰燕の空の始まりぬ
枝豆をいただきビール買ってくる
枝豆は子らが平らげしまひしと
菅平高原よりの唐黍と
クール便で来し唐黍を即茹でる
茹で立ての玉蜀黍の甘さかな
茹で立ての玉蜀黍を御裾分け
我輩は餌にはあらず真鰯ぞ
大半は餌となりゐる鰯かな
艶の佳き潤目鰯の目刺買ふ
手の爪で鰯の饅を作る母
鳴かねども蓑虫鳴くと人の云ふ
蓑虫のちちよちちよと鳴くと云ふ
蓑虫のははよははよと何故鳴かぬ
寝袋の蓑虫のごとくるまりて
風吹けばあそこにここに葛の花
石垣に沿ひて高々葛の花
葛粉買ひ葛の花咲く道帰る
間引菜の大根葉大好き浅漬に
浅漬の大根葉に酢橘阿波の秋
間引菜の若き命をいただきぬ
棒持てる子らに追はれて穴まどひ
穴まどひまどひてをれる余裕かな
穴まどふそんな贅沢ほどほどに
穴まどひ人目を引けば小突かるる
白露てふ便り届けど秋暑し
暦では白露なれども気配無し
台風の逸れゆく二百二十日かな
猛暑日の二百二十日でありにけり
ハロウィンの南瓜早々飾られて
ハロウィンの南瓜の口の大きさよ
岡山の友より葡萄二箱も
ずつしりと重き葡萄を十房も
茶の会のどかつと芒活けられて
茶会へと蒸し暑き日も着物着て
蝉の穴後生大事に残りをり
蝉の穴出口ばかりでありにけり
とこどつこい坂になほ鳴きつくつくし
今年はも銀杏どれも小振りなる
城跡の毒ありさうな茸かな
雨滴置き輝きをりし百日紅
百日紅雨に洗はれ鮮やかに
像囲み銀杏黄葉の始まりぬ
花の数少なくなりぬ秋の薔薇
城跡の夾竹桃の高々と
少年の像に秋の日やさしかり
松葉牡丹群れ咲いている像の下
雲一つ無き空広し今日の月
通夜終へて仰げば凛と今日の月
通夜の客見送るやうに今日の月
煌煌と人の世照らす今日の月
坂の上の雲を見てをり今日虚子忌
野球する虚子の像ふと今日虚子忌
窓空けば静かに虫の鳴いてゐる
虫の音の中で夜明けを待ってゐる
虫の音と共に涼しき風も来る
涼風のエアコンよりも心地よし
胸一杯朝の涼風吸ひ込んで
家中の窓開け朝の涼風を
やうやくに涼しき風を迎へられ
待ちきれぬほどに待ちゐし秋の風
目の前で栗搾り出しモンブラン
生搾りせし栗の香のモンブラン
ハロウィンの写真どうぞとホテルでも
ハロウィンの南瓜に南瓜また南瓜
新蕎麦を明治に建てし酒蔵で
昼過ぎに売れてしまひし走り蕎麦
人の死ぬほどなる暑き日本に
今日もまた外出控へる暑さかな
水面にも映ってをりぬ大花火
夜風浴び静かに花火見る二人
大輪の花火や音のやつと来る
花火見る浜の夜風を浴びながら
子供らの勝手知つたる冷蔵庫
帰るなり冷蔵庫へと走る子ら
冷蔵庫開けてアイスをまづ探す
炎天に子らのダンスの発表会
ダンスの子夢はでつかい雲の峰
炎天の子らのダンスに駆り出され
熱中症警報出ぬ日無かりけり
熱中症かもと来てくれ救急車
熱中症でなく安心さあランチ
何をする気にもなれない暑さかな
立秋と云ふに人死ぬこの暑さ
核廃絶言へない総理原爆忌
阿波踊はねたる街に盆の月
静けさの戻りし街に盆の月
故郷の町川照らし盆の月
故郷の眉山の上に盆の月
父母のこと弟のこと盆の月
稲光恐しその音なほ恐し
弟は母追ひ走る稲光
大根葉用なるてふ種は散らし蒔く
大根蒔く猫の額の畑にも
大根蒔く黒土の畝高くして
大根蒔く人誰も彼も無口かな
つくつくし今宵限りと鳴き尽くす
つくつくしけふでおしまひおしまひと
つくつくし鳴きぬやうやく秋が来る
つくつくし鳴けどなかなか来ない秋
つくつくし夏に未練の残るかに
豆腐屋の朝は早かり新豆腐
この香りこの温かさ新豆腐
木綿よし絹なほよろし新豆腐
新豆腐水が命と云ふ老舗
西瓜割そんな贅沢できぬ世に
高級なフルーツですと西瓜切る
野菜から今やフルーツなる西瓜
炎天を来て大シルクロード展
冷房のよく効く部屋で秘宝見る
一級の文物にある涼しさよ
爽やかな金の秘宝でありにけり
初秋のシルクロードの秘宝展
法華経の秘宝に暑さ忘れをり
修復のすみし本館夏簾
浴衣着て道後温泉本館へ
蛇口から蜜柑のジュース出る道後
浴衣着て草履で巡る出湯の町
湯籠提げ浴衣で道後本館へ
湯上りの浴衣で憩ふ道後の湯
胡蝶蘭並ぶ湯殿の大広間
湯上がりの浴衣姿で人力車
噴水もミストもありし美術館
王府井夏限定のメニューも
虫を食ふウツボカズラを覗き込む
木道を行けばニッコウキスゲかな
ご自由にどうぞとありしハンモック
手を貸してもらって降りるハンモック
こんもりとキレンゲショウマ群れ咲ける
犇けるほどにキレンゲショウマかな
雲の峰背ナにプールでゆつくりと
海辺なるプールは海に続くかに
蜻蛉飛ぶ明石海峡大橋を
瀬戸の海真っ赤に染めてゐる夕焼
指先に気品ありけり阿波踊
二拍子のリズムは楽し阿波踊
踊るほどのつて来るもの阿波踊
誰も彼ものつて来るもの阿波踊
徳島は住めば都と阿波踊
フィナーレは徳大生の阿波踊
待ちかねし新米子らに持たせもし
新米を持たせ帰省子見送りぬ
青空に凛と咲きをり百日紅
青空にいよよ鮮やか百日紅
遅れ咲き紅美しき百日紅
薄紅の色美しき百日紅
台風を前に満開百日紅
咲き満ちて蜜蜂も来る百日紅
風吹けば大きく揺れて百日紅
揺れてなほこぼれをらざり百日紅
雨に濡れ瑞々しかり百日紅
風雨止み清々しかり百日紅
たっぷりと降りたる朝の濃紫陽花
徳島にジャカランタ咲きモラエス忌
踊笛聞こえて来ればモラエス忌
阿波踊稽古本腰モラエス忌
モラエス忌来れば緑の徳島に
カステラとワインを供へモラエス忌
徳島の夏は本番モラエス忌
万緑の眉山城山モラエス忌
リスボンは千里の彼方モラエス忌
リスボンは弧愁の生地モラエス忌
リスボンは偉大な田舎モラエス忌
鰯焼くリスボンの路地モラエス忌
この径もまた滴りに遇ふ眉山
滴りにしばし疲れを忘れゐる
滴りの錦竜水なる名水に
滴りの藩主の水の滾々と
蕗の葉で飲む滴りの旨かりし
汕頭の絹のハンカチ買ひし旅
汕頭の絹のハンカチ買ひしまま
汕頭の絹のハンカチ出番無く
汕頭の絹のハンカチ見るばかり
雨上がり潮好しと聞く遊船に
逆コースなるは新鮮船遊
初めての川にも出でて船遊
遊船の樋門を潜り大川へ
遊船の澪標見てゆつくりと
遊船の小船となりぬ吉野川
鯵刺の群れにも出合ふ吉野川
鯵刺の獲物を探す目にも合ひ
橋の間に眉山も眺め船遊
遊船に眉山の見えてほつとする
川も名のまたまた変る船遊
遊船の眉山の下に帰りけり
遊船に街の皆んなが手を振って
遊船の乗り場の辺り市の立ち
沖縄の旅は水着の夜濯ぎも
メロン切る皆の視線を浴びながら
ずっしりと重き箱入りメロンかな
一株に一つのメロンのみ残し
手の平で重さを比べメロン買ふ
子らの目の見つめてをりしメロン切る
塩振って真桑瓜食ふ甘かりし
メロンより真桑瓜かな大好きと
貯蔵庫でないと知りつつ冷蔵庫
買つて来しものはひとまづ冷蔵庫
八分目目指してをれど冷蔵庫
消費期限不明のものも冷蔵庫
自転車で堤防行けば草いきれ
草いきれ遍路の墓は藪の中
魚釣つて帰る土手道草いきれ
床張りに跣足の何と心地よく
帰るなり跣足になつてゐる私
子供らの跣足の何と美しく
一日を跣足で過ごす一ㇳ日かな
歴年の梅酒の梅をおつまみに
去年漬けし梅酒の香り楽しみぬ
我が漬けし梅酒の何と旨かりし
十六人家族揃って夏の那覇
炎天の空の青さよここは那覇
ゴールデンシャワーなる花枝垂れ咲く
ゴールデンシャワーはタイの国花とか
街路にもアリアケカズラ美しく
街頭でソフトクリーム似合ふ街
お洒落かな手縫ひブラウス涼しさう
卒寿過ぎてもサングラスよく似合ふ
緑濃き街の真ん中モノレール
夏の夜のリゾートタウン煌煌と
椰子茂る道行き夏の夕日見る
沖縄の海に真夏の夕日かな
金色に染めて真夏の夕日落つ
金色の海に真夏の夕日落つ
夏の夜の海辺椰子にも点灯し
ハワイかと思ふ街にて夏の夜を
夏の夜を美浜アメリカンビレッジで
夏の夜の昼のやうなる街歩く
沖縄の夏はプールが一番と
沖縄のホテル大好きプール好き
子らの声今日も弾んでゐるプール
子ら誰も出やうとしないプールかな
ジップライン真夏の海を下に見て
ドローンの記録が夏の思ひ出に
白雲の浮かぶ真夏のハイウエイ
夏雲の下に伊江島くつきりと
夏の旅一番人気水族館
夏の子らジンベイザメに無我夢中
古宇利島大橋下で蟹探す
夏楽し十六人の笑顔かな
巡り来しハートの岩の海涼し
蟹探すハートの岩の海岸で
夏の旅那覇空港に別れ告げ
また来ると入道雲に誓ひもし
また来ると七夕飾る短冊に
七夕の笹にまた来る願ひ込め
淡路かな玉葱小屋のある青田
雨の日も若竹の山輝きて
梅雨霧の淡路丸ごと包み込み
梅雨霧の瀬戸の島々ぼんやりと
梅雨霧の京都五山をすっぽりと
梅雨霧に京都タワーもぼんやりと
梅雨霧に比叡も比良も見えざりし
佐和山の城址跡にも青田かな
霧晴れて青田広がる関ヶ原
稲沢は植木の町と聞く緑
名古屋とは偉大な田舎草茂る
梅雨霧の先に浜名湖見えて来し
旧友と蘭の花咲く駅前で
八十歳揃ひ鰻を浜松で
八十歳ともに鰻を平らげて
鰻旨しビール旨しと談弾む
おつまみは鰻の肝の串焼きで
茶碗蒸しにも入ってをりし鰻
健啖や鰻完食八十歳
台湾の友とブーゲンビリア見る
台湾の友とビールを酌み交はす
ビール好しワインまた好し日本酒も
ビール飲み朝まで眠るぐっすりと
夏会席昔の上司ご夫妻と
六十年前の上司と鱧を食ふ
梅雨晴れに卒寿の上司ご夫妻と
夏会席完食されし卒寿
卒寿なほ日本の未来憂う夏
健啖の卒寿酷暑に怯まれず
炎天下卒寿の上司送りくれ
梅雨明けて朝から蝉の大合唱
梅雨明けていいよ蒸し蒸しする暑さ
沖縄を涼しと思ふこの暑さ
梅雨明けていよいよ蒸し蒸しする暑さ
芳しき香り一番藍を干す
一番藍干せば燕もやって来し
一番藍干せば来てをり赤蜻蛉
真っ青な空や一番藍を干す
梅雨明けを待ちて一番藍を干す
一番を干していよいよ藍茂る
庭を掃き清め一番藍を干す
藍を干す周りに網を巡らせて
バナナ生る庭に一番藍を干す
見るたびに藍干しあがり来し日差
これはまあ日干しの蚯蚓続く道
朝の間に乾涸びてゐる蚯蚓かな
地を出でしばかりに蚯蚓乾涸びぬ
蚯蚓には地下も地上も地獄かな
居場所無く蚯蚓乾涸ぶ暑さかな
昼顔の花さへ萎れをりし午後
雨の日の額紫陽花の白さかな
雨の日の額紫陽花の凛として
梅雨晴の空より港見下ろして
梅雨晴の空より見えて江ノ島も
残雪のわずかばかりの富士も見え
六月の富士黒々とありにけり
梅雨晴れて知多半島もくっきりと
梅雨晴れてあれは確かにセントレア
でで虫の逃ぐる速さよもうゐない
でで虫の一目散に逃げてゆく
でで虫の前へ前へと休みなく
ゆっくりとでで虫のごと生きたかり
青紫蘇の苗とはかくも小さくて
青紫蘇の苗の伸び来し速さかな
青紫蘇の育ち過ぎないやう日除
走り来し車に灯虫こびりつき
運転の窓に灯虫のつぶてかな
かぶと虫くはがた虫も街の灯に
灯虫来る町に一つの信号に
灯虫来る明治の街のガス灯に
若竹のもう竹林の背を越えて
若竹の生え放題の伸び放題
流れ無きところを選び鳰浮巣
名水の池の真ん中鳰浮巣
蛇の来ぬやうにと祈る鳰浮巣
大木の木蔭の川辺鳰浮巣
浮巣よく観たく抜き足忍び足
卵ある浮巣と聞けばなほ観たし
つつがなきことを祈らん鳰浮巣
蜘蛛の巣の始めの一糸襷掛け
見えぬほどなる高さより蜘蛛の糸
銀色に光ってをりぬ蜘蛛の糸
梅花藻の花美しき上高地
梅花藻の花咲く水の清らかさ
梅花藻の花水中に水面に
百選の水に藻の花畑かな
十薬も百合紫陽花も白き庭
酢漿草の花犇きて咲く狭庭
日の蔭の酢漿草の花美しき
七夕の笹に戦争やめましょう
七夕の笹に平和の来ることを
解禁の鮎をぜひとも食べたくて
品の良き鮎の香りでありにけり
待ちかねし鮎の背ごしもいただきて
頭ごといただき鮎の天婦羅は
梅雨に入り入梅の日は快晴に
入梅の日の徳島は快晴に
入梅の徳島晴れの日の続く
入梅の徳島今日も晴れ渡り
鉢植の葡萄の早も実をつけて
鉢植の葡萄の葉っぱ大きかり
紫のアガパンサスは夏の花
暑さにも強きアガパンサスの花
鮮やかな白でありけり半夏生
半夏生見てより入るお寿司屋に
明日からは雨の予報よ額の花
雨欲しい雨が欲しいと額の花
これはまあこんな所に捩り花
近づきて見たくなるもの捩り花
二百歳なる藤の根の無骨さよ
藤の花二百歳なる枝垂れやう
百歳の白藤もまた勢よし
紫も白も盛りや藤の花
門入れば藤の香りの中にゐる
藤の香の甘さに蜂の群がれる
藤を見る蜂に刺されぬやうにして
甘き香をたっぷり吸って藤を見る
筍の竹となりゆく速さかな
筍のめったやたらに顔を出し
春菊に綺麗な花が咲いてをり
春菊の花には香りなかりけり
犇ける大葉の苗の小ささよ
こんもりと育ち大葉となってをり
ピーマンの苗に綺麗な写真添へ
野菜にも初夏の太陽たっぷりと
人住まぬ家に鮮やか柿若葉
鮮やかに生きていゆきたし柿若葉
春宵の道後の町をそぞろ来て
宇和島の鯛めしに来る宿浴衣
風薫る平山郁夫美術館
門入れば緑の美しき美術館
清楚なる庭に卯木の群れ咲いて
新緑の庭に卯木の白い花
紫蘭咲く道より美術館に入る
部屋の中からも五月の庭を見る
春の月かもと名画を眺めもし
冷房の部屋で名画の旅も見て
尾道の港にそよぐ風は初夏
初夏の旅尾道ラーメン旨かった
遠浅の海に遠投鱚を釣る
竿上げば鱚のぞろぞろ釣れてをり
砂丘下り遠州灘に鱚を釣る
離陸する飛行機見つつ鱚を釣る
吉野川河口ひろびろ鱚を釣る
母の日の父鱚釣に出掛けたる
橡の花ピエロの帽子みたいだね
松蝉を聞く大神子の松原に
波音に負けず松蝉鳴き始む
松蝉の私呼ぶかにぢいぢいと
長堤の茅花流しのさはさはと
雨意のある茅花流しでありにけり
ペダル漕ぐ茅花流しを浴びながら
我が家の筍飯は具沢山
筍飯この筍は子の掘りし
部屋中に筍飯の香りかな
子も孫も筍飯が大好きと
一夜さにこの狼藉は根切虫
ほどほどにしてくださいよ根切虫
根切虫その正体は知らねども
彩雲のたなびく初夏の青空よ
東京は緑緑の都かな
夏の闇にも眠らない都心
雪の富士見えるよ初夏の東京に
都心からはっきり初夏の富士も見て
涼風に誘はれ滝に立ち寄りぬ
涼しかりホテルの庭の滝なれど
見上げれば目にもやさしく若楓
石庭の五月躑躅の垣の美しさ
鯉の池には睡蓮の三つ四つ
鯉泳ぐ岸辺茅花の残り咲き
犇ける五月躑躅の真っ赤っ赤
遠目にも五月躑躅の明るさよ
十薬とあじさゐ白を競ふ庭
走っても疲れない子ら運動会
昼までで終る五月の運動会
家族とは嬉しきものよ運動会
運動会終へて皆さんご苦労さん
太陽へたじろがぬ花仙人掌は
仙人掌の花は太陽正面に
放ったらかしの仙人掌咲き満ちて
放ったらかしがいいのよ仙人掌は
ほととぎす聞きたく眉山山頂に
山頂に着いた途端のほととぎす
遠峰を眺めてゐればほととぎす
鶯の鳴けど鳴かないほととぎす
鶯の間に一声ほととぎす
聞き止めし一声確かほととぎす
ガリバーの足が来てをり石菖に
几帳面なる作りやう落し文
捨てられず几帳面なる落し文
巻き立てか緑の美しき落し文
風に舞ふ毛虫の糸の強さかな
青嵐眉山丸ごと吹き流し
百歳の枝垂れ桜の威容かな
百歳の枝垂れ桜の枝垂れやう
百歳の枝垂れ桜を仰ぎ見る
百歳の枝垂れ桜を見んと来て
百歳の桜に屋台まで出来て
百歳の桜に臨時駐車場
百歳の桜に人の集まれる
遠目にもほんのり赤き山桜
枝垂れ桜越しに山桜も見え
境内を敷き詰め枝垂れ桜散る
チューリップ眺め桜も仰ぎ見て
原色といふ美しさチューリップ
整列もまた美しきチューリップ
もう走り出してゐる子らチューリップ
咲き初めし染井吉野のほの赤く
チューリップ園に水車の建物も
赤い花白い桜と咲き満ちて
枝垂れ咲く牡丹桜でありにけり
室咲きの胡蝶蘭かな一列に
室咲きの青美しき胡蝶蘭
遠目にも咲き満ちてをり花の山
満開の花のトンネルくぐり行く
下山する人が優先花の山
この山の枝垂れ桜を今年また
枝垂れ桜越しに阿讃の峰も見て
枝垂れ桜とはこんなにも大振りな
風なくも枝垂れて枝垂れ桜かな
満開の桜広場を走る子ら
咲き満てる花を眺めてゐる二人
お花見をするのは大人子ら走る
子ら遊ぶ枝垂れ桜を身に纏ひ
散り敷ける上に一片また落花
桜散る大地に早も蒲公英が
散り急ぐ花はなけれどまた落花
散る桜残る桜もやがて散る
桜散る大地の土に帰りゆく
午後となり少し萎れてゐる牡丹
日を浴びて牡丹いよいよ艶やかに
犇きて咲ける牡丹もありにけり
咲き揃ひ牡丹の寺となりにけり
鉢植の牡丹の紅の艶やかさ
鉢植の白い牡丹に見惚れゐる
咲き満てる染井吉野の白さかな
青空に染井吉野の白眩し
どっと来る日曜のチューリップ園
チューリップ園には家族皆で来る
チューリップ園の水車は喫茶店
とりどりの色美しきチューリップ
見るよりも駆け回る子らチューリップ
チューリップ園には歓声こだまして
放ったらかしでなけれど葱坊主
種を取る積りなけれど葱坊主
プランターの葱にも花の咲いてをり
葱坊主だらけ日曜菜園は
葱坊主畑三枚埋め尽くし
蜜蜂のゐなくて人のする授粉
蜜蜂は仕事師花粉まみれかな
初物の筍なりしやはらかし
いただきし筍その日茹で上げる
筍は旬が命とさっと茹で
大楠を仰ぎ見てゐるみどりの日
植樹祭せし日懐かしみどりの日
県木の楊梅育てみどりの日
風船の行方を誰も知らざりし
風船を貰ふのっぽのピエロより
風船で気象観測せしと聞く
風船を追い掛ける子を追い掛ける
味噌入れるだけや私の浅蜊汁
この旨き浅蜊の採れし浜はどこ
舟でしか行くけぬ浜での浅蜊てふ
浅蜊しぐれ一つで出来る茶漬かな
鎌倉五山巡る道々濃山吹
虚子の墓参りをしても濃山吹
連綿と山吹ばかり続く道
けがれなき色でありけり白牡丹
懸命に生きて真っ赤や赤牡丹
遠目にも薄く紅差し白牡丹
紅差していよいよ美しき白牡丹
日当たりにありても凛と赤牡丹
門前にありし一株赤牡丹
田植機のおもちゃのごとし小さき田
チューリップ育てることが生きがいと
チューリップ咲かせ生家に戻り住む
石垣に犇き咲きて芝桜
犇きて咲く美しさ芝桜
山吹の桜ひとひら乗せて咲き
石楠花も咲かせ八十五歳とか
著莪の花咲ける崖下り河鹿聞く
河鹿鳴く声のだんだん近づきぬ
左から右から河鹿鳴きにけり
木琴を叩けるごとく河鹿鳴く
重唱のやうな河鹿の鳴きっぷり
河鹿鳴く次第に声を張り上げて
独唱の河鹿の声の乗って来る
いやといふほどに河鹿を聞き昼餉
甘酒の差し入れまでもいただきて
山宿の昼は旬の山菜尽くしかな
青空に鶯を聞く露天の湯
たっぷりと鶯を聞く朝の湯に
樟落葉二つ三つ四つ露天の湯
湯上りに残る桜を眺めゐる
鼠木戸より薫風と共に入る
木戸開けて薫風入れて金丸座
歌舞伎見る課外授業や子らの初夏
宙乗りの雀右衛門も見柏餅
空へ舞ふ天女鮮やか風光る
芝居はね初夏の眩しき現世に
雛飾る人の踏み場も無きほどに
とりどりの雛や雅叙園らしく
雅叙園らしき雛の飾られて
早々と河津桜に目白来て
見るほどに河津桜は赤きかな
これはまあ雪の花見となりにけり
青空に紅美しき桜かな
蜂須賀の殿の愛でたる桜見る
蜂須賀の世より伝へし桜見る
戦災を耐えし蜂須賀桜見る
焼夷弾落ちても桜生き延びて
お花見のできる日本のありがたく
戦争の無き世を願ひ見る桜
一と月も早く満開なる桜
雛飾る部屋より眺む桜かな
武家屋敷には春の花生けられて
廊下には安達流なる寒椿
庭園の岩にはミモザ美しく
玄関に椿一輪活けられて
武家屋敷よりも蜂須賀桜見て
蜂須賀桜と木札にありし母樹大き
母樹なりし蜂須賀桜仰ぎ見る
投句箱あるを確かめ桜見る
観光船よりも蜂須賀桜見て
コーヒーをいただきながら桜見る
お花見の一句を投句箱に入れ
エチオピア大使も来られ見る桜
阿波踊しつつ花見に来る人も
一と月も早く花見のできる阿波
阿波藩の世より伝へし桜見る
種芋の貯蔵の穴の床下に
種芋の穴の昼なほ暗かりし
種芋は子芋ばかりでありにけり
植ゑ付けは種芋の芽を確かめて
残りたる種芋甘く旨かりし
水中に葦の角あり句碑のあり
水中句碑ありし水辺に葦の角
葦の角琵琶湖の波に見え隠れ
種袋そのまま挿して苗札に
苗札のカラー写真の美しく
苗札のカタカナばかりなりしかな
苗札の文字より写真見て回る
真っ直ぐの畦がぐちゃぐちゃ陽炎ひて
蜃気楼陽炎もまたぼんやりと
ふるさとの町すっぽりと陽炎ひて
弧を描き上り詰めたる揚雲雀
大地へと一目散に落つ雲雀
雲雀鳴く天下とったる如く鳴く
四方から続けざまなり揚雲雀
休耕の畑は即ち雲雀の野
電光石火落つる雲雀となりにけり
肥やす馬ゐないけれども苜蓿
防風摘む大鳴門橋そこに見て
防風の勝手に伸びてをりし浜
白砂に浜防風の白い花
浜防風つまめば芹の香りして
飲兵衛は刺身のつまに浜防風
卒業をしたとはるばる愛知より
卒業をしたとセーラー服で来る
今年また三万体の雛飾る
雛を見に三万人が来ると云ふ
婚活のイベントもあり雛祭
日替のイベントもあり雛祭
ライトアップまでは見られず雛祭
雛飾眺め人形浄瑠璃も
雛祭る恐竜化石出る町に
雛飾には外つ国の人形も
雛飾りせしは小学三年生
その中に泣きべそのをり仕丁雛
南米の調べも聞こえ雛祭
飾られし雛それぞれに物語
飾られてこその雛人形であり
ウクライナ国旗の描かれし雛も
雛祭記念の写真撮り合ひて
雛の顔時代時代でありにけり
植ゑし人思ひ出しつつ見る桜
花も葉も赤き蜂須賀桜かな
一と月も早く散りゆくこの桜
敷き詰めし上にひとひらまた落花
散り急ぐ花はなけれどまた一花
落つる花しばし眺めてをりにけり
遠目にもはくれんの白際立ちて
上向きに咲きはくれんの白い花
薔薇の芽を覆ひさうなる繁縷かな
清らかな水の岸辺に芹茂る
こんもりと芹の犇めくひとところ
城山の緑に紛れ著莪の花
遠目にも見ゆる川面の花明かり
川面にも桜並木の美しく
散り残る花を訪ねて来し人も
散る花をじっと見る人見ない人
敷き詰められし落花の美しき
敷き詰められし落花を踏んで行く
黄水仙咲いて明るき庭となり
ロンドンの城の庭ふと黄水仙
マーガレット咲かせデンタルクリニック
マーガレット大好きだった人をふと
ネモフィラにまぶしき春の光りかな
ネモフィラにひたちなか公園をふと
世の遠くゐることに慣れ蕨餅
世に遠くゐることに慣れ草の餅
堤防の芥子菜摘んで漬物に
春場所の新入幕の初優勝
春場所のあっぱれ幕尻初優勝
ふるさとの歌作りしと初便り
ふるさとの山河を歌ひ春を待つ
あっぱれな年の始めでありにけり
坪庭に三つ四つ五つ蕗の薹
水仙の四つ並んで咲きにけり
何たって生が一番寒卵
小豆島醤油一滴寒卵
卵かけ醤油を少し寒卵
炊き立ての御飯最高寒卵
黄身二つありてめでたし寒卵
放し飼いしたるを選び寒卵
ぷりぷりの黄身でありけり寒卵
やはらかき日差にまぶし猫柳
門前にせせらぎのあり猫柳
活けられてなほも艶やか猫柳
かはいいと皆に触られ猫柳
水音のかすかに聞こえ猫柳
猫柳触れれば仄と温かし
ぎんねずの控へ目が好き猫柳
青空へぽつりぽつりと梅咲きぬ
梅咲いて寺訪ふ人の増えて来し
青空へ咲き初む梅の白さかな
剪定をされたる梅の花大き
剪定のされし梅林勢あり
春菊はささっと入れてさっと煮る
好き嫌ひあれど菊菜は香りかな
金縷梅何でそんなに縮れ咲く
満作は枯葉大事と咲きにけり
まづ咲くと云ふ満作の咲き初めし
満作の咲きてもうじき一年生
満作の松の廊下のありし地に
満作の町見下ろして咲きにけり
コロナではないです春の風邪ですと
立春の一位当選めでたけり
春立つ日一位で町議会議員
春立つ日見事一位で初当選
春立つ日青年議員誕生す
春立つ日子の旧友が議員へと
新人が一位当選春立つ日
あっぱれや一位当選春立てり
雛段の雛を囲みて吊し雛
高々と雛段の雛飾られて
様々な願ひ込められ吊し雛
手作りの情のありけり吊し雛
鳴門かな詰め放題の新若布
新若布詰め放題と聞くからは
鳴門産牡蠣にも人の押し寄せて
新若布牡蠣と見る間に売れ尽くし
新若布詰め放題に長き列
若布牡蠣ともに完売昼までに
新若布入りのふるまひ汁も出て
新若布牡蠣で祭となる鳴門
ウィスキーボンボンバレンタインの日
孫からもチョコ来るバレンタインの日
義理チョコのバレンタインの日は遠く
その人は知らねどバレンタインの日
春一に船戻り来る戻り来る
春一の恐さを語る老漁師
黄花亜麻大事に育て句碑の春
黄花亜麻句碑を囲みて咲き競ふ
句碑囲み幸せ招く福寿草
日を浴びて開き始めし福寿草
忘れらる日干しの蛙鵙の贄
生殺与奪句碑の辺にあり鵙の贄
日の差せど菰に隠れて寒牡丹
隠れん坊してゐるやうな寒牡丹
句碑の辺に白梅紅梅濃紅梅
句碑の辺に今年も出でし蕗の薹
句碑の辺は土筆に薺犬ふぐり
紅梅は枝も芯まで赤かりし
万両の赤に見惚れて足止まる
紅白の万両句碑を守るかに
水温み目高の親子すいすいと
幕上がる春の選抜出場と
雨に濡れ椿の花に勢あり
句碑よりも少し離れて椿咲く
秩父かな雪の武甲の朝焼けは
朝焼けに輝く雪の武甲山
早春の武甲はなほも雪乗せて
春を呼ぶおきざり草のまぶしさよ
おきざり草春はそこまで来てをりぬ
うっすらと初冠雪の眉山かな
徳島の初雪夕べには晴れて
一年のあっといふ間や去年今年
年毎に速く過ぎゆき去年今年
戦争の無き世を願ひ年迎ふ
辰年に願ひを託し年迎ふ
手作りの小さき門松並ぶ市
小さくとも門松らしく凛として
寒風の仕上げてくれし吊し柿
やはらかく甘く仕上がり吊し柿
正月の道後温泉賑はひて
初売の道後の町の華やかさ
初売の街ぶつからぬやう歩く
初旅は伊予の名所を駆け足で
初旅は内子座にまで立ち寄りて
西伊予の初旅魚尽くしかな
好きなだけ蜜柑どうぞとあるホテル
冬晴の宇和島駅の明るさよ
冬晴の宇和島駅の椰子仰ぐ
松山へ土佐へ行こうか乗初めは
宇和島の駅の綺麗な松飾
正月の四万十川のゆったりと
水澄める四万十川の青さかな
冬日差す足摺岬灯台に
正月の光真白き灯台に
初旅の遠く足摺岬まで
新年を足摺岬より始む
初旅は丸い水平線も見て
初旅ははるか黒潮見ゆ岬
野路菊のへばりつくかに咲く岬
野路菊も見て寒椿咲く岬
冬晴の太平洋の明るさよ
正月の太平洋の青さかな
寒晴にジョン万の像高き岬
初春や土佐は偉人の多き国
門松の立てる鳴門の菓子屋へと
買初めのひっきりなしに来る老舗
歳の数なるは遠き日雑煮餅
塗碗を出していただく雑煮かな
雑煮餅一つで足りる歳となり
子供らの食べっぷりよき雑煮餅
子ら去にて四日の雑煮ゆつくりと
大正の芝居小屋にも松飾り
産直の市の門松蜜柑付け
餅花の柳の枝のよく撓る
料亭の表玄関餅の花
撓るほど花餅つけて客迎ふ
繭玉のふはりふはりと吊されて
繭玉の一つが回ってをりにけり
繭玉の捩れ戻して吊しけり
餅花の咲ける如くに飾られて
女子会と云ふ女礼者の集ひかな
皸の昭和も遠くなりにけり
普段着の女礼者でありにけり
スーパーで女礼者と鉢合ひぬ
霜焼は見れど皸見ぬ令和
皸の子を見ぬ令和の小学校
皸の血が包帯に滲み出て
寒椿咲き満つ端にある岬
寒椿くぐり足摺岬へと
寒椿へばりつくかに咲く岬
寒椿野路菊競ひ咲く岬
天狗の鼻なる岬にも寒椿
橙の転がってゐるどんど跡
爆竹の音凄まじく炎立つ
石庭の箒目にある淑気かな
箒目に踏むをためらふ淑気かな
寒鯉の底にちっとも動かざる
阿呆息災と云ふ長老も初句会
初句会和服のありて花やかに
門松の竹に瑞気のほとばしる
小さくとも正月飾凛として
手水鉢にも正月の飾りかな
浴びるほど日差を集め実万両
枯山水紅一点の実万両
寒晴の枯山水の明るさよ
色とりどりなるもめでたし繭の花
繭花を見れば触れてもみたくなり
美しき花も飾られ初句会
初めてといふ人も来て初句会
初句会全ての料理平らげて
健啖を確かめ合ひて初句会
喜寿傘寿米寿白寿も初句会
新春を祝ひて駅に蘭の花
駅頭に春を先駆け蘭の花
大寒波能登の地震の被災地に
寒波来る命からがら逃げし身に
何もかも失ひし身に寒波来る