今月の俳句

2025年4月

爛漫と母樹の蜂須賀桜咲く

見上げ見る母樹の蜂須賀桜かな

花人の絶へぬ蜂須賀桜かな

弁当を広げ蜂須賀桜見る

船からも蜂須賀桜眺めもし

川を朱に染めて蜂須賀桜かな

日溜りに咲き満ちてゐる黄水仙

一叢に光りを集め黄水仙

一隅に白詰草の犇ける

日溜りにこんもりとあり苜蓿

鰻重を御馳走になり桜見に

花人で賑はってゐる名古屋城

清正の幟も立ちて花の城

天守閣見てお花見も楽しまん

雪洞の揺れて咲き満つ桜かな

外つ国の人らとともに桜見る

お花見の出店の並ぶ名古屋城

満開の桜の下で憩う人

天守閣一回りして桜見る

名古屋城見て満開の花も見て

わたり蟹鮑と旨し知多の宿

入学と退院祝ふ知多の旅

ミュージアムへと雪柳咲く道を

ゆつたりと揺れてしだれて雪柳

春風の歴史を刻む煙突に

木瓜の花真つ赤や陶器の美術館

伊勢海老も虎河豚も出る知多の宿

名物の桜の舟盛り鯛めしも

芽柳の萌黄色なる温かさ

芽柳のふつくらとまたほつこりと

乳母車押して公園お花見に

小さくともしだれて枝垂桜かな

手入れされマーガレットの咲く花壇

犇けるマーガレットの美しく

日溜りにおきざり草の犇ける

今春もおきざり草の咲ける庭

店頭にミモザの花の並ぶ市

朝の間に売れて仕舞し花ミモザ

チューリップ園にも桜桜かな

遅速無く咲き揃ひたるチューリップ

連翹としだれ桜と青空と

連翹と白と赤なるこの桜

苔の道行き山吹の茂る崖

山吹のしだるるやうに咲ける崖

鶯をこぼるる花を浴びながら

花吹雪越しに鶯鳴くを聞く

しだれ咲く桜の幹の太さかな

中空を飛び行く落花ありにけり

飛花落花とはこんなにも艶やかな

花吹雪く中に動かぬ黒き幹

しだれ咲く花のこぼるる中にゐる

花万朶渓染め地染め山染めて

桜咲き彼岸桜も合はせ咲く

河鹿鳴きゐると両手で〇の字を

連呼するやうに河鹿の迎へくれ

桜見る旅の仕上げの桜餅

山菜の炊き込みご飯旨き宿

蜜蜂の寄ってたかってゐる残花

残る花仰げば間に昼の月

また来てと残花の宿の女将云ふ

来年も来たいと宿の残花見る

囀りのこだまして来る山の宿

囀りを褒めればいよよ囀れる

四方から囀り聞こゆ里に入る

巣に帰る蜜蜂花粉まみれかな

蜜蜂の巣箱を庭に住みなせる

巣の日本蜜蜂刺しはしませんと

蜂の巣の丸ごと入りし蜂蜜と

阿波藍の歴史引継ぎ藍植うる

藍工房休み総出で藍植うる

藍植うるボランティアなる助つ人も

出で来しは誠に小さき初蛙

きょろきょろと辺り見回し初蛙

跳ねないで歩きをりけり初蛙

山門を潜れば藤の香りかな

熊ん蜂までも来てゐる藤棚に

藤咲いて出店の並ぶ山の寺

藤咲いて人鳥蜂と次々に

大好きなパスタと聞かれボンゴレと

大粒の浅蜊が自慢なるパスタ

汁までも旨き浅蜊のパスタかな

山盛りの浅蜊のパスタ平らげる

干潮のエンゼルロード浅蜊掻く

満ちて来る潮気にしつつ浅蜊掻く

潮吹いて浅蜊の逃げる速さかな

保育所の子らの歓声チューリップ

幼児の後を追いゆくチューリップ

団欒の老若男女チューリップ

青空の下の原色チューリップ

オランダに来し気分してチューリップ

写真撮りたくなる気分チューリップ

2025年3月

雛壇の吊るし飾りに飾られて

仰ぎ見る高さにありし内裏雛

雛壇の前に箱入り雛人形

壇の雛一つ一つにある歴史

雛壇の雛に苦労の皺無かり

雛壇の雛に若さを貰ひけり

ホテルにも雛壇の雛飾られて

雛壇の見本のやうな雛飾り

雛壇の雛美男美女なりしかな

沓持てる仕丁雛なぜ泣くのかな

紫雲英田と云へば根粒バクテリア

土肥やすための紫雲英と教へられ

村中に紫雲英田ありし日の遠く

紫雲英田で遊びし我ら皆老ひし

摘んで来し紫雲英を活けてゐたる母

大空にへの字を描き鳥帰る

大空に一陣二陣鳥帰る

皆帰り広くなりたる鴨の川

黄砂降る徳島平野薄暗し

春塵に洗濯物の干せぬ日々

春塵に混み合ふコインランドリー

洗車せしばかりなりしに春の塵

春塵と言えば北京の空思ふ

お彼岸にゴッホの墓を訪ねし日

真東に昇る太陽けふ彼岸

太陽の真西に沈むけふ彼岸

お彼岸に寒の戻りと云ふことも

ほろ苦き母の菜飯の懐かしく

出来立ての緑の美しき菜飯かな

さつと食べられる菜飯のありがたく

具沢山でなき菜飯の方が好き

遊山箱持ちて野遊びせし昔

野遊のやうに畑で昼ご飯

野遊びのやうな吟行句会かな

退院の出来て蜂須賀桜見る

二年目の蜂須賀桜投句会

入選句展示されある花見かな

寒風の中の花見となりにけり

三代の家族揃ひて見る桜

蕾から赤き蜂須賀桜かな

ほのと咲き赤き蜂須賀桜かな

植ゑし人そこにゐるかに桜見る

植ゑし人皆で語りて桜見る

植ゑし日を昨日のやうに見る桜

あの人もこの人も逝き桜見る

孫たちに囲まれて見る桜かな

川べりは花の名所となりにけり

蜂須賀の桜の母樹の大きかり

蜂須賀の時代いかにと桜見る

大戦を耐えて蜂須賀桜咲く

焼夷弾落ちたる庭に桜咲く

一本の桜に人の絶え間なく

次の世を担う子らも来桜見る

幹太き母樹の蜂須賀桜かな

一本の桜に鳥来る人も来る

一本の桜に名士次々に

外つ国の賓客までも来る桜

川からのピアノも聞きて桜見る

船からのピアノも聞こへ桜見る

そこそことほころぶ花を教へられ

見るほどにほころぶ花の増えにけり

二部咲きて赤き蜂須賀桜かな

仰ぎ見る母樹の蜂須賀桜かな

桜見て華道展にも足運び

落椿浮かべてありぬ玄関に

雛壇に添へてありしは桃の花

この桃も小さき花を付け初めし

こじんまり活けられゐるは黄水仙

床の間の桃も小さき花つけて

連翹と椿の赤と雪柳

菜の花とほころび初めし桃の花

江戸の世を今に伝へし桜咲く

二百歳と聞く蜂須賀桜咲く

咲き満てる母樹の蜂須賀桜かな

満開の蜂須賀桜見て嬉し

一本の桜に人来る鳥も来る

手入れさる庭に蜂須賀桜かな

薔薇の芽の小さき棘に降る小雨

犇ける白木蓮の蕾かな

雨の日の蜂須賀桜赤殊に

七分咲き蜂須賀桜らしき赤

春寒の公園鳩も丸くなり

落椿真っ赤や城の搦手に

雨に濡れ赤瑞々し落椿

2025年2月

待ち時間長き病院日脚伸ぶ

春一と日待ちくたびれて過ごしけり

春一と日検査検査で暮れにけり

寒戻るらし節分の日の予想

立春と言へどまだまだ遠き春

雨に濡れとぼとぼ帰る恋の猫

裏口に朝帰りかな恋の猫

誰か知るペットショップの猫の恋

満作の咲ける御苑の門なりし

満作も松の廊下の跡も見て

満作の徳島城の跡地にも

満作とともに故郷見下ろして

銀鼠の控へ目が好き猫柳

水音を辿りて行けば猫柳

谷の水流る門前猫柳

一束にされて花屋の猫柳

花咲けば薹立ちてをり春菊は

花の咲く前が食べごろ春菊は

茹で立ての春菊緑美しき

水掬ひ白魚掬ふ四つ手かな

大方は水掬ひ白魚掬ふ

白魚の四つ手の底に固まりて

踊り食ひさる白魚の目と合ひぬ

食べらるる白魚の目の涼しさよ

下萌や大地命の母なりし

下萌ゆる土やはらかくなつて来し

野焼とは管理されたる放火かな

国分寺ここも寺領や畑を焼く

黒こげの畑なるかな野焼跡

野火走り勢子一斉に走り出す

浜茹での若布詰め放題の市

茹で立ての若布の緑美しき

鳴門産若布直売長き列

艶やかな打掛に添へ実南天

金銀の打掛まぶし実南天

花やかな打掛の前雛飾る

雛壇は花また花に飾られて

吊るし雛壇の雛と飾られて

可愛くて美しきかな雛の顔

二階への階段にまで雛飾る

お優しいお顔でおわす内裏雛

賢さうなお顔でありし内裏雛

お若かき美男美女かな内裏雛

このごろの雛壇の雛可愛らし

このごろの雛の顔は幼顔

雛壇の雛にハートの花飾り

飾られしハートの中に内裏雛

弓矢持つ随身雛の凛として

仕丁雛沓台持ちし泣き上戸

脇町に三味線餅つきなる歴史

三味線に合はせ餅つき楽しまん

脇町の正月風景絵に残る

正月に阿波木偶まはし来しと絵に

句の席にバレンタインのチョコレート

スーパーにバレンタインのチョココーナー

最強の寒波阿波にも春の雪

太陽の解かしてくれし阿波の雪

仙人掌に袋を被せ雪囲

竜の玉隠せるやうに春の雪

一輪の山茶花なれど凛として

山茶花の活けられてゐるレストラン

日当りの山茶花どれも花盛り

散るほどに咲き継いでをり山茶花は

敷松葉されたる句碑の清々し

青竹で垣繕うて句碑清し 

ビニールの紐を器用に巣組され

鳥の巣のある公園の椿咲く

句碑囲み寄り添ひ咲ける福寿草

寄り添ひしままに植ゑられ福寿草

梅遅しと見れば膨らみゐる蕾

紅梅の蕾膨らみ白はまだ

艶のある葉の美しき椿かな

蕾にも色の出て来し紅椿

寒牡丹少し待ってと菰の中

寒牡丹蕾大事に菰の中

句碑の辺の土硬けれど蕗の薹

剪定す梅の硬さを云ふ

探梅の日溜りを抜け出せずゐる

目の前の梅に鶯来て留まる

2025年1月

寒椿咲き満つ先にある岬

新年の光り真白き灯台に

正月の太平洋の明るさよ

正月を家族揃って健啖で

正月を家族で過ごす楽しさよ

冬紅葉眺めながらの談弾む

元旦に一年の計語り合ふ

ふるさとの川を染め上げ初明り

初明り浮寝の鴨にやさしかり

蓮の田のこふのとりへも初明り

ふるさとの海染め上げて初日の出

初日の出見たとの知らせ次々に

獅子舞のショッピングモール踊り抜け

獅子舞を面白がる子怖がる子

初春の南の海の優しかり

初旅は土佐の鮪をいただきて

正月の太平洋の長閑さよ

のんびりと土佐の正月楽しまん

初旅は室戸岬の海を見に

初旅は視野一杯の太平洋

灯台へキバナアマ咲く道を行く

正月の光り眩しきキバナアマ

初春の太平洋の青さかな

正月の灯台真白に輝きて

正月の海染め上げてゐる入日

正月の室戸岬の落暉かな

南が恵方と決めてただ走る

初鏡する子に育ち待たさるる

餌与へないでとあれど寒施行

寒施行せずともすでに食べられて

寒施行して怒らるる世となりぬ

金柑を木に残しおく寒施行

昼までに薄氷消えて仕舞けり

突っ張って引っ張り合って薄氷

日当たれば消えて仕舞し薄氷

遠目にも鮮やかなりし冬紅葉

仰がるる大マロニエの冬紅葉

落暉待ち大寒燈の燈台に

太平洋照らす寒燈室戸崎

寒灯の灯らぬ空き家目立つ里

寒灯を見ぬ道なれど国道と

寒木瓜の身じろぎもせず咲いてをり

寒木瓜の今年も咲いてをりし道

寒木瓜の控へ目なれど目立つ赤

初凪の室戸の海の真っ平

初凪の鯨の海の静けさよ

初凪の太平洋の広さかな

初凪の室戸の漁港鎮もりて

幼児に帰りて探す竜の玉

玄関の植込みからも竜の玉

サファイアのやうな輝き竜の玉

初雪に万両の赤いや増して

初雪に子の残したるアートかな

朝起きてみればうつすら銀世界

雪原を吹き来る風の冷たさよ

日の差して初雪消えて仕舞けり

昼までに消えて仕舞し初雪よ

鉢植の福寿草かな店頭に

鉢植にあれど寄り添ひ福寿草

臘梅の香りに釣られ買って来し

臘梅を香りまるごと買って来し

温かき部屋の臘梅開き初む

臘梅の開きて香り強くなる

三日目の鉢の臘梅もう満開

臘梅の満開になる速さかな

初場所を四日で横綱引退す

獣害に〇如何寒施行