爛漫と母樹の蜂須賀桜咲く
見上げ見る母樹の蜂須賀桜かな
花人の絶へぬ蜂須賀桜かな
弁当を広げ蜂須賀桜見る
船からも蜂須賀桜眺めもし
川を朱に染めて蜂須賀桜かな
日溜りに咲き満ちてゐる黄水仙
一叢に光りを集め黄水仙
一隅に白詰草の犇ける
日溜りにこんもりとあり苜蓿
鰻重を御馳走になり桜見に
花人で賑はってゐる名古屋城
清正の幟も立ちて花の城
天守閣見てお花見も楽しまん
雪洞の揺れて咲き満つ桜かな
外つ国の人らとともに桜見る
お花見の出店の並ぶ名古屋城
満開の桜の下で憩う人
天守閣一回りして桜見る
名古屋城見て満開の花も見て
わたり蟹鮑と旨し知多の宿
入学と退院祝ふ知多の旅
ミュージアムへと雪柳咲く道を
ゆつたりと揺れてしだれて雪柳
春風の歴史を刻む煙突に
木瓜の花真つ赤や陶器の美術館
伊勢海老も虎河豚も出る知多の宿
名物の桜の舟盛り鯛めしも
芽柳の萌黄色なる温かさ
芽柳のふつくらとまたほつこりと
乳母車押して公園お花見に
小さくともしだれて枝垂桜かな
手入れされマーガレットの咲く花壇
犇けるマーガレットの美しく
日溜りにおきざり草の犇ける
今春もおきざり草の咲ける庭
店頭にミモザの花の並ぶ市
朝の間に売れて仕舞し花ミモザ
チューリップ園にも桜桜かな
遅速無く咲き揃ひたるチューリップ
連翹としだれ桜と青空と
連翹と白と赤なるこの桜
苔の道行き山吹の茂る崖
山吹のしだるるやうに咲ける崖
鶯をこぼるる花を浴びながら
花吹雪越しに鶯鳴くを聞く
しだれ咲く桜の幹の太さかな
中空を飛び行く落花ありにけり
飛花落花とはこんなにも艶やかな
花吹雪く中に動かぬ黒き幹
しだれ咲く花のこぼるる中にゐる
花万朶渓染め地染め山染めて
桜咲き彼岸桜も合はせ咲く
河鹿鳴きゐると両手で〇の字を
連呼するやうに河鹿の迎へくれ
桜見る旅の仕上げの桜餅
山菜の炊き込みご飯旨き宿
蜜蜂の寄ってたかってゐる残花
残る花仰げば間に昼の月
また来てと残花の宿の女将云ふ
来年も来たいと宿の残花見る
囀りのこだまして来る山の宿
囀りを褒めればいよよ囀れる
四方から囀り聞こゆ里に入る
巣に帰る蜜蜂花粉まみれかな
蜜蜂の巣箱を庭に住みなせる
巣の日本蜜蜂刺しはしませんと
蜂の巣の丸ごと入りし蜂蜜と
阿波藍の歴史引継ぎ藍植うる
藍工房休み総出で藍植うる
藍植うるボランティアなる助つ人も
出で来しは誠に小さき初蛙
きょろきょろと辺り見回し初蛙
跳ねないで歩きをりけり初蛙
山門を潜れば藤の香りかな
熊ん蜂までも来てゐる藤棚に
藤咲いて出店の並ぶ山の寺
藤咲いて人鳥蜂と次々に
大好きなパスタと聞かれボンゴレと
大粒の浅蜊が自慢なるパスタ
汁までも旨き浅蜊のパスタかな
山盛りの浅蜊のパスタ平らげる
干潮のエンゼルロード浅蜊掻く
満ちて来る潮気にしつつ浅蜊掻く
潮吹いて浅蜊の逃げる速さかな
保育所の子らの歓声チューリップ
幼児の後を追いゆくチューリップ
団欒の老若男女チューリップ
青空の下の原色チューリップ
オランダに来し気分してチューリップ
写真撮りたくなる気分チューリップ
雛壇の吊るし飾りに飾られて
仰ぎ見る高さにありし内裏雛
雛壇の前に箱入り雛人形
壇の雛一つ一つにある歴史
雛壇の雛に苦労の皺無かり
雛壇の雛に若さを貰ひけり
ホテルにも雛壇の雛飾られて
雛壇の見本のやうな雛飾り
雛壇の雛美男美女なりしかな
沓持てる仕丁雛なぜ泣くのかな
紫雲英田と云へば根粒バクテリア
土肥やすための紫雲英と教へられ
村中に紫雲英田ありし日の遠く
紫雲英田で遊びし我ら皆老ひし
摘んで来し紫雲英を活けてゐたる母
大空にへの字を描き鳥帰る
大空に一陣二陣鳥帰る
皆帰り広くなりたる鴨の川
黄砂降る徳島平野薄暗し
春塵に洗濯物の干せぬ日々
春塵に混み合ふコインランドリー
洗車せしばかりなりしに春の塵
春塵と言えば北京の空思ふ
お彼岸にゴッホの墓を訪ねし日
真東に昇る太陽けふ彼岸
太陽の真西に沈むけふ彼岸
お彼岸に寒の戻りと云ふことも
ほろ苦き母の菜飯の懐かしく
出来立ての緑の美しき菜飯かな
さつと食べられる菜飯のありがたく
具沢山でなき菜飯の方が好き
遊山箱持ちて野遊びせし昔
野遊のやうに畑で昼ご飯
野遊びのやうな吟行句会かな
退院の出来て蜂須賀桜見る
二年目の蜂須賀桜投句会
入選句展示されある花見かな
寒風の中の花見となりにけり
三代の家族揃ひて見る桜
蕾から赤き蜂須賀桜かな
ほのと咲き赤き蜂須賀桜かな
植ゑし人そこにゐるかに桜見る
植ゑし人皆で語りて桜見る
植ゑし日を昨日のやうに見る桜
あの人もこの人も逝き桜見る
孫たちに囲まれて見る桜かな
川べりは花の名所となりにけり
蜂須賀の桜の母樹の大きかり
蜂須賀の時代いかにと桜見る
大戦を耐えて蜂須賀桜咲く
焼夷弾落ちたる庭に桜咲く
一本の桜に人の絶え間なく
次の世を担う子らも来桜見る
幹太き母樹の蜂須賀桜かな
一本の桜に鳥来る人も来る
一本の桜に名士次々に
外つ国の賓客までも来る桜
川からのピアノも聞きて桜見る
船からのピアノも聞こへ桜見る
そこそことほころぶ花を教へられ
見るほどにほころぶ花の増えにけり
二部咲きて赤き蜂須賀桜かな
仰ぎ見る母樹の蜂須賀桜かな
桜見て華道展にも足運び
落椿浮かべてありぬ玄関に
雛壇に添へてありしは桃の花
この桃も小さき花を付け初めし
こじんまり活けられゐるは黄水仙
床の間の桃も小さき花つけて
連翹と椿の赤と雪柳
菜の花とほころび初めし桃の花
江戸の世を今に伝へし桜咲く
二百歳と聞く蜂須賀桜咲く
咲き満てる母樹の蜂須賀桜かな
満開の蜂須賀桜見て嬉し
一本の桜に人来る鳥も来る
手入れさる庭に蜂須賀桜かな
薔薇の芽の小さき棘に降る小雨
犇ける白木蓮の蕾かな
雨の日の蜂須賀桜赤殊に
七分咲き蜂須賀桜らしき赤
春寒の公園鳩も丸くなり
落椿真っ赤や城の搦手に
雨に濡れ赤瑞々し落椿
待ち時間長き病院日脚伸ぶ
春一と日待ちくたびれて過ごしけり
春一と日検査検査で暮れにけり
寒戻るらし節分の日の予想
立春と言へどまだまだ遠き春
雨に濡れとぼとぼ帰る恋の猫
裏口に朝帰りかな恋の猫
誰か知るペットショップの猫の恋
満作の咲ける御苑の門なりし
満作も松の廊下の跡も見て
満作の徳島城の跡地にも
満作とともに故郷見下ろして
銀鼠の控へ目が好き猫柳
水音を辿りて行けば猫柳
谷の水流る門前猫柳
一束にされて花屋の猫柳
花咲けば薹立ちてをり春菊は
花の咲く前が食べごろ春菊は
茹で立ての春菊緑美しき
水掬ひ白魚掬ふ四つ手かな
大方は水掬ひ白魚掬ふ
白魚の四つ手の底に固まりて
踊り食ひさる白魚の目と合ひぬ
食べらるる白魚の目の涼しさよ
下萌や大地命の母なりし
下萌ゆる土やはらかくなつて来し
野焼とは管理されたる放火かな
国分寺ここも寺領や畑を焼く
黒こげの畑なるかな野焼跡
野火走り勢子一斉に走り出す
浜茹での若布詰め放題の市
茹で立ての若布の緑美しき
鳴門産若布直売長き列
艶やかな打掛に添へ実南天
金銀の打掛まぶし実南天
花やかな打掛の前雛飾る
雛壇は花また花に飾られて
吊るし雛壇の雛と飾られて
可愛くて美しきかな雛の顔
二階への階段にまで雛飾る
お優しいお顔でおわす内裏雛
賢さうなお顔でありし内裏雛
お若かき美男美女かな内裏雛
このごろの雛壇の雛可愛らし
このごろの雛の顔は幼顔
雛壇の雛にハートの花飾り
飾られしハートの中に内裏雛
弓矢持つ随身雛の凛として
仕丁雛沓台持ちし泣き上戸
脇町に三味線餅つきなる歴史
三味線に合はせ餅つき楽しまん
脇町の正月風景絵に残る
正月に阿波木偶まはし来しと絵に
句の席にバレンタインのチョコレート
スーパーにバレンタインのチョココーナー
最強の寒波阿波にも春の雪
太陽の解かしてくれし阿波の雪
仙人掌に袋を被せ雪囲
竜の玉隠せるやうに春の雪
一輪の山茶花なれど凛として
山茶花の活けられてゐるレストラン
日当りの山茶花どれも花盛り
散るほどに咲き継いでをり山茶花は
敷松葉されたる句碑の清々し
青竹で垣繕うて句碑清し
ビニールの紐を器用に巣組され
鳥の巣のある公園の椿咲く
句碑囲み寄り添ひ咲ける福寿草
寄り添ひしままに植ゑられ福寿草
梅遅しと見れば膨らみゐる蕾
紅梅の蕾膨らみ白はまだ
艶のある葉の美しき椿かな
蕾にも色の出て来し紅椿
寒牡丹少し待ってと菰の中
寒牡丹蕾大事に菰の中
句碑の辺の土硬けれど蕗の薹
剪定す梅の硬さを云ふ漢
探梅の日溜りを抜け出せずゐる
目の前の梅に鶯来て留まる
寒椿咲き満つ先にある岬
新年の光り真白き灯台に
正月の太平洋の明るさよ
正月を家族揃って健啖で
正月を家族で過ごす楽しさよ
冬紅葉眺めながらの談弾む
元旦に一年の計語り合ふ
ふるさとの川を染め上げ初明り
初明り浮寝の鴨にやさしかり
蓮の田のこふのとりへも初明り
ふるさとの海染め上げて初日の出
初日の出見たとの知らせ次々に
獅子舞のショッピングモール踊り抜け
獅子舞を面白がる子怖がる子
初春の南の海の優しかり
初旅は土佐の鮪をいただきて
正月の太平洋の長閑さよ
のんびりと土佐の正月楽しまん
初旅は室戸岬の海を見に
初旅は視野一杯の太平洋
灯台へキバナアマ咲く道を行く
正月の光り眩しきキバナアマ
初春の太平洋の青さかな
正月の灯台真白に輝きて
正月の海染め上げてゐる入日
正月の室戸岬の落暉かな
南が恵方と決めてただ走る
初鏡する子に育ち待たさるる
餌与へないでとあれど寒施行
寒施行せずともすでに食べられて
寒施行して怒らるる世となりぬ
金柑を木に残しおく寒施行
昼までに薄氷消えて仕舞けり
突っ張って引っ張り合って薄氷
日当たれば消えて仕舞し薄氷
遠目にも鮮やかなりし冬紅葉
仰がるる大マロニエの冬紅葉
落暉待ち大寒燈の燈台に
太平洋照らす寒燈室戸崎
寒灯の灯らぬ空き家目立つ里
寒灯を見ぬ道なれど国道と
寒木瓜の身じろぎもせず咲いてをり
寒木瓜の今年も咲いてをりし道
寒木瓜の控へ目なれど目立つ赤
初凪の室戸の海の真っ平
初凪の鯨の海の静けさよ
初凪の太平洋の広さかな
初凪の室戸の漁港鎮もりて
幼児に帰りて探す竜の玉
玄関の植込みからも竜の玉
サファイアのやうな輝き竜の玉
初雪に万両の赤いや増して
初雪に子の残したるアートかな
朝起きてみればうつすら銀世界
雪原を吹き来る風の冷たさよ
日の差して初雪消えて仕舞けり
昼までに消えて仕舞し初雪よ
鉢植の福寿草かな店頭に
鉢植にあれど寄り添ひ福寿草
臘梅の香りに釣られ買って来し
臘梅を香りまるごと買って来し
温かき部屋の臘梅開き初む
臘梅の開きて香り強くなる
三日目の鉢の臘梅もう満開
臘梅の満開になる速さかな
初場所を四日で横綱引退す
獣害に〇✕如何寒施行